開業時、あるいは移転を考えたとき、多くの院長がこう考えます。
・うちは都市部だから今後も患者は減らないだろう
・過疎地だけど競合が少ないし患者も来ているから大丈夫
・ここは駅前だから大丈夫
しかし今、その「地域の集患は安定しているはず」という前提そのものが、静かに崩れ始めています。都市部の駅前で閉院する歯科医院が出てきているのです。
大都市部は「有利」なのか?
確かに大都市部には、
・人口が多い
・交通アクセスが良い
・医療需要が安定している
といった有利な条件があります。
一方で、見過ごされがちな現実もあります。
・人件費は全国最高水準
・家賃・テナント料は上昇し続けている
・競合歯科医院が多く強い競合もいる
・採用競争は極めて激しい(強い企業や歯科医院と競合)
つまり、同じ保険診療をしていても、地方より経営コストもかかり経営の舵取りははるかに難しい。
都市部=自費で勝てる、ではない
都市部でよく聞く戦略が「自費診療を強化すれば何とかなる」という発想です。
しかし現実はどうでしょうか。
・インプラント
・アライナー矯正
・ホワイトニング
どれもすでに完全なレッドオーシャンです。
一部の院長は、
・高額自費を選ぶ“スキミング層”と強くつながり
・ブランド力で勝ち抜いています
しかし、これは人脈構築が必要で誰にでも再現できる戦略ではありません。
さらに見逃せないのは、
・中間層の下部が確実に貧困化している
・数年前から自費のデンタルローンが通らない患者が増えている
・今後、デンタルローンの金利も上昇していく
という事実です。
これまで中間層から中間価格帯の自費需要を獲得していた医院ほど、今後じわじわと影響を受けていく可能性があります。
過疎地は「競合が少ないから安心」なのか?
一方、過疎地・地方都市では別の問題が進んでいます。
・高齢化の進行
・新規開業がほとんどない
・一見すると患者数は安定している
しかし、その裏で起きているのは、
・スタッフ、特に歯科衛生士が集まらない
・勤務ドクターが確保できない
・若年層が地域から流出している
・足腰が悪く来院できない高齢者が増えている
という経営基盤そのものの弱体化です。
過疎化がある水準を超えると、
人口流出 → 税収減 → インフラ、商業施設縮小→公共交通機関の減便 → さらに流出
という負の連鎖が一気に加速します。
「地域の基幹歯科医療機関」という戦略
過疎地における一つの方向性として、
・地域の基幹歯科医療機関になる
・医科・介護・行政と連携する
→地域になくてはならない存在になる
という戦略があります。
ただし、これは、
・経営力、院長力
・治療品質の向上
・組織づくり
・人材育成
が揃って初めて成立するものであり、誰でも自然にたどり着けるポジションではありません。
拡大安定が難しいなら縮小安定を目指す必要があるのですが、サンクコストのバイアスが働くので院長自身で縮小していくのは難しいかもしれません。
問題は「場所」ではなく「読み」と「設計」
ここまで見てきたように、
・大都市部だから安定
・過疎地だから不利
という単純な話ではありません。
重要なのは、
・この地域は、これからどう変わるのか
・人口構成はどう動くのか
・働く人は増えるのか、減るのか
・医療・交通・商業インフラ、医療提供体制(一次から三次)は維持されるのか
そして、
その変化の中で、医療機関として自院はどんな役割を担うのか?を先に考えているかどうかなのです。
大都市であっても過疎地であっても、歯科医院は地域医療を支えていく存在です。だから地域と繋がり患者と繋がり、連携し合いながら地域医療を発展させていく一員であること。
その活動の中に活路があるのです。
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