「診療が始まってから慌てる医院」と「始まる前に整っている医院」
歯科医院の診療がバタつく理由の多くは、“診療前の準備不足”です。
・ユニットが空いて患者を案内してもドクターが来ない
・アシストスタッフが治療に必要な器具や材料を準備できずに取りに走る
・アシストがドクターの処置の半歩手前で準備を始められず、適切なタイミングでドクターに器具を手渡せない
・朝のチームカンファで効率的な動き方を共有できていない
・急患を受入れられる時間帯を共有できていない
この状態では「診療はスムーズに回らない」のです。
一方、スムーズな医院では、診療が始まる前にすべての情報が整理され、誰が、どの患者を、どんな治療で、どんな材料・器具を使うのか が明確になっています。
急患を受入れられる時間帯も受付に共有し、応急処置をした場合にスタッフがどう動くべきかもメンバーが理解できているのです。
患者がついでの要望を言った場合も、根管治療でイレギュラーがあって治療が遅れることも織り込み済み。
つまり「診療前の準備」がイレギュラーの発生を想定できているのです。
前日に翌日の予約を見て遅れると判断した場合には、予約を他のドクターに移動させたり応援を入れるということもやっています。
1.予約表とカルテの“見える化”が全体の動きを変える
スムーズな医院の共通点は、スタッフ全員が診療の流れを予測できる ということです。
特に以下のポイントが整っていると、バタつきは劇的に減ります。
・予約表のフォーマットが見やすい(色分け・略号・記号のルール統一)
・ドクター・歯科衛生士・アシストの役割分担が事前に共有されている
・朝のミニカンファで予約表を基にメンバーの動き方を確認している
・治療内容に応じた必要器具が事前に準備されている
予約表は「スケジュール表」ではなく、「診療の設計図」です。
見やすく、使いやすく整えるだけで、チーム全体の視界が広がります。
2.カルテ情報から“治療の流れ”をイメージできるか?
予約をスムーズに熟すコツは「カルテ情報」にあります。
カルテに書かれている情報を“読んで理解できるスタッフ”がいるかどうかが、医院の診療精度を分けます。
たとえば、
・カルテから治療の複数のアプローチの可能性を読み取り器具を準備する
・質問が多い患者には事前にドクターへの質問がないのかを聞いておく
・検査やコンサルが必要かどうかを担当ドクターに確認して準備(口腔機能検査など)
・患者から出されている質問をドクターに伝えて回答してもらう
・担当ではないドクターが急遽患者を診る時には、ドクターへの説明と患者への説明に気をつける
ドクターがカルテ情報を十分に把握していることが理想ではありますが、そうなっていない場合もある。
だから、必要な検査や患者への説明、患者の要望などをスタッフが事前に把握してドクターに伝えて漏れないようにする必要があるのです。
これらの対応ができないと、毎回“その場対応”になります。
スタッフがカルテを読み取り、ドクターの治療アプローチを理解しておくことが“診療の滑らかさ”を生みます。
3.準備ミーティングを「習慣化」する
「今日の患者の治療内容と注意点を朝の5分で確認し、診療終了後に振り返る」
たったそれだけで診療は驚くほど安定します。
例えば、
・予約表とカルテを照合し、治療内容と使用器具を確認
・要配慮患者の情報を共有
・チームが設定した改善目標、個々の役割と行動を確認
・診療の終了後に3分間で振り返り、翌日の改善目標を決める
この“朝5分の準備習慣”と”終了後の3分の振り返り”を持つ医院ほど、診療中の混乱が少なくなります。
ミーティングというより“改善のルーティン”です。
4.事前準備のチェックリスト
今日から取り組めるように、シンプルなチェック項目を用意しました。
◆予約表・カルテ準備チェックリスト
□予約表の記載ルール(略号・色分け・記号など)は統一されているか?
□ドクター別に必要な器具・材料リストを作成しているか?
□翌日の予約内容を前日に確認しているか?
□初診・再初診・トラブル対応の患者は共有できているか?
□治療ステップの進行(形成→印象→セットなど)が明確に把握できているか?
□必要材料・技工物などの確認が済んでいるか?
□朝ミーティングで診療内容の確認と振り返りができているか?
この7項目を毎日確認するだけで、診療中の“想定外”がほぼ消えます。
5.「段取り8割」で医院は変わる
診療がスムーズな医院は、治療技術が高いだけでなく、段取りの精度が高い のです。
段取り8割、実行2割。
この意識を医院全体で共有できれば、「慌ただしい毎日」は「安定した日常」に変わります。
まとめ
・バタつく医院は“診療の直前に準備する”
・スムーズな医院は“診療が始まる前に整っている”
・予約表とカルテを「情報共有ツール」として再設計する
・朝5分の確認と診療後の3分の振り返りで医院全体のリズムを整える
次回は、「オペレーションリーダーが診療全体をコントロールする仕組み」について詳しく解説します。

















