令和8年の診療報酬改定は「プラス改定の方向性」と報じられ、
医療界全体では明るいニュースのように扱われています。
しかし私は、
歯科医院の院長はむしろ“喜んではいけない”と考えています。
なぜなら、
プラス改定であろうと、歯科外来の多くの医院は“実質マイナス”になる構造が既に確定しているからです。
今日はその理由を、
“点数の上下”ではなく“政策の構造”から分かりやすく解説します。
① プラス改定の予算は歯科外来に回ってこない
厚労省の今回の改定予算は、優先順位が3つあります。
⑴ 病院の経営改善(地域医療を守るため最優先)
⑵ ベースアップ評価料(賃上げ政策の中核)
⑶ 厚労省の政策医療(口腔機能・連携・在宅・重症化予防等)
ここまでで、実は予算の大半が使われてしまいます。
そして歯科外来に残るのは、
「既存点数の小幅改定」と「再配分」だけ。
つまり、プラス改定でも“歯科の治療点数が増える”とは限らない。
これは令和8年の改定でも変わりません。
② ベースアップ評価料が財源を吸い続ける“ブラックホール”
ベースアップ評価料は今後も中止されず、むしろ拡張される可能性が高い。
理由はこうです。
・政府は賃上げを最重要政策にしている
・財務省にとって“医療機関の人件費情報の取得装置”として非常に有用
・病院はベースアップ評価料がなければ人材確保が不可
つまり、
ベースアップ評価料は「削れない・止まらない・改定予算を食い続ける」構造。
ベースアップ評価料の算定率が上がれば上がるほど、
本体改定の財源が圧縮され、歯科の既存点数に回るお金は減り続けます。
③ 既存点数は「効果が低いものから縮小・廃止」へ
令和8年改定で特に強まると予測されているのが、
・軽度SPTの評価見直し
・義歯管理系点数の再構成
・歯管の適正化
・一部訪問管理の見直し
これらが行われるのは一つの理由です。
“管理・連携・デジタル強化”に予算を回すために、既存点数の削減で財源を捻出する必要があるから。
つまり、
国の政策に合わせて医院を変えなければ、点数増の恩恵はゼロになる。
④ “政策対応医院”と“従来型医院”の格差が決定的になる
令和8年〜10年の歯科政策で強化されるのは4つです。
● 歯周管理(新しいSPT体系へ移行)
● 口腔機能管理(口管強が軸)
● 医科・多職種連携(地域包括ケアの中で歯科の責任強化)
● デジタル補綴(CAD/CAM → フルデジタルへ)
特に危険なのは、小規模〜中規模の医院です。
大規模歯科医院よりも経営資源が限られますので、取組が中途半端になり収益に結びつけにくい。
例えばフルデジタルに対応するには投下する資金の負担が大きいのですが、ブランド力がない医院は資金を投下しても回収できない可能性が高いのです。
だから何を捨てて何に経営資源を集中させエッジを立てるのかをお考えくださいね。
大規模歯科医院は陣地戦での勝利を目指して攻めるしかないのですが、規模が大きい分だけ経営リスクも高いので戦略なき拡大で行き詰らない様に気をつけてくださいね。
⑤ 院長が“今喜ぶべきではない”最大の理由はこれ
「令和8年改定は、“政策適応の有無”と”治療の成果”で算定点数に大きな差がつく時代の始まり」だから。
プラス改定は単なる“全体の数字”でしかありません。
問題はその数字の内訳であり、
歯科外来の既存項目に配分される予算はわずかです。
行動する医院だけが伸び、行動しない医院は確実に沈む。
これは努力の問題ではなく、構造の問題なのです。
まとめ
国が進める医療改革の2040年までのビジョンは示されています。
しかし、多くの歯科医院がその改革の方向性に対応できていない。
既存の点数が上がらなくても今までは何とか経営してこれた。
しかし、物価が高騰し人件費や経営コストが増える中で診療報酬が増えないことが経営を圧迫し始めたのです。
そしてプラス改定でさえも歯科の既存の点数には薄くしか配点されない・・・
標準的電子カルテの普及が完了する頃には保険医療機関は国の完全管理下に置かれ、歯科医師の裁量権は大幅に制約される様になる。
だから目の前の点数の加点減点に一喜一憂している時間などないのです。
院長の令和8年改定に向けた意思決定ひとつで、2026以降の医院の未来は大きく変わる。
さて、先生はどう動きますか?
先生の医院の未来を切り拓く今後5年10年の経営戦略の立案と事業計画の推進でお悩みならば経営相談にお申込みくださいね。
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