歯科衛生士の採用に苦戦している医院の院長から「どこに広告を出せばいいのか」という相談をよく受けます。しかし問題は媒体の選択より前にあることが多いのです。応募がある医院に共通しているのは、複数の媒体に幅広く広告を出し、応募者の目に留まる可能性を地道に増やしていることです。ハローワーク経由で応募が来ることもあれば、求人サイト経由のこともある。「どの媒体が正解か」より「とにかく応募者の目に留まる機会を増やす」が採用広告の第一段階です。
広告を見て興味をもった求職者が次に何をするか。ホームページやInstagramを確認することが多いと感じます。そこで写真や動画を通じてどんな医院の雰囲気が応募者に伝わるか。「働いてみたい」と思えるかどうかが、見学を含む応募に繋がるのかを決めます。広告文の内容とともに、医院の見え方全体を整えることが応募数に直結します。
また、ホームページに採用サイトがあり、広告媒体でスカウトメールなどを小まめに送ったり、募集文章を見直したり、応募がある医院はとにかく対策が小まめで丁寧なのです。
「丁寧に教えます」の落とし穴
多くの医院の求人広告には「経験が浅くても、ブランクが長くても一から丁寧に教えます」という文言があります。しかし実態として、入職した歯科衛生士をベテランスタッフに丸投げしてしまう医院が少なくありません。教育カリキュラムもマニュアルもなく、指導担当の歯科衛生士が忙しい日常診療の中で教える時間を取れない。こうした環境では、入職した歯科衛生士はすぐに「聞いていた話と違う」と感じ、退職につながります。また、指導担当の歯科衛生士も「新人が着実に成長できる指導法」について誰からも教わる機会もなく院長から新人の指導を指示されることが多い。そこにも大きな問題があると感じます。
一方、教育カリキュラムやマニュアルが整備され、指導担当の歯科衛生士がじっくり時間をかけて育てる体制がある医院では、定着率が高くなります。広告でうたう「成長環境」を実際に整備しているかどうかが、採用の持続可能性を決めます。
歯科衛生士採用で最も重要な「見えない広告」
歯科衛生士採用で見落とされがちな最大のポイントがあります。歯科衛生士学校の繋がりでの口コミです(特に同期間)。歯科衛生士のコミュニティは狭く、「あの医院は良い」「あそこは辞めた人が多い」という情報が口コミのネットワークを通じて広がります。
だから成長環境が整っていない医院で退職者が増えると、次第に応募自体が減っていきます。逆に、歯科衛生士がやりがいを持って成長できる環境が整っている医院には、口コミを通じた紹介や応募が自然に集まってきます。採用広告に費用をかける前に、いま働いている歯科衛生士が「この医院で働いて良かった」と感じているかどうかを確認し改善することが、採用戦略の出発点です。
院長が今週確認すべき三つのこと
歯科衛生士採用の基本を整理します。一つ目は露出の拡大です。求人媒体を一つに絞らず、複数チャネルに広告を出して目に留まる機会を増やす。二つ目は医院の見え方の整備です。ホームページとSNSの写真・動画が「働いてみたい医院」の雰囲気を伝えているかを確認する。三つ目は成長環境の実態確認です。広告でうたっている「教育体制」が実際に機能しているかを、今いるスタッフの声で確認する。
採用は「来てもらうこと」がゴールではありません。来てくれた人が育ち、定着し、医院の口コミを広げてくれる存在になること。そこまでを採用戦略として設計することが、人材難の時代に歯科衛生士を確保し続ける唯一の方法です。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。

















