歯科医院の経営改善や組織づくり、ホームページや看板の活用法指導やスタッフ育成の仕組みづくりをサポート。か強診を活用した長期管理型の歯科医院づくりなど。開業医団体で30年の勤務経験があり安心してご依頼いただけます。

 
◆歯科医院経営ブログ

歯科医院経営コーチの森脇が歯科医院経営に関する情報や感じたことを気ままに発信します。会員限定ブログと違い誰でも読むことが出来ます。

患者の健康行動を支援する“ナッジ”の力 ~キャンセル率を下げる「やさしい仕組みづくり」~  [2025年10月14日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
しかし、答えは書きません。院長によって経営状況は違いますのでスタッフと一緒に考えて頂きたいからです。
もちろん、経営のサポートのご依頼は喜んでお引き受け致します。
では、本日のブログもご自分の医院の状況に照らして考えてみてくださいね。
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今日は、「キャンセル率を下げる仕組み」についてお話しします。
といっても、患者をコントロールする話ではありません。

本来の目的は、

患者が自分の健康のために行動しやすくなる環境を整える
という、行動支援のデザインです。

その考え方のひとつが、行動経済学で言う「ナッジ(nudge)」です。

 

 

ナッジとは背中をそっと押すこと

ナッジとは、アメリカのリチャード・セイラー博士が提唱した行動経済学の概念で、

強制せずに、望ましい行動を自然に選びたくなるように促す仕組みのことです。

たとえば、

・「手洗いを忘れないように洗面所の鏡にメッセージを貼る」

・「健康診断の予約をデフォルトで参加にしておく」

などもナッジの一種です。

歯科医院におけるナッジは、患者が健康を守る行動(治療・予防・再来院)をより自然に・ストレスなく続けられるよう支援する仕組みと考えるとよいでしょう。

 

 

ナッジをスラッジにしないために

先生もご存じの通り、ナッジは誤用されると「スラッジ」になります。

スラッジとは、相手に不利益を与える形での誘導のことです。

「今キャンセルすると他の患者さんに迷惑です」

「当院ではキャンセル料をいただきます」

確かに一時的にキャンセルは減りますが、患者は“一時的な罪悪感で動いており、信頼関係を損ねるリスクがあります。

 

ナッジの本質は、患者にとってより良い選択ができる様に「行動を支援すること」。

相手の自由を尊重しながら、望ましい行動を取りやすくする環境設計こそが目的です。

 

 

歯科医院で実践できるナッジの具体例

一貫性の原理を活用する(行動の継続支援)

人は「一度自分で決めたことを守りたい」と感じる心理があります。

予約時に、

「次のご予約は○○さんの治療計画の大事なステップです」

「ここまで頑張ってこられたので、あと一歩一緒に進めましょう」

と伝えるだけで、自分の意思として行動を続けたいという気持ちが高まります。

これは「約束を守ることが自分の信頼につながる」というポジティブな支援であり、患者の自律的行動を尊重したナッジです。

 

上昇選好の心理を使う(進捗の見える化)

人は上がっていく数字を見るとモチベーションが上がります。

歯科医院では、

・「歯ぐきの状態スコア」

・「ブラッシング習慣の達成カレンダー」

・「定期検診の継続回数」

などを見える化することで、患者が自分の健康を育てている感覚を持てます。

「次の検診でも○○をキープできるといいですね」と声をかけることが、患者に自分の努力が成果につながっていると実感させます。

これも立派なナッジです。

 

リマインドメッセージを「温かく」する

LINESMSでの自動配信もナッジ設計のひとつです。

しかし、文面が「事務的」になりすぎると、患者は管理されていると感じてしまいます。

例:
×「時の予約です。変更は2日前までに。」

〇「○○さんの歯ぐきの治療、次回で一区切りですね。体調に気をつけてお越しください。」

メッセージのトーンを変えるだけで、機械的な通知が人との約束に変わります。

ナッジの力は、言葉に温度をもたせることでも発揮されるのです。

 

 

スタッフ全員で「患者の行動支援チーム」になる

ナッジを医院全体に浸透させるためには、「キャンセルを防ぐための仕組み」ではなく、

「患者の健康行動を支援するチーム」として仕組みを作ることが大切です。

たとえば、ミーティングで次のような視点を共有してみてください。

・患者が“来院を続けやすい環境設計ができているか?

・来院動機を安心・希望・成果で支えられているか?

・リマインドや会話が人間味を感じるものになっているか?

 

チェックリスト:ナッジが支援になっているか?

チェック項目

Yes / No

患者の自由を奪う・罪悪感を与える表現を使っていないか

 

患者が自分の意思で行動を続けられる言葉を使っているか

 

健康行動の進捗成果を見える化しているか

 

自動リマインドも人の温度を感じる内容になっているか

 

チーム全体で「行動支援」という共通認識を持っているか

 

 

 

まとめ:ナッジとは「人を動かす」ではなく「人を支える」

歯科経営におけるナッジの目的は、

患者が健康を守る行動を、より優しく継続できるように支えること。

それは、

・押しつけでも、

・心理操作でもなく、

・患者の自由と尊厳を尊重した行動支援。

ナッジの本質は「人を理解する姿勢」です。

患者の行動を変えようとするより、

「なぜ続けにくいのか」「どうすれば支えられるか」を考える医院こそ、信頼され、選ばれ続けます。

 

 

森脇康博のひとこと

ナッジとはヘルスプロモーションの一部であり、医院から患者への思いやりの仕組み化です。

それを形にできる医院は、経営が安定し、チームの心理的満足度も高い。

 

次回は、スタッフが自分から動くチームづくりの心理学をテーマに、「指示されなくても動ける組織はどう育つのか?」を掘り下げていきます。

 

 

★こちらもご覧ください。
 
 
 
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