歯科医院経営に日々向き合う中で、ふと「これでいいのだろうか」と立ち止まる瞬間は誰にでもあると思います。
そんなとき、経営の本質を突いた名言は、方向性を再確認する大きなヒントになります。
今回は、京セラ創業者であり日本航空の再建でも知られる「稲盛和夫」氏の言葉を取り上げ、歯科医院経営にどう活かせるかを考察してみます。
稲盛氏が最も大切にしていた哲学がこの言葉です。
何かを決断するとき、「その動機は純粋か?」「自分の利益ばかり考えていないか?」と自問することが、正しい経営の道を歩む上での指針になるという意味です。
稲盛氏自身が「第二電電(現KDDI)」の創業時に自分に問いかけたことで知られ、経営者としてのブレない姿勢に多くの人が惹きつけられたのです。
医院経営においても、この問いは非常に重要です。
スタッフは院長の日頃の言動をよく見ているからです。患者への治療提案、診療報酬の算定、経営計画の発表、月次ミーティング等、院長の姿勢が表れたり、経営の方針を話す場面は日々訪れます。
そのすべてにおいて「動機善なりや、私心なかりしか」と問い直すことで、信頼される医院づくりができるのです。
稲盛氏は経営哲学として「利他の心」を根幹に置いていました。
医院でも、理念が明確で共有されている組織は、判断がブレにくく、長期的な信頼を得られます。
● なぜこの医院を経営しているのか?なにを実現したいのか?
● スタッフや患者に、どんな未来を提供したいのか?
● 医療人として、何を大切にしていきたいのか?
●理念と売上はどういう関係にあるのか?
これらを明文化し、チームで共有することで、日々の行動が一貫性を持ち始めます。
そして院長自身が理念行動をすることで院内に矛盾が無くなり理念が機能し始めるのです。
院長は経営相談で私に理念について熱く語っていたのに、スタッフと面談すると「院長は口を開けばお金のことばかり」と嘆いていたということも実際にありましたので、院長は理念で自分を縛る覚悟が必要だと感じます。
「才能×努力×考え方」で人生も経営も決まる
稲盛氏はまた「人生・仕事の結果=才能×努力×考え方」とも語っています。
「考え方」がプラスでなければ、どれだけ才能と努力があっても結果はマイナスになると述べています。
これはスタッフ育成にも通じる話です。
● 即戦力、経歴よりも、姿勢や成長意欲、思いを大切にして採用する
● 知識の詰め込みよりも、価値観を重視して育てる
● スキル向上よりも、考え方を整え自立に導くための1on1やフィードバックを重視する
●院長が”考え方”について日常からスタッフに丁寧に説明するように心がけている
医院文化を育てていく中で、「考え方」の共有がいかに重要かが見えてきます。
まとめ:「善なる動機」から経営判断を始めよう
稲盛和夫氏の名言を歯科医院経営に当てはめてみると、以下のような示唆が得られます。
● 判断の軸は「動機が善かどうか」にある
● 経営理念は行動を一致させるための“コンパス”になる
● スタッフ教育や採用も、「考え方」を重視する
先生の医院では、日々の経営判断の中で「私心なかりしか?」と立ち止まる習慣があるでしょうか?
「院長は経営セミナーに参加する度に言う事が変わる」
「月曜日に新たな課題は降ってくる」
はスタッフからよく聞く言葉です。
院長も成長途上なので悩んだり迷ったりすることはあるのですが、スタッフは「患者を救うヒーロー」を院長に求めているのです。
経営に迷いが生じたときこそ、偉人の言葉に耳を傾けてみる価値がある。
自分の軸をブラさない為に大切なことだと感じるのです。