令和8年歯科診療報酬改定の答申が出され「個別改定項目(点数入り)」と「点数表」が公表されました。
一通り目を通した院長の多くは、こう感じたのではないでしょうか。
・口腔機能管理が拡大された
・CAD/CAMなどデジタル歯科治療が広がった
・歯周病の継続支援治療も20歯以上が減点されず一安心
・大人のP重防だった患者は増点になった
「全体として、悪くない改定ではないか」
確かに、点数だけを見ればそう言えます。
しかし、私は別の印象を持ちました。
“歯科は確実に、地域包括ケアの構造の中へ組み込まれている”
今回の改定は、歯科単独の改定ではない
まず、答申全体の構造を見てください。
大きな柱のひとつに、
「Ⅱ 2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」と明記されています。
これは単なる表題ではありません。
今回の改定の“設計思想”です。
つまり今回の改定は、歯科だけを良くする改定ではなく、2040年に向けた医療提供体制の再設計の一部なのです。
歯科の改定内容だけを見ていれば全体像は見えてきませんが、全体を読めば歯科医療の役割は確実に変化拡大していることが分かります。
歯科に起きている変化を整理すると
歯科関連の項目を並べてみます。
・歯科疾患管理料・口腔機能管理料の見直し(Ⅱ-3⑥)
・継続的・効果的な歯周病治療の推進(Ⅲ-7④)
・周術期及び回復期等の口腔機能管理の推進(Ⅲ-7⑦)
・質の高い在宅歯科医療の提供の推進(Ⅱ-5-1⑪)
・歯科治療のデジタル化等の推進(Ⅲ-7⑩)
・電子的歯科診療情報連携体制整備加算の新設
これらを一つ一つ見ると、「拡充」に見えます。
しかし、共通している方向性があります。
それは、「歯科が地域医療の中で役割を持つことを前提にしている」という点です。
“治す歯科”から“支える歯科”へ
かつての歯科は、
・むし歯を治す
・補綴
・歯周病を処置する
という外来完結型の医療が中心でした。
しかし今回の改定で強化されているのは、
・周術期の口腔機能管理
・回復期の口腔機能管理
・在宅での継続支援
・医科との情報連携
つまり、入院・退院・在宅をつなぐ役割のすべてに歯科医療が組み込まれているのです。
歯科は今、「単独の診療科」から「地域包括ケアの一機能」へと位置づけ直されています。
なぜ今、この方向なのか
国は明確に2040年を見据えています。
2040年には、
・人口が減る
・医療従事者が減る
・高齢者は増える
・在宅療養者は増える
このとき、病院完結型医療では医療提供体制が持ちません。
だから今、
・機能分化
・連携強化
・在宅支援の充実
が進められています。そしてその中に、歯科も組み込まれているのです。
点数を見るだけでは見えないもの
例えば、
・歯周病継続支援治療が整理された。
・口腔機能管理が評価された。
・デジタル歯科が推進された。
これを「拡充」と見るか。
それとも、「地域包括ケアに適合する歯科へ再設計している」と見るか。
ここで視点が分かれます。
今回の改定は“配置換え改定”
私は今回の改定を、“プラス改定”ではなく、“配置換え改定”だと感じています。
歯科を、
・外来完結型医療の一部として置くのか
・地域包括ケアの中核機能として置くのか
その位置を、静かに変えている。
まだ本番ではない
今回の改定は、完成形ではありません。
むしろ、次の体系整理の前段階のように見えます。
診療報酬体系そのものも2040年に向けて整理され始めています。
評価の分解、可視化、データ化。
おそらく令和10年で、もう一段階の整理が入る可能性は高い。
今回の改定は、その“布石”に見えます。
最後に
先生は、今回の改定を「点数がどう変わったか」で見ますか。
それとも、「歯科の役割がどう再定義されたか」で見ますか。
2040年の医療構造の中で、先生の医院はどの位置に立っているのでしょうか。
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