院長は「加算」を見るが「減算」を見ない
患者数、新患数、自費売上、ユニット稼働率・・・。多くの院長が日常的に確認する数値は「増えるもの」に集中しています。一方、治療中断、歯科衛生士枠の中断、アポ未確定率・・・。こうした「減るもの(マイナス要素)」をきちんと数値で把握している院長は少数なのです。
これは長年続いたトライアル経営(新患重視)が残した副作用です。新患を集めて補綴物のセットをする、自費につなげるという加算面だけを見る習慣が染み付いている。う蝕患者が溢れていた時代の保険診療では回転率が重要でしたので、経営面だけで見れば患者の離脱は重視する必要がなかったのです。その時の習慣が今も残っている院長が多い。キャンセル率をチェックしている医院はあっても、「治療中断、管理中断になった患者が月に何人いるか」を把握して対策している医院は少ないのです。
だからバケツに水を注ぎ続けても、穴が空いていてバケツが満たされない。その穴の存在にさえ気づいていない院長が、今も多くいます。
「中断カルテ」を積み上げてみる
中断対策の第一歩として、現場で私がお勧めしていることがあります。治療中断になったカルテを別に積み上げ、スタッフと一緒に眺めることです。
数字で見るより、物理的に積み上げられたカルテの束を目で見ることで、「こんなに離脱している患者がいたのか」という現実が腑に落ちやすくなります。「あの患者は変わった人だったから」という言い訳が出てくることが多いと思いますが、それでも構いません。まずバケツの穴が複数空いていることを、院長とスタッフが目で確認することが出発点です。
新患1人より、中断防止1人のほうがコストが低い
新患を1人獲得するためには広告費・時間・スタッフの対応コストがかかります。一方、すでに来院している患者が中断せず継続してくれることには、追加コストがほとんどかかりません。経営的に見れば、中断を1人防ぐことは新患を1人獲得することより低コストで高い収益効果をもたらします。
さらに時代の変化も後押しします。国が継続管理と連携を重視する診療報酬体系に移行している今、リピート型経営はインセンティブの面でも有利になっています。LTV(患者生涯価値)を高める経営は、医療的にも経営的にも正しい方向なのです。
どちらが大事か?答えは「順番」にある
新患確保と中断対策、どちらが大事かという問いへの答えは「順番」にあります。バケツの穴が大きいまま新患を増やしても、離脱し続ける構造は変わりません。まず中断を減らしてバケツの穴を塞ぐ。その上で新患確保に投資する。この順番が、経営数値を本当の意味で改善させます。
長年のトライアル経営の習慣から抜け出すのは簡単ではありません。しかし中断カルテの束を目の前に積み上げたとき、院長は何かを感じるはずです。その感覚が、経営の軸を変える第一歩になります。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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