前回は、令和8年改定を「点数の増減」ではなく
“国の政策の流れで読むことが生存戦略になる” という話をお伝えしました。
今回はその続きとして、
『医院規模ごとに勝ち筋はまったく違う』
という、とても重要なテーマを扱います。
結論から言うと、
◆大規模は「強者の戦略」で面を取りに行くステージへ
◆小規模は「弱者の戦略」で“隙間市場”を取り切る時代に突入
◆中規模は“拡大か専門化か”の分岐点に立たされている
※規模は地域の相対性の影響が大きい。例えば、過疎地で周りがユニット3台の小規模歯科医院ばかりならば中規模でも相対的優位性が得られます。
ただし、マーケットは縮小していくので更なる規模の拡大は慎重に判断された方が良いと思います。
今後の改定を読んでも、地域の人口動態を見ても、
これからの歯科医院経営は
規模で戦略が変わる時代
に入りました。
「どの規模が正解」という話ではなく、
それぞれに“勝ち方”があるということです。
では、順に解説していきます。
1.大規模歯科医院 ― 強者の戦略(面を取りに行くステージ)
大規模医院(概ねスタッフ50名以上・Dr複数・DH多数)は、
国の医療政策と組織構造が最も相性が良いという特徴があります。
■大規模が進むべき方向は「面の支配」
大規模が取るべきは、まさに ランチェスター戦略の“強者の戦略”。
・広い診療圏でシェアを取り切る
・多職種連携・介護連携に積極参入
・デジタル化で治療の質と効率化を同時に達成
・う蝕・歯周病管理、口腔機能管理を“分業体制”で回す
特に令和8年改定の方向性で明らかなのは、
管理系・連携系の点数は「多職種×チーム医療」が前提になる
ということです。
これは大規模にこそ有利。
■大規模医院が今すぐ着手すべき3つ
① 収益の柱を2→3本化⦅①治療②管理(歯周病、う蝕、口腔機能)③訪問or専門領域⦆
→ 治療中心型から脱却し、医院の分野別収益を安定化。
(注意)勤務歯科医師や歯科衛生士の確保状況によって戦略は変わります。
② 口管強を活かした「管理型歯科」の組織づくり
→ DHが回す管理ルートとDrが回す治療ルートの“二軸戦略”と連携強化。
→自費コンテンツの充実によるアップセル、クロスセル
→コンサルの仕組み構築と強化
③ 医科・介護・多職種との連携チームを院内に作る
→ 院長だけが動く時代ではなく、「連携担当」を明確に。
大規模医院は、
動けば動くほど国の医療政策に合致して伸びる構造 に入っています。
逆に言えば――
「治療中心のまま」では、規模が大きいほど経営は不安定になります。
“強者”は“強者の戦い方”をしないと生き残れません。
2.小規模歯科医院 ― 弱者の戦略(細分化×高密着で勝つ)
次に、小規模医院(スタッフ15名未満)。
ここがもっとも戦略を誤りやすい層です。
結論を言うと、
大規模の真似をした瞬間に失敗します。
■小規模医院が生き残るキーワードは「弱者の戦略×特化」
・全方位で勝とうとしない
・自費治療の柱を一つだけに絞って強化
・治療領域を広げようとしない
・デジタル投資を“大規模と同じ基準で決めない”
・“狭い診療圏”に特化し、密着度を最大化する
そして、小規模は、
“大規模が捨てる領域”で勝つことで収益が安定します。
■小規模医院が取るべき4つの戦略
① 大規模医院が不得意な「密着型・家族単位管理」へ特化
→ 高齢者、子ども、家族単位の定期管理に強くなる。
② “ひとり一人のDH”が生産性の核になる体制づくり
→ 専任DHの価値が極めて高い。採用ではなく“歯科衛生士としての育成”が勝負ポイント。
※歯科衛生士の成長環境と心理的安全性を築けない医院に歯科衛生士は集まりません。大規模歯科医院とは違う採用育成戦略が必要です。
③ 投資は狭く深く。デジタル治療、アライナー矯正等、強者の得意分野に手を出さない
→ 弱者は戦う領域を広げた瞬間に負ける。
④最新機器と事業者が言う治療のトレンドに手を出さない
→医院の強みを強化するワンポイントに絞って投資する
■小規模医院の一番の武器
それは “ドクター自身の人格・技術・信頼性” です。
地域で強い小規模医院は例外なく、
・院長が患者と深い信頼関係を築く
・DHとの“関係性”を重視
・家族単位で長期の管理を行う
これらが実現している医院です。
それこそが大規模には絶対に真似できない“価値”です。
患者との距離が近いことが最大の武器なのです。
3.中規模歯科医院 ― 拡大か?専門化か?岐路に立たされる層
もっとも難しいのが「中規模」(スタッフ15〜30名程度)。
この層は、
拡大して大規模になるのか?
専門化して高付加価値医院になるのか?
という“戦略の二者択一”を迫られる規模です。
■拡大するなら「大規模のロジック」に合わせる必要がある
・スタッフ採用力の確保
・管理部門の整備
・診療オペレーションの標準化
・多職種連携の仕組みづくり
・施設基準の網羅(口管強等施設基準の取得と活用)
つまり、“大規模の土俵で戦う覚悟”が必要。
半端な拡大は 「問題の拡大」 にしかなりません。
■専門化するなら“選択と集中”で収益性を高める
・自費補綴・インプラント・矯正・訪問などを柱に(地域状況を考慮)
・外来専門歯科、訪問連携特化型歯科として強みを磨く
・設備投資は“専門に寄せる”
・DHが回す管理ルートは“質”で勝負
中規模医院の成功例は、
どれも「拡大型」か「専門型」に明確に振り切っています。
■中規模の失敗パターンは1つだけ
“中途半端な総花的医院”になること。
・得意分野がない
・管理が弱い
・多職種連携もしない
・自費治療も伸びない
・スタッフが疲弊する
・結果、「普通の医院」として埋もれる
医院のエッジを立てることが出来ずに患者ニーズのエボークトセットに入ることができないのです。
現在、先生の医院が中規模(相対的に)であれば、今後の戦略を明確にする必要があります。
■まとめ、医院規模で勝ち筋はまったく違う
今日のまとめです。
▼大規模医院(強者の戦略)
・面でシェアを取り切る
・管理・連携・デジタルのフル活用
・収益3本柱をつくる
▼小規模医院(弱者の戦略)
・大規模の真似をしない
・家族密着型×管理で勝負
・投資は狭く深く
・DHの教育が生命線
▼中規模医院(岐路の戦略)
・拡大するか
・専門化するか
・半端な「全方位型」は負ける
令和8年改定、そして2040年に向けた医療改革。
どの規模の医院でも言えることは、「政策を読む×医院規模で正しい戦略を選ぶ」
これだけで“勝ち筋”が見えてくるのです。
施設基準の取得と活用強化、戦略構築のサポートが必要ならご相談くださいね。
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