不動産投資や金融投資に手を出していませんか
ある程度医院の収益が安定してくると、院長の中に「本業以外の収入源をつくりたい」という気持ちが生まれてきます。
不動産投資、株式投資、投資信託・・・。実際に副業的な投資に取り組んでいる院長は昔からおられます。
その動機はさまざまです。
「医院の売上だけに依存するリスクを分散したい」
「節税対策として不動産を持ちたい」
「老後の資産をつくりたい」
「余剰資金を眠らせておくのはもったいない」
どれも理解できる考え方です。
しかし私がこれまで多くの院長を見てきた経験から言えば、本業である歯科医院経営と並行して副業投資を行い、それが本当にうまくいっているケースは多くありません。
むしろ、その資金と時間とエネルギーを本業に投じた方が、はるかに高い利回りが得られたのではないかと感じることが多いのです。
不動産投資の「利回り神話」が崩れるとき
かつてよく言われた考え方があります。
「借入金利を不動産の利回りが上回っているなら、早期返済より長期保有・追加投資の方が合理的だ」という考え方です。
低金利が続いた時代には、この論理が成立するケースもありました。
しかし金利上昇局面では、この構造が一気に逆転します。
家賃収入が変わらないまま金利負担だけが増えれば、手取りは減ります。空室率が上がれば利回りは下がります。
修繕費や管理コストが増えれば、さらに手残りは圧迫されます。
不動産投資の「見かけの利回り」と「実質の手残り」の間には、想定外のコストが積み重なることが多い。
歯科医院の借入も同様です。
診療収益を生み出すためのインフラへの借入に対して、金利が上昇すれば返済負担は重くなります。
しかし不動産投資と大きく異なる点があります。
歯科医院は院長自身の技術・経営判断・スタッフ育成によって、収益を能動的に高めることができます。
不動産の家賃は市場に左右されますが、歯科医院の収益は院長の行動によって変えられます。
本業への投資が、最も利回りの高い投資である
ここで一つ問いかけさせてください。
副業投資に充てている資金を、もし本業に投じていたら何ができたでしょうか。
歯科衛生士ユニットを一台増設すれば、定期管理患者の受け入れ数が増え、リピート型収益の基盤が広がります。
スタッフの採用・育成に投資すれば、院長が診療から離れられる時間が生まれ、経営判断に使える時間が増えます。
マーケティングに投資すれば、地域での認知度が上がり、新患の流入が安定します。
借入の繰り上げ返済に充てれば、毎月の返済負担が減り、手元に残るキャッシュが増えます。
これらの投資はすべて、院長が最もよく知っている事業、歯科医院経営の中で行われます。
投資先の構造を自分で理解している。どのレバーを引けば何が変わるかが分かる。
問題が起きたときに自分で対処できる。これは副業投資にはない、本業投資の大きなアドバンテージです。
不動産市場や株式市場の動向は、院長には制御できません。
しかし自院の患者数・患者単価・スタッフの生産性は、院長の判断と行動によって動かせます。
「自分がコントロールできる投資先」に資金を集中することが、経営者としての合理的な判断です。
副業投資が「うまくいかない」本当の理由
院長が副業投資でうまくいかないケースには、共通したパターンがあります。
一つは「本業の忙しさの中で、副業投資に十分な時間と注意を払えない」ことです。
不動産投資も金融投資も、放置していれば成果が出るほど甘いものではありません。
市況を読み、タイミングを判断し、問題が起きれば対処する。これには時間とエネルギーが必要です。
診療と経営に追われる院長が、それを並行して行うことには無理があります。
もう一つは「自分が深く理解していない領域に投資している」ことです。
不動産投資のセミナーや営業トークに乗り、仕組みを十分に理解しないまま購入する。
株式や投資信託を「なんとなく良さそうだから」と始める。
自分が詳しくない領域への投資は、予測できないリスクを抱えます。
そして三つ目は「本業に使うべき資金と時間を副業投資に振り向けることで、本業の成長機会を逃している」ことです。
副業投資が苦戦している間に、本業への投資を怠った競合医院が患者を増やしている。こういう事態は、実際に起きています。
では、資産形成はどう考えるか
副業投資を否定しているわけではありません。
本業が十分に安定し、手元資金に余裕があり、院長自身が深く理解している分野であれば、資産分散の意味で投資を行うことには合理性があります。
ただし優先順位の問題として、開業から10年以内の院長、まだ借入残高が大きい院長、本業の成長余地がまだある院長にとっては、本業への再投資と借入の返済が最も確実な資産形成の手段です。
「本業で稼いだお金を本業に再投資する」
これは地味に見えますが、自分がコントロールできる最も確実な投資です。
そしてその積み重ねが、10年後・20年後の経営の安定につながります。
具体的にどのような資金計画が自院に合っているかは、顧問税理士とぜひ一度しっかりと話し合ってみてください。
ただし、顧問税理士が金融商品や不動産投資を紹介してくる場合には要注意。手数料目当てである可能性があるからです。
まとめ
金利上昇局面では、不動産投資の「利回り神話」は成立しにくくなります。
そして歯科医院の院長にとって、最も利回りの高い投資先は多くの場合、本業である歯科医院そのものです。
副業投資に使う資金・時間・エネルギーを本業に集中させること。
借入を着実に返済しながら、本業の収益力を高めていくこと。
この基本に忠実な院長が、10年後に最も強い経営基盤を持っています。
先生の医院の資金の使い方について、一度整理してみたいと感じた院長は、ぜひご相談いただければと思います。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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