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◆歯科医院経営ブログ

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【政治と医療改革シリーズ4】地殻変動の時代に、歯科医院の院長は今から何を準備すれば良いのか?  [2026年06月26日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
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はじめに

このシリーズでは、自民・維新連立という政治構造の変化(シリーズ1)、医療費抑制の具体的な動き(シリーズ2)、データが制度設計を変えていくという診療報酬改革の本質(シリーズ3)をお伝えしてきました。

今回は、これらの変化を踏まえて「では歯科医院は今から何を準備するか」という問いに向き合います。

ただし、最初に断っておくことがあります。「今から何を準備すべきか」の答えは、医院によって違います。収益モデルが違う、規模が違う、地域の経営環境が違う、院長が所有する経営資源が違う。すべての医院に当てはまる万能の処方箋はありません。しかし、どの医院の院長にも共通して問われることはあります。今回はその共通の問いを整理した上で、経営の設計思想としての方向性をお伝えします。

「何を強化して、何を捨てるか」を決める

国が歯科医院に求める役割は、年々広がっています。う蝕管理・歯周病管理・口腔機能管理・生活習慣病連携管理・訪問歯科・多職種連携。これらすべてに高い水準で対応できる医院は、1.5次機能を持つ大規模な多機能型歯科医院など、ごく限られています。

多くの歯科医院にとっての現実は、「すべてに対応しようとすると、どれも中途半端になりコストを回収できない」ということです。ユニット数・スタッフ数・院長の専門性・地域の需要構造という制約の中で、何を強化して何を捨てるかを決めることが、これからの経営の起点になります。

たとえば定期管理型の収益モデルを選ぶなら、歯科衛生士を安定的に確保し育成できる医院ブランドと仕組みが前提条件です。歯科衛生士の採用が構造的に困難な地域でこのモデルを選べば、理想と現実の乖離が広がります。訪問歯科を柱にするなら、多職種連携の実績と地域医療介護ネットワークへの参入と信頼構築が必要です。インプラントや矯正を強みにするなら、その需要が将来にわたって存在する地域かどうかを検証する必要があります。

収益モデルは、現時点で収益性が高いとされているものを選ぶのではなく、自院の地域・採用環境・院長の経営資源に照らして「選べるモデル(成果を出せるもの)」の中から選ぶものです。「成功しているモデルの真似をする」という発想が最も危険です。

経営数値を「読む」習慣を持っているか

次に問いたいのは、経営数値の把握についてです。

売上が増えたか減ったか、新患が増えたか減ったか、自費の割合が変わったか。これらは多くの院長が把握しています。しかし、「なぜその数値が変わったのか」「どこを対策すれば数値が改善するのか」を、数値から読んで具体的な手を打てている院長は少ない。

たとえば売上の伸びが鈍化したとき、「広告が足りない」という結論に飛びつく院長がいます。しかし実際には、治療や定期管理患者の中断が増えているケースや、予約枠を急患が奪い、かかりつけ患者の予約が取りにくくなっているケースがあります。原因を特定せずに広告費を増やしても、問題は解決しません。

月次の経営数値を追う際に最低限把握すべき指標があります。新患数・再初診数・リコール率・継続来院率・患者一人当たり月次売上・歯科衛生士一人当たり担当患者数と売上・ユニット稼働率・自費売上比率・人件費率・・・等々。これらを定点観測し、前月・前年同月と比較しながら変化の理由を考え対策する習慣が、経営の感度を高めます。

先生の医院では、これらの数値を毎月確認していますか。そして、その数値の変化の原因を特定して対策を打ち、改善に繋げていますか。

財務管理という「経営の盲点」

経営数値の中でも、財務管理は特に盲点になりやすい領域です。

売上と利益の区別はできても、「お金の色分け」ができていない医院が多くあります。お金の色分けとは、手元にある現金が何のためのお金かを把握することです。運転資金、設備投資の積立、税金の引当、借入返済の原資。これらが区別されずに一つの口座にまとまっていると、帳簿上は黒字でも経営対策に必要な手元のお金が足りなくなるという事態が起きます。

特に危険なのは、「今年の売上が好調だから」という感覚で高額な診断機器や設備を導入してしまうケースです。設備投資は単年の売上感覚ではなく、複数年の収支計画と資金繰りの見通しを持った上で判断すべきものです。高コスト・高金利の時代に、この判断を誤ると医院財務に深刻なダメージを与えます。特に、お金を生まない設備投資はキャッシュの回転率下げ、利益が出にくい経営構造を作っていまいます。税金を減らすために設備を導入するなども同様ですが、どんぶり勘定の院長が生き残れる時代はもうすぐ終わりを告げるのです。

私が経営相談を受けるとき「医院の経営状態がわかる資料を見せてください」とお願いすると、経営に必要な資料が作成管理されていないことがあります。財務管理においては変動損益計算書・貸借対照表・資金繰り表・設備投資計画・キャッシュフロー計算書、管理会計における分析など。これらが揃って初めて経営の現状を判断できます。税理士に丸投げではなく、税理士の説明を受けながら院長自身がこれらの資料を読み、経営の現状を数値として理解する力が、これからの時代には不可欠です。

保険診療の位置づけを再設計する

このシリーズを通じてお伝えしてきたように、保険診療の収益構造はこれからも変化し続けます。医療費抑制・応能負担の強化・保険給付範囲の見直し。これらが重なるとき、「保険治療主体で現在の収益水準を維持し続けることは難しくなる」という前提で経営を設計することが現実的です。ユニットの拡張性に限界があり、定期管理患者のストックを増やしていくことが出来ないなら更に経営は厳しくなる。自費にシフトしようとする院長が増えるでしょうが、自費治療には治療技術とマーケティングの壁が存在し、その両方を所有しない院長が簡単に自費を増やせる訳ではないのです。

一方、保険での継続管理が機能している患者は、医院との信頼関係が深い。その信頼関係の中から、患者の健康にとって必要な自費診療の提案が自然な流れで生まれます。かかりつけ患者との長期的な関係が土台にあってこそ保険医療機関経営は機能するのです。

院長が今動くべきこと:3つの優先順位

最後に、どの規模・どの収益モデルの医院にも共通して今から動くべきことを三つに絞ります。

一つ目は、自院の経営数値を正確に把握して対策する体制を整えることです。月次売上や行動指標の主要項目を定点観測し、財務諸表を読める状態にすること。税理士任せではなく、院長自身が幹部スタッフに経営状態について説明し、幹部も含めて数値を理解して経営判断できる状態を作ることが、すべての戦略の前提条件です。

二つ目は、青本に基づく算定要件の点検と記録の標準化です。シリーズ3でお伝えしたように、データが制度設計を変えていく時代に、算定要件を正確に守り、その根拠をカルテに記録することは、医院を守る最大の備えです。これは今すぐ着手できることです。

三つ目は、自院の収益モデルを明確に決めることです。国が求める幅広い歯科医療のうち、自院が強化する領域と、対応しない領域を意識的に選択する。その選択が定まることで、人材育成・設備投資・マーケティングのすべての判断に一貫性が生まれます。何も決めないまま流されると、どの領域でも中途半端な医院になります。

まとめ:シリーズ全体を振り返って

政治の構造が変わり(シリーズ1)、医療費抑制の動きが具体化し(シリーズ2)、データが診療報酬の設計思想を変えていく(シリーズ3)。この三つの変化が重なるとき、歯科医院経営に求められるのは「変化を読んで、自院に合った準備をする」という姿勢です。

外部環境の変化は、すべての医院に平等に降りかかります。しかしその変化への対応は、平等ではありません。経営数値を正確に把握し、収益モデルを明確に設計し、算定の質を高めている医院と、そうでない医院では、同じ外部環境の変化に対して取れる選択肢の幅がまったく異なります。

 

地殻変動はゆっくりと、しかし確実に進んでいます。気づいたときに動いても間に合わない変化に備えて、今動ける院長が、地域の中で残り続ける医院を作ることができます。自院の現状を客観的に診断したい、経営の設計を一緒に考えたい、という院長はぜひ一度ご相談ください。

先生の医院のこれからを、心から応援しています。

 

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