歯科医院経営の相談を受けていると、多くの院長が「売上」の話はされますが、「収益性」についてはあまり語られません。
・今年は売上が前年より伸びた
・自費売上が〇〇万円増えた
・年商〇億円を超えた
・ユニットを増やして売上が上がった
これらは確かに一つの成果です。
しかし、その売上増によって医院にどれだけの利益を残せたのか?
そこまで見ている院長は、実は多くありません。
売上は「規模」を示す指標にすぎない
売上は、医院の規模感を見る上では分かりやすい指標です。
例えば、
・保険診療中心で売上5,000万円を超え、青色申告に移行
・売上が1億円に近づき、法人化を検討
・ユニット3台、院長一人で目指す目安である「年商1億円」を達成
ここまでは、多くの院長がイメージしやすいラインでしょう。
さらに、
・歯科衛生士や非常勤ドクターが入職し院長以外の売上が増加
・ユニットを4台、7台、10台と増設
・自費の柱が加わることで診療圏が広がり、自費割合が上昇
こうして売上2億円、5億円・・・、分院展開によって法人売上20億円・・・、50億円を超える法人もあります。
ただし、ここで一つ、立ち止まって考えてほしいのです。
売上が大きくなれば、経営は安定するのか?
答えは、必ずしも「Yes」ではありません。
売上が大きくても、苦しい医院は存在する
実際には、
・売上規模は大きい
・スタッフ数も多い
・法人としては立派に見える
それでも、経常利益率が低く、資金繰りに余裕がない医院は少なくありません。
理由はシンプルです。
売上総額や人数だけでは、その医院の「稼ぐ力」は分からないからです。
また、大きな歯科医院の院長は「売上〇億円の時が一番苦しかった」という話をされますが、それは経営資源の投資時期と収益としての回収時期にズレがあるからです。
ズレがあっても着実に回収できれば良いのですが、投資判断が間違っていると資金を回収できずに、経営が苦しくなっていくのです。
医院が大きくなるとリスクは高まる
医院の規模が大きくなると「リスク(リターンの振れ幅)」が高まります。
つまり得られる利益を大きくできる可能性があるが、経営の舵取りを間違えると固定費の大きさによって赤字となる可能性もあるのです。
だから最近出てきている大規模化も、売上だけを見ている院長は落とし穴にはまり易いのです。
分院数が増え売上は増えているのに、
・人件費が重くのしかかる
・設備投資の回収が進まない
・人材採用でキャッシュが出ていく
・院長の手元にお金が残らない
こうした状態に陥っている医院も、現実には存在します。
治療品質向上と収益性はイコールではない
治療品質を高めるために、レーザーや最新の治療機器を導入する。
これは、歯科医師としてとても真っ当な判断です。
患者のために、より良い医療を提供したい。
その想いで技術と設備に投資してこられた院長も多いでしょう。
ただし、ここで冷静に考える必要があります。
その投資は、収益を増やしていますか?
・治療の満足度は上がった
・診療の幅は広がった
一方で、
・保険点数は変わらない
・診療時間(手間)は増えている
・集患には役立たない
・利益は思ったほど残らない
というケースも少なくありません。
売上(利益)が増えない治療コンテンツを積み重ねても、経営は楽にはならないのです。
売上ではなく「どこで利益が出ているか」を見る
ここで大切なのは、
「売上をどう伸ばすか」ではなく、「どの分野が、どれだけ利益を生んでいるのか」という視点です。
・どの診療内容が収益性を支えているのか
・時間と人をかけた診療は、利益に見合っているのか
・逆に、手間の割にほとんど利益を生んでいない部分はないか
売上という“結果”だけを見ていると、こうした構造は見えません。
ただ、収益には繋がらないが歯科医療として大切な取組みはあります。
大切なのはその赤字分野をカバーできる高収益分野を作ること。治療品質を高めていく過程ではもう一方で高収益分野を作ることが欠かせないのです。
売上は入口、経営の本質はその先にある
売上は、あくまで入口の数値です。
そこから先を見なければ、経営者としての正しい判断はできません。
・売上が伸びているのに、なぜ経営が苦しいのか
・患者が増えて忙しくなったのに、なぜ経営的に余裕がないのか
その答えは、収益構造の中にあります。
最後に
今回のテーマは「売上」でした。
売上は必要ですが同時に収益を見ておく必要があるという話でした。
次回は、売上を生みだす為のコスト、「変動費」について考えます。
売上の数字を眺めるだけでなく、その内側で何が起きているのか。
先生の医院の数字を思い浮かべながら、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
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