競合のオープンは「脅威」ではなく「試験」
近隣に新しい歯科医院がオープンすると、多くの院長が不安を感じます。患者が減るのではないか、売上が下がるのではないか。その不安は自然なものです。しかし現場を長年見てきた立場から言えば、競合歯科医院がオープンした時ほど、医院の実力が試される場面はありません。
来院中の患者の中にも内覧会に足を運ぶ患者は必ずいます。興味本位で訪れた内覧会、そこで患者がよく口にする言葉があります。「今かかっている歯医者で○○と言われているんですが、それってどうなんですか?」。現在通っている医院の治療への疑問を解決できていない患者ほど、こうした機会にセカンドオピニオンを求めます。競合のオープンは、自院の患者対応の質を映す鏡でもあるのです。
転院する患者と、戻ってくる患者
競合医院がオープンして転院する患者は、大きく二つに分かれます。一つは「より良い医院があるかもしれない」と常に探し続ける患者です。しかし、こうした患者は競合がオープンしなくてもいずれ転院します。過度に引き止める必要はありません。
もう一つは、長年通い続けていた患者が転院するケースです。2年以上通っている患者が競合に移るとすれば、それは院内に何らかの問題がある可能性が高い。競合のオープンをきっかけに、自院の患者対応や治療説明の質を見直すきっかけとして受け取ることが必要です。
私は長期管理型の医院ほど競合医院の開院に強いと感じています。担当歯科衛生士との信頼関係が育ち、治療や継続管理の意味を理解している患者は、新しい医院に移るメリットを感じにくいからです。転院する理由があるとすれば「予約の取りにくさ」でしょうか。でも、「他の医院に行きましたが、やっぱりこちらの方が良いです」と戻ってくる患者もいます。
最大の失敗「同質化」という罠
競合オープン時に院長が陥りやすい最大の間違いがあります。競合医院と同じ設備や治療コンテンツを揃えようとすることです。
しかし考えてみてください。これまで他の医院と違うことをやって患者に支持されていたのに、なぜ自ら「同質化」を進めるのでしょうか。同じことをやれば、規模が大きく設備が新しい医院が勝ちます。これはマーケティングの原則です。競合の真似をすることで、自院がこれまで築いてきた強みを失うリスクすらあります。
「私の話を院長もスタッフも丁寧に聴いて共感してくれる」という患者の体験も、立派な強みです。最新機器でなくても、長年の信頼関係構築の取り組みの中に積み上げられた医院固有の価値があります。競合の真似をすることで、その価値が薄れてしまうことを忘れてはなりません。
正解は「強みをさらに磨く」こと
競合がオープンしたとき、院長がすべきことは一つです。自院の強みに集中し、その魅力をさらに磨くことです。
そしてもう一つ、視点を変えて考えてみてください。競合のオープンは、そのエリアに歯科治療需要があることの証拠でもあります。競合と同質化するのではなく、患者に選ばれる理由をより鮮明にすることで、需要の大きなマーケットの中で自院のポジションを確立できます。自院の医院づくりに自信があれば、競合のオープンを過度に恐れる必要はありません。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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