今日は「変化に強いチームを育てる院長学 第四回」
これまでのシリーズでお伝えしてきた通り、これからの歯科医院経営では「経営者型院長」が求められます。
経営者型院長の最大の特徴は、「人を動かす」のではなく、「人を育てる」 ことに力を注ぐ点です。
① 「任せられない院長」が医院の成長を止める
診療の質を守るために、院長が細かく指示を出す。
トラブルを防ぐために、報告をすべて自分で確認する。
その気持ちは痛いほど分かります。
しかし、このように院長がすべてを抱え込む構造こそ、医院の成長を止める最大の要因です。
なぜなら、院長が抱え込むほど、スタッフは「考える」「判断する」「成長する」機会を失うからです。
結果として、
・指示待ちスタッフが増える
・チームが疲弊する
・院長が燃え尽きる
つまり、
「任せられない院長」は、人に“依存される構造”を自ら作っているのです。
② “任せる勇気”が人を育てる
スタッフが育たない原因の多くは、「丁寧に教える→出来る→任せる」が出来ていないことにあります。
もちろん、任せるにはリスクがあります。
「失敗したらどうしよう」
「患者対応に影響したら困る」
そう感じるのは当然です。
しかし、スタッフが失敗を経験できない環境では、成長の機会が永遠に生まれません。
人を育てる院長は、
「任せる=放任」ではなく、「任せる=信じて支える」
という姿勢で人と関わります。
③ 任せる経営の3ステップ
では、どうすれば安心して“任せる医院”を作れるのでしょうか?
その鍵は 「仕組み化」と「伴走」 にあります。
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ステップ |
内容 |
目的 |
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① 任せる範囲を明確にする |
どの業務を任せ、どこで院長が関与するかを明文化する |
任せすぎ・関与しすぎを防ぐ |
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② 任せる目的を共有する |
「何のために任せるのか」をスタッフに伝える |
責任ではなく“意味”を感じてもらう |
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③ フィードバックを仕組みにする |
結果を評価ではなく“成長の材料”として扱う |
失敗が学びに変わる文化を育てる |
任せる経営の本質は「放すこと」ではなく、“育つように設計すること” です。
④ 成長を生むチームには「心理的安全性」がある
人は、失敗しても責められない環境でこそ挑戦できます。
これはエイミー・C・エドモンドソンが提唱した「心理的安全性」の概念です。
心理的安全性が高いチームでは、
・スタッフが自由に意見を出せる
・院長に質問できる
・問題を共有できる
という文化が根づきます。
実際の歯科医院では、
・新人がまだ教わっていないことをやらされ叱られる
・新人が院長の根治のアシストにつき「交代して」と言われる
・先輩によってやり方と教え方が違い新人が混乱する
・育成カリキュラムとマニュアルが整備されていない
・中堅スタッフの育成制度がない
・育成担当のスタッフが育成術を学ぶ機会が用意されていない
・チーフが退職し突然チーフに指名され放置
・院長の理想が言語化され共有されていない
・マニュアルに書かれている事をベテランスタッフが守っていない
など、スタッフが失敗する要素が溢れています。
「失敗しやすい環境」を院長が用意しているのに、スタッフに完璧を求めることに無理があるのです。
⑤ “人を育てる院長”が持つ3つの習慣
(1)教えられるより、考えさせる質問をする
「どうしたら上手くいくと思う?」という問いを増やす。
(2)成果ではなく“変化”を褒める
「この前よりも説明が丁寧になったね」と、成長のプロセスを承認する。
(3)任せたら、信じて見守る
途中で口を出さず、必要な時にだけ伴走する。
任せるとは、「自分がやるより遅くても、完璧でなくてもやらせてみる」こと。
そこに成長の機会が生まれます。
⑥ 先生の医院はいかがでしょうか
・先生は「任せる勇気」を持っていますか?
・スタッフの“成長の余白”を残していますか?
・ミスを許せる文化を、自ら壊していませんか?
・スタッフ育成の仕組みを構築できていますか?
まとめ
成長しないチームを作るのは、“任せない院長”。
成長するチームを育てるのは、“信じる院長”。
人を育てるとは、教育することではなく、「信じて任せる構造を作ること」「成長機会を与えること」 です。
院長が“任せる勇気”を持てた時、チームは動き出し、医院は自然に成長します。
次回予告:
第5回「持続する医院をつくる ― 院長が“走り続けなくても回る組織”とは?」
次回は、院長が常に走り続ける医院と、安定的に成長する医院の違いを解説します。
“仕組み×人の力”で持続する経営のつくり方をお伝えします。
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