歯科医院経営において、
・売上を伸ばしたい
・利益率を上げたい
・スタッフの生産性を高めたい
これは当然の目標です。
同時に、
・患者満足度を上げたい
・リピート率を高めたい
・クレームを減らしたい
これも重要です。
ここで多くの経営理論が示すのが、バランススコアカード(BSC)という考え方です。
財務の視点と顧客の視点を、内部プロセス(業務改善と教育)につなげる。
しかし、歯科医院において、財務と顧客だけで設計すると、どこかで歪みが生じます。
なぜなら医療には、“患者の要望”と“患者にとって必要なこと”が一致しない場面があるからです。
財務の視点:結果を見る
まず財務の視点。
・売上
・利益率
・コスト削減
・生産性向上
これは経営の結果です。
例えば、
・チェアタイムの効率化
・キャンセル率の低減
・高付加価値治療の比率向上
こうした取り組みは、財務に直結します。
しかし、財務だけを見ていると、
「回す医療」
「単価を上げる医療」
に偏る危険があります。
顧客の視点:評価を見る
次に顧客(患者)の視点。
・待ち時間が短い
・説明が分かりやすい
・院長やスタッフが親切
・痛くない
これは大切です。
患者満足度が上がれば、リピート率も紹介も増えます。
しかし、ここにも落とし穴があります。
健康観が育っていない患者が望むのは、
・痛くなったらすぐ治す
・できるだけ安く
・できるだけ早く
・できるだけ短い期間で
一方、医療として必要なのは、
・主訴だけでなく治療が必要な箇所への治療
・継続管理
・生活習慣の改善
・セルフケアの定着
です。
ここにギャップがある。
だから必要なのが「医療の視点」
医療の視点とは何か。
それは、
患者が“健康にとって必要な行動”を取れるように患者の意志を主体とした支援をすること。
・患者が納得して必要な治療を受ける
・定期管理を続けられる
・セルフケアを習慣化できる
・生活背景を踏まえた支援ができる
・長期的に歯を守れる
これが医療の本質です。
リバタリアンパターナリズムのスキルを使い、患者の「今の満足」だけではなく、患者の「未来の健康」を患者と一緒に設計する。
患者が目標に向かって着実に歩みを続けられるようにソーシャルワークによって支える。
これが医療の視点です。
医療の視点を加えたBSC
歯科医院におけるBSCは、少なくとも4つの視点が必要です。
① 財務の視点(結果)
・営業利益率
・チェア稼働率
・LTV(生涯価値)
・自費比率
② 顧客の視点(評価)
・定期来院率
・キャンセル率
・紹介率
・満足度
③ 医療の視点(本質)
・SPT継続率
・再発率
・治療中断率
・歯周病数値の改善率
・セルフケア指導の実施率
・口腔機能管理の実施率
④ 内部プロセスの視点(仕組み)
・初診カウンセリングの標準化
・治療計画立案率の向上
・情報共有体制の整備
・教育体制の強化
因果関係を描けるか
重要なのは、これらをバラバラに見ることではありません。
例えば、患者が必要な治療と管理をを納得して受けることによる財務安定
この因果関係を描けているかどうか。
医療の質が上がる
→ 患者の信頼が上がる
→ 継続率が上がる
→ 財務が安定する
このストーリーを持たないまま、売上だけを追うと苦しくなります。
医療を抜いたBSCは、短期志向になる
財務と顧客だけで設計すると、
・短期売上
・目先の満足
に引っ張られやすい。
しかし医療は、
時間軸が長い。
今日の選択が、5年後の健康を決める。
だからこそ、医療の視点を明確に入れないと、医院の方向性がブレます。
ただ、実際には医療の視点、顧客視点はしっかりとあるが財務の視点が足りていないケースも多い。
しかし、財務の視点がなければ医療品質や顧客満足度を保つ為の原資が確保できなくなる為、永続性がなくなるのです。
最後に
先生の医院は、
・売上目標は明確ですか。
・患者満足の基準は明確ですか。
では、
・医療としてのゴールは明確ですか。
患者に5年後、どうなっていてほしいのか。
そこから逆算して、業務プロセスは設計されていますか。
医療の視点を抜いた業務改善は、効率化にはなっても、持続可能にはなりません。
歯科医院経営とは、財務と顧客を追いながら、医療の本質を守る営みです。
その三つをつなぐ設計図を、先生は描けていますか。
一度、スタッフと話し合ってみてくださいね。
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