医療費抑制の時代、収益を守るには“視点の転換”が必要
国の財政状況を背景に、診療報酬は今後さらに厳しい改定が続くと見られています。令和6年の診療報酬改定では、歯科分野でも「包括評価」や「ICT活用」「アウトカム評価」が重視される方向が明確になりました。令和8年改定では、さらなる効率性・連携・継続管理重視の流れが加速することが予測されています。
こうしたなか、売上を守る・増やすためには、大がかりな設備投資や広告よりも、「1日5分でできるアクション」を積み重ねることが、着実かつ確実な経営改善につながります。
今回は、「すぐに実践できて効果のある“ワンポイント経営術”」をお届けします。
ポイント①:「説明の5分追加」で自費率が変わる
自費治療の選択率に大きく影響するのが、説明の時間と質です。
ある医院では、診療終了後に院長が“5分だけ丁寧に治療方針を説明”するようにしただけで、補綴治療の自費選択率がアップしました。
ポイントは以下の通り:
・患者の不安を聞く(傾聴)
・治療法の選択肢を図や説明ツールで示す(視覚化)
・メリット・デメリットを公平に伝える(中立性)
・「●●さんにとっては、こちらの方法が合っていると思います」「詳しくは治療コーディネーターから説明しますね」と提案(個別性)
このように「情報提供+個別提案」の組み合わせで、患者の納得感と信頼が深まり、自費率は自然に上がっていきます。
ポイント②:歯科衛生士の“診る患者数”をあと1人増やす
歯科衛生士枠の患者数は、医院経営の安定に直結します。
特に「1人の衛生士が1日に診る患者数」を1人増やすだけで、月に約20人、年間約240人の増加になります。保険診療であっても、1人あたり平均単価8,000円〜12,000円と考えれば、年間200万円以上の増収が見込めます。
そのために必要なのは、
・予約枠の見直し(無理なく診られる30〜60分単位の設計、隙間時間が出た時の対応)
・アポイント枠の分類(SPT/基本治療枠/SRP枠/P検査枠/OHI枠などの可視化)とルール化
・GradeとStageによる再評価システム(施術時間、管理期間決定と適正化)
・歯科衛生士が中断患者に電話する、ハガキを書く仕組みの整備
・予約キャンセル後の“追いかけ判断フロー”のルール化
特に「中断防止(手段)=患者の健康維持(目的)=売上維持(結果)」という視点をチームで共有すると、スタッフの行動が変わります。
時々、生産性を上げる目的で施術時間の短縮を提案される院長がおられますが、根拠のない提案は歯科衛生士のモチベーションを下げてしまいますので要注意です。
ポイント③:患者1人あたり単価の“見える化”で意識が変わる
経営改善をするには、まず「現状を知る」ことが重要です。
・治療部門の本日の売上
・歯科衛生士部門の本日の売上
・本日の自費治療金額
・医院全体の1日あたり来院患者数、キャンセル数
・患者1人あたりの平均保険点数
・上記項目それぞれの目標対比
・月の残り日数から、明日に達成するべき数字と対策
数値と行動の目標を朝礼で共有し、結果を終礼で報告する習慣を作るのです。
ただし、売上は単なる手段なので「何の為にその目標数値を達成する必要があるのか?」も話してくださいね。
現状を見える化することから「一人一人がどう行動するべきか?」を明確にしていくのです。
こうしたデータを毎日チームで共有し、一日の目標を設定し、「今日は●●点を目指そう」「WSDや知覚過敏、歯の着色や変色、ブラキシズムがある患者に治療を提案してみよう」「かかりつけ患者の急患を1人診よう」といった小さな目標を立てて取り組むことで、行動と意識が数字とつながり、改善の成果が見えやすくなります。
これは、心理学でいう「フィードバックループ」を活用したマネジメント手法です。数字を見る→対策を立てる→行動する→また数字を見る。この循環が自然に回り始めると、勤務ドクターやスタッフの動機づけにもつながります。
ミーティングで出される月間の数値は結果でしかありません。「今日何をするのか?」にまで落とし込むことが大切なのです。
ポイント④:「ひとこと声かけ」の導入で次回来院率アップ
最後に紹介するのは、もっとも手軽で効果的な施策です。それは「〇〇さん、次もご予約の●月●日にお待ちしていますね」とひとこと伝えること。
この声かけがあるだけで、患者の来院意欲が高まり、リコール率(次回来院率)は向上するのです(行動経済学の手法)。
ある医院では、定期管理の継続来院率が79%→86%へ向上。ひとことの積み重ねが医院の経営を変えるのです。
先生の医院では、小さなアクションが“仕組み化”されていますか?
医療費抑制と診療報酬の構造変化の中で、歯科医院経営は「単価と継続率の最大化」がカギを握ります。
売上を伸ばすために必要なのは、「日々の診療の中でできる、あと1アクション」の仕組み化です。
先生の医院では、「あと1アクション」で売上を伸ばす工夫がチーム全体で共有されていますか?
また、その成果を“見える化”して、評価や教育につなげる仕組みはありますか?
ご希望があれば、「経営分析と活用法」「小さなアクションの仕組化」もごサポート可能です。院長だけが経営目標達成に躍起になっている状態から抜け出しませんか?
ぜひ一度ご相談ください。