今回の「変化に強いチームを育てる院長学」シリーズでは、
「治療のプロ」から「経営と人づくりのプロ」へと成長する院長像についてお伝えしてきました。
最終回となる今回は、院長が最後にたどり着く理想の形
“院長が走り続けなくても回る組織” について掘り下げます。
① 院長が頑張り続ける医院は、長くもたない
多くの院長が感じています。
「自分が止まったら医院も止まる」
「全部自分が見ていないと不安だ」
しかしこの構造は、医院が大きくなるといずれ限界を迎えます。
なぜなら、院長が動き続けることで医院は依存構造になるからです。
・休みが取れない(休日も学会やセミナー)
・スタッフが育たない
・選んだチーフが機能しない
・院長が疲弊し、イライラして医院の空気が重くなる
・院長が頑張ってスタッフマネジメントをしても問題が発生する
院長が頑張ることが医院の成長を支えているうちは、まだ“持続する経営”にはなっていません。
② 持続する医院は「仕組み×人の力」で回っている
持続する医院とは、院長が動かさなくてもチームが動く医院です。
そのためには、2つの軸が欠かせません。
(1)仕組みが“チームの羅針盤”になっている
・業務マニュアルがある
・カリキュラムが整備され教育プロセスが見える化されている
・リーダー育成と権限委譲の仕組みが存在し機能している
・KPI(重要管理指標)が共有され、成果を定量的に測定出来ている
これらはすべて、“判断基準の統一”を目的としています。
つまり、「誰がやっても理念に沿った行動ができる」状態です。
(2)人の力が“文化”をつくっている
仕組みと数字だけでは、組織は動きません。
最終的に組織を動かすのは、“理念を体現する人”です。
理念に共感し、自ら成長を望むスタッフが増えることで、医院は自然と安定して回り始めます。
③ 「自走する医院」をつくる3つのステップ
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ステップ |
内容 |
成果 |
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① 見える化 |
院長の頭の中の判断・基準・段取りを言語化する |
誰でも理解できる「医院の共通言語」をつくる |
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② 権限移譲 |
リーダーやチーフに判断を委ねる |
チームが“自分たちで回す”文化を育てる |
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③ 振り返り文化の定着 |
定期的なミーティングでPDCAを回す |
改善と成長が自動的に続く |
このサイクルが機能し始めると、院長が現場を細かく見なくても、医院は安定して進化します。
④ “仕組み”の目的を間違えてはいけない
ここで注意していただきたいのは、仕組み=効率化の道具ではない ということ。
本来の目的は、
「理念をブレずに継続するための土台」です。
仕組みがあることで、スタッフは安心して動けます。
そして、安心の上に創造性が生まれます。
仕組みが“縛るもの”ではなく、“支えるもの”として機能した時、医院は初めて“自走”を始めます。
⑤ 院長が「走らなくていい状態」を目指す
院長が走り続ける医院と、
院長が止まっても回る医院の違いは、“仕組みの成熟度”にあります。
前者は、院長が動かしている医院。
後者は、仕組みと人が動かしている医院。
持続する医院では、院長の役割は「動かすこと」ではなく、「方向(戦略)を示すこと」です。
経営とは「走ること」ではなく、「走れる仕組みを設計すること」 なのです。
⑥先生にお聞きしたいこと
(1)院長ひとりが医院を“動かしている”構造になっていませんか?
(2)チームが理念に基づいて“自走できる仕組み”はありますか?
(3)先生が休んでも医院が回る仕組みを、今から設計できますか?
まとめ
院長が院内の細かな部分まで指示しなくても医院が成長する。
それが“経営者型院長”の到達点です。
仕組みをつくり、理念を中心に据え、チームが自走する環境を整える。
この3つが揃ったとき、医院は「持続的成長」というステージに入ります。
そして、院長は「動かす人」から「導く人」へ。
次回予告(新シリーズ予告)
次のシリーズでは、いよいよ次のテーマへ
『歯科医院リーダー論 ・ チームを導く院長の哲学』
・人を“指示で動かす”ではなく“惹きつける”リーダーシップ
・理念を軸にしたコミュニケーション設計
・チームの“成熟段階”に応じたマネジメント手法
経営の“仕組み”を整えた次は、“リーダーの在り方”そのものを磨く段階に進みます。
お楽しみに!
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