今日は「数字の裏側にある“経営の真実”」シリーズ第4回です。。
「今期の売上は過去最高でした!」
「患者数も増えています!」
そう院長が語る一方で、スタッフの表情が晴れない医院を、私は数多く見てきました。
数字上は成功しているのに、チームは疲弊し、離職者が増え、院内の空気がどこか冷えている。
院長と幹部スタッフは元気なのですが、他のスタッフは永遠と続く数字目標に辟易としているのです。
この現象には、明確な理由があります。
数字は上がっても、“人間軸”が欠けているからです。
① 「成果主義」は医院を強くするどころか、脆くする
「数字を上げよう」「効率を高めよう」「生産性を上げよう」
こうした言葉は経営に不可欠なものですが、それだけでは人は幸せになれません。
なぜなら、数字を追う過程で「理念」と「人間の尊厳」が後回しにされてしまうからです。
スタッフが数値目標の達成ばかり意識すると、
・“何のためにやっているのか”を見失う
・“人と比べること”が行動の基準になる
・“目標数字に届かなければ価値がない”と感じてしまう
・”患者より効率を優先している”と感じ理念の言葉を空しく感じてしまう
その結果、心のエネルギーが削がれ、医院全体が“成果疲労”に陥るのです。
成果主義の先に残るのは「数字」ではなく「疲弊」です。
② 「理念に動機づけられた人」は、強くて優しい
理念とは、「医院が何のために存在するか」という原点です。
スタッフがその理念に心から共感し、“自分の仕事が理念を体現している”と感じられたとき、その人は圧倒的に強く、そして優しくなります。
・指示されなくても動く
・困っている仲間を助ける
・患者のためにもう一歩踏み込む
これらは「仕組み」では生まれません。
理念と自分がつながった瞬間に生まれる“行動の自発性”なのです。
そして、この状態のスタッフは、仕事を通じて“自尊感情”を高めます。
自尊感情が高いスタッフは、幸福感も高い。幸福感が高いスタッフは、患者満足も高める。
理念に動機づけられた医院は、結果として“経営的にも強くなる”のです。
③ 「数字で動かす」経営の限界
数字には力があります。
しかし、数字には人の心を動かす力はないのです。
数字で人を動かそうとすればするほど、
・“やらされ感”が生まれる
・“コントロール”が強くなる
・“創造性”が失われる
歯科医院でこれを繰り返すと、院長と幹部が「燃えている」のに、チームが「冷めている」という状態になります。
つまり、数字は経営の結果であって、動機ではない。
経営が“人間軸”を失った瞬間、数字の意味も失われるのです。
④ 医療の品質も、経営の成功も、「人間軸」からしか生まれない
歯科医療は、技術・知識・制度だけでは成り立ちません。
人と人が関わり、信頼が生まれ、その信頼が治療成果を支えます。
医療の品質は「人間の品質」に比例する。
その“人間の品質”を高めるためには、
「人を数字で測る」のではなく、「人の成長を信じて支える」文化をつくることです。
理念を実感し、成長を実感し、貢献を実感できる。
その3つの実感が揃ったとき、人は“仕事に誇り”を持てるようになります。
⑤ “人間軸経営”を始める3つのステップ
(1)「理念を数字に翻訳」する
「理念は理念、数字は数字」ではなく、
理念を達成するために数字を使う。
たとえば、
・「患者の健康寿命を支える医院に」→定期来院率の向上
・「地域に安心を提供する医院に」→紹介率の増加
数字に“理念のストーリー”を埋め込むことが第一歩です。
(2)「数値目標」ではなく「成長目標」を共有する
数字を追う代わりに、
「何ができるようになりたいか?」
「どうすれば理念を形にできるか?」
をチームで話し合う。
これにより、スタッフは“目標の主人公”になれます。
(3)「理念行動」を可視化して評価する
数字よりも、“理念に基づいた行動”を称賛する仕組みをつくる。
・患者への寄り添い
・仲間へのサポート
・医院の改善提案
これらを見つけ、言語化し、院内で共有する。
「理念が日常で生きている」ことをチームで確認するたび、医院の文化は一段深くなります。
⑥先生の医院ではどうでしょうか?
1.先生の医院では「理念」と「数字」はつながっていますか?
2.数字を追うことで、スタッフが疲弊していませんか?
3.スタッフが「自分の仕事に誇り」を持てる環境をつくっていますか?
4.医療の品質を“人の成長”から支える仕組みはありますか?
5.理念を“感動”として共有する場を、定期的に設けていますか?
まとめ
数字は医院を動かすが、人間軸は医院を育てる。
理念に動機づけられたスタッフは、数字を追わなくても結果を出す。
一方、数字で追い詰められたスタッフは、数字を追っても成果を出せない。
医療の品質も、経営の成功も、最後は“人の心”がつくる。
人を大切にする医院は、数字にも、信頼にも、幸せにも強い。
経営の中心に「人間軸」を取り戻すことが、これからの歯科医院の最強の戦略になるのです。
次回はシリーズ最終回:
「理念経営を“文化”にする ― 三方よしで医院を進化させる」
をお届けします。
理念が“スローガン”から“日常の判断軸”になるまでのプロセスを解説します。
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