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【政治と医療改革シリーズ1】政治の構造が変わった。歯科医院を取り巻く医療制度改革の新しい現実  [2026年06月23日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
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はじめに

歯科医院の経営を取り巻く外部環境の変化を語るとき、診療報酬改定の点数の増減に目が行きがちです。しかし、その点数を決める「政治の構造」が変わっているとしたら、院長はもう一段上の視点から状況を読む必要があります。

2025年10月、日本の政治に一つの変化が起きました。自由民主党と日本維新の会による連立政権が発足したのです。これは単なる連立の枠組みの変化ではありません。医療制度改革の議論が、これまでとは異なる力学で動き始めたことを意味します。

このシリーズでは、政治の構造変化が歯科医院経営にどのような影響をもたらすかを、事実に基づいて整理します。特定の政党への評価は一切行いません。院長が自院の経営判断に活かせる「変化の方向性」を読み取ることが目的です。

【事実】2025年10月、連立政権の枠組みが変わった

2025年10月21日、自由民主党と日本維新の会は連立政権合意書に署名し、連立政権を樹立しました。これはこれまでの自民・公明の連立とは異なる組み合わせです。

この連立に際して両党が締結した合意書は、社会保障改革に関する項目を多く含んでいます。合意書の全文が公開されており、そこには社会保障改革に関する13の具体的な項目が列挙されています。医療費窓口負担の応能負担化、OTC類似薬の保険給付の見直し、中央社会保険医療協議会(中医協)の改革、医療介護分野における都道府県の役割強化。これらはいずれも、歯科医院の経営環境に直接・間接に関わるものです。

重要なのは、これらが「将来の検討課題」ではなく、合意書の中でスケジュールが明記されているという点です。合意書には「2025年度中に社会保障改革項目の具体的な骨子について合意し、2026年度中に具体的な制度設計を行い、順次実行する」と記載されています。

【事実】これまでと何が違うか

これまでの医療制度改革の議論は、どのように行われてきたでしょうか。

診療報酬は中医協(中央社会保険医療協議会)で議論され、その議論には診療側・支払側・公益側の三者が関与します。診療側には日本医師会・日本歯科医師会の代表が入っており、医師会・歯科医師会は診療報酬の議論に一定の影響力を持ってきました。また、自民党の医系議員が医師会・歯科医師会との関係を通じて政策に関与する構造も長く続いてきました。

今回の連立政権の合意書には、この中医協の改革が明記されています。「病院機能の強化、患者の声の反映およびデータに基づく制度設計を実現するための中央社会保険医療協議会の改革」という項目です。中医協の構成や議論の枠組みを変えることは、診療報酬を決めるプロセスそのものを変えることを意味します。

また、連立前の2025年2月には、自民・公明・維新の3党がすでに「国民医療費の削減」を内容とする合意を成立させています。その合意を受けて2025年6月に閣議決定された「骨太方針2025」にも、医療費抑制の方向性が明記されました。つまり、連立政権発足以前から、医療費削減の方向性は政治的な合意として存在していたのです。

【事実と予測】「外から圧力」から「内から実行」への変化

ここからは、確認できる事実をもとにした「合理的な予測の方向性」をお伝えします。

これまでの医療費削減をめぐる政治的な力学では、医師会・歯科医師会との関係を重視する自民党が、改革に一定のブレーキをかける構造がありました。改革を求める側と、現場の医療機関を代表する側との間で、毎回の診療報酬改定はその均衡点を探す作業でもありました。

今回の連立政権という構造は、この力学に変化をもたらす可能性があります。社会保障改革に強い姿勢を持つ側が政権の中に入ったことで、改革の議論が進む速度と深度が変わる可能性があります。もちろん、合意書に書かれたことがすべてそのまま実現するとは限りません。自民党の立場、医師会・歯科医師会の意向、世論の動向、財政状況によって、実際の制度変更の規模や時期は変わります。ある民間シンクタンクの分析でも、「改革の規模は当初の掲げる目標よりも小さくなる可能性が高い」という見方があります。

ただし、方向性は変わりません。医療費の適正化・患者の応能負担の強化・保険給付の範囲の見直し。この流れは、連立の枠組みがどう変化しようとも、少子高齢化と社会保障財政の構造的な問題を背景として続いていきます。

歯科医院にとって何が変わり始めているか

今回の政治的変化が歯科医院経営に与える影響を、具体的に整理します。

一つ目は、OTC類似薬の保険外しです。市販薬と成分・用量がほぼ同じ医薬品を保険適用から外すという方針が、骨太方針2025に明記され、連立政権の合意書にも引き継がれています。歯科での処方に直接影響する品目は限られていますが、「保険でカバーされる範囲が縮小する」という流れの先例として注目する必要があります。

二つ目は、患者の応能負担の強化です。収入や資産に応じて医療費の自己負担を変える方向性が、合意書に明記されています。高所得者の窓口負担が増えることは、受診行動の変化につながる可能性があります。一方で低所得者への配慮も明記されており、患者層によって医療へのアクセスの仕方が変わる可能性があります。すでに、高齢者の基本3割負担の論議も始まっています。

三つ目は、中医協改革の動向です。診療報酬を決めるプロセスに変化が生じれば、歯科の診療報酬の議論の構造も変わり得ます。「データに基づく制度設計」という方針は、前のシリーズでお伝えしたレセプトデータの分析強化・標準的電子カルテの普及という流れと一本の線でつながっています。

まとめ

政治の構造が変わったという事実を、院長は知っておく必要があります。これは特定の政党への支持・不支持の話ではありません。歯科医院経営の外部環境を変える力学が動いているという事実の話です。

診療報酬改定の点数を追いかけるだけでなく、その点数が決まる構造そのものが変化しつつあることを理解した上で、自院の経営設計を考える院長と、そうでない院長では、5年後・10年後の選択肢の幅が変わってきます。

次回、シリーズ2では、「年間4兆円削減」という目標が具体的にどのような形で医療制度に影響を与えようとしているかを、個別の政策の動きとともに整理します。

 

先生の医院のこれからを、心から応援しています。

 
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