歯科医院経営について語るとき、
多くの院長は「売上」「残るお金」「診療報酬改定」や「人材確保」等に意識が向きます。
しかし私は、それ以前に、もっと根本的で、しかも気づきにくい変化が進んでいると感じています。
それが、開業されている地域そのものの変化です。
地域は一気には壊れない。しかし・・・
地域環境は、ある日突然悪化するわけではありません。
・人口動態の微妙な変化
・開発計画の停滞や縮小
・鉄道・バスの減便
・商業施設の撤退や空き店舗化
・学校や保育所の統廃合
・働ける企業数の減少
・通勤距離の長期化
・二次・三次救急医療体制の弱体化
・徒歩圏で完結していた生活動線の分断
こうした変化は、一つひとつは小さく、体感しにくい。
しかし、一定のラインを超えると、生活者は静かに、そして一斉に動き始めます。
人口は“魅力が保たれている地域”にしか流入しない
生活者が町を選ぶ基準は、「仕事」「住みやすさ」「便利さ」など様々です。
・子育てがしやすいか
・買い物インフラは充実しているか
・行政サービスは充実しているか
・交通インフラは整備されているか
・通勤圏に職場があるか、働き続けられるか
・医療提供体制に安心感があるか
・将来も収入を得てここで暮らせそうか
これらの総合点が下がると、人口は流入しなくなり、やがて流出が始まります。
人口が減れば自治体の市税も減り、インフラ整備や行政サービスの質も落ちていく。
すると、
地域の魅力低下 → 人口減少 → 財政悪化 → さらに魅力低下という循環が生まれます。
これは、後戻りが難しい「アリ地獄型の変化」です。
医療機関は地域の影響を必ず受ける
歯科医院も例外ではありません。
地域の生活者の環境が変われば、歯科医療の需要構造も変わります。
・来院頻度
・治療の優先順位
・予防や管理への意識
・家族単位での通院継続
・高齢期の通院可否
1~3年単位では、大きな変化を感じないかもしれません。
しかし、5年、10年というスパンで見れば、需要の総量も質も、確実に変わっていく。
どこの医院も少しづつ平日昼間の予約が埋まりにくく土曜日の予約がいっぱいで取れなくなっているでしょう。
これも国民の貧困化の進行と高齢者と女性の就業率を上げていくという国の政策の影響なのです。
早く気づく院長と、気づかない院長、そして気づいても・・・
私が見てきた中で、経営が安定している院長には共通点があります。
それは、
・地域の変化に敏感
・「今」ではなく「少し先」を見ている
・需要が変わる前に、医院の役割を変え始めている
一方で、
・目の前の忙しさに追われ
・地域は変わらないと思い込み
・患者数が減ってから対策を考える
こうした医院ほど、対応が後手に回り、ジリ貧になっていく。
そして、ジリ貧になる院長は何故か「うちの地域はまだ大丈夫です」と仰るのです。
以前、クライアントの院長のもとに一通の手紙が届きました。
「今までお世話になりましたが高齢になり通うのがつらくなったので近くの歯科医院で診てもらう」という内容。
院長は「3駅向こうから通ってくれていたんです」「残念ですが仕方がありません」と仰っていましたが、私はピンときて医院の患者の大まかな年齢構成を調べたのです。
すると患者の高齢者割合が高かった。
そこで私は院長に「40~55歳の来院数を増やす対策を実施しましょう」と提案し、すぐにホームページの内容とリスティング広告を見直したのです。
すると40歳代の患者が増えていった。
ここで答えは書きません
代わりに、
ご自身の医院に照らして考えていただくためのヒントだけ置いておきます。
・開業地域の人口構成は、5年前とどう変わりましたか?
・今後10年で「通院できる人」は増えますか?減りますか?
・地域の生活動線は、今後も維持されそうですか?
・その地域で「歯科医院に求められる役割」は変わっていませんか?
・先生の医院は、その変化に自然に対応できる形になっていますか?
最後に
地域の変化は、
気づいたときには“かなり進んでいる”ことが多い。
そして、その変化は声を上げず、静かに経営を蝕みます。
だからこそ院長には、
数字ではなく、地域そのものを見る視点を持ち続けていただきたいのです。
先生は、このジワジワと進む蟻地獄のような変化をどう捉え、どう向き合おうと考えますか?
その問いに向き合うこと自体が、すでに経営の第一歩なのだと、私は思います。
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