ここ数年、歯科医院経営を取り巻く環境は急速に変化しています。
診療報酬改定、物価高、人件費上昇、医療DX、人口動態の変化…。
これらを俯瞰して見ていると、今後の歯科医院は二つの方向に分かれていくことがはっきり見えてきます。
それが、
・政策対応型歯科医院
・独立収益型歯科医院
です。
どちらが正解か、という話ではありません。
どちらも戦略としては成立する。
しかし、最も危険なのは、どちらにも振り切れない「中途半端」な医院です。
① 政策対応型歯科医院
― 管理・連携・在宅・DXを軸にする ―
■ 特徴
・歯周病継続支援治療(現SPT)、口腔機能管理、生活習慣病連携管理
・訪問歯科(施設、居宅)
・医師、看護師、地域連携室のSW、ケアマネ、行政、地域包括支援センター、介護職種、ST、RD、PT等との連携
・医療DX・データ活用
・地域包括ケアシステムに関する施設基準を積極的に取得・運用
国の医療政策と同じ方向を向いて進むモデルです。
■ 優位性
・診療報酬体系との親和性が高い
・政策強化分野に点数が集まりやすい
・人口減少社会でも地域から「必要とされる役割」を持てる
・歯科衛生士・多職種が活躍しやすく、組織化しやすい
・地域連携の中で紹介患者が増えていく
特に、「管理」「連携」を日常診療に落とし込めている医院は、令和8年以降の改定でも影響を受けにくくなります。
■ 気を付けるポイント
・形だけの施設基準取得で満足しない
・組織の人数が増えやすく、生産性の低下が起こり易い
・マンパワーが不足すると収益性が悪化しやすい
・書類・制度対応の手間が増えやすいので、現場が疲弊しない設計が必要
・院長一人で抱え込まず、チームで回せる体制づくりが不可欠
「政策に乗る」=「楽になる」ではありません。
組織力と運用力がなければ、逆に苦しくなる点には注意が必要です。
② 独立収益型歯科医院
― 外来中心・自費強化・既存分野の深化 ―
■ 特徴
・外来診療を中心に据える
・自費診療の比率を高める
・特定分野の専門性を深める
・独自ブランド・ファンを持つ
・マーケットボリュームが大きい分野のシェア率NO1
・政策依存を下げ、自院の強みで収益を生み出すモデルです。
・DX化の積極的推進
■ 優位性
・診療報酬改定の影響を受けにくい
・価格決定権を自院で持てる
・患者単価・利益率を高めやすい
・小〜中規模でも成立しやすい
特に、「何で選ばれているのか」が明確な医院は強い。
自費=インプラント・矯正、という単純な話ではなく、既存分野を深め、価値として伝えられているかが鍵です。
多角化における「垂直展開」「垂直統合」を上手く使いブランド価値を高めていきます。
■ 気を付けるポイント
・価格競争に巻き込まれない設計が必須
・院長依存が強すぎると拡張性がない
・自費説明・体験設計・信頼構築が弱いと崩れやすい
「自費をやっている=独立収益型」ではありません。
治療は「手段」であり「目的」ではないからです。
ブランド価値を高めていくには「何が実現する場」なのかが地域に浸透していくことが不可欠なのです。
深化と差別化ができていなければ、競争に巻き込まれるただの不安定モデルになります。
最も危険なのは「中途半端」
問題なのは、
・政策対応も中途半端
・自費強化も中途半端
・管理も外来も、全部やっているつもり
・しかし、どこにも強みがない
という状態です。
このタイプの医院は、
・コストは上がる
・人は疲れる
・点数も伸びない
・自費も売れない
という負のスパイラルに入りやすい。
こういうタイプは中型歯科医院に多く、何でもやっているがどれもが今一つ。
つまり患者のエボークトセットには入れずにマーケット需要を掴み切れないのです。
院長に問われているのは「選択」
これからの歯科医院経営で問われるのは、「うちは、どちらの道で戦うのか?」という意思決定です。
・政策対応型として、地域医療の中核を担うのか
・独立収益型として、外来で圧倒的な価値を築くのか
どちらも正解になり得ます。
しかし、選ばなければ、どちらにもなれない。
診療報酬改定は、「点数が上がるか下がるか」を見るイベントではありません。
医院の立ち位置を決め直す“分岐点”です。
先生の医院は、どちらの道で、5年後も選ばれているでしょうか?
答えを急ぐ必要はありません。
ただ、「戦略を決めないまま進む」ことだけは、これから最も危険になる。
そのことだけは、確かだと感じるのです。
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