有能なスタッフがいても「指揮者」がいなければ音は合わない
どんなに優秀な治療スタッフが揃っていても、
有能な“指揮者”がいなければ、診療はバタつき、医院全体のリズムは乱れます。
これはまるでオーケストラのようなもの。
一人ひとりが高いスキルを持っていても、全体のテンポやバランスを取る指揮者がいなければ、「質の高い音楽」は生まれません。
歯科医院の診療も同じです。
院長が治療に集中している間、診療全体の流れをコントロールする存在=オペレーションリーダー がいるかどうかで、医院のパフォーマンスは大きく変わります。
スムーズな医院に共通する3つの特徴
診療がスムーズな医院では、オペレーションリーダーが次の3つを意識して行動しています。
1.全体を俯瞰して状況を把握している
どのユニットでどの患者が、どの治療段階にあるのか。
「誰が今、手が空いていて」「どこで遅れが出そうか」。
全体の流れを常に把握しています。
2.先読みと調整ができる
「この後ドクターが移動する」「この患者の麻酔時間で次の準備ができる」など、
小さな先読みを重ね、スタッフの動きを無理なく調整します。
3.指示ではなく“導き”で動かす
ただ指示を出すのではなく、スタッフが“自分から動きたくなる”ような関わり方、判断力を身につけさせる指示をします。
常に状況が変化し答えが一つとは限らない治療現場ではマニュアル学習だけでは場を回すスキルが身につかないので、経験と振り返りが大切。
オペレーションリーダーは、チームの一体感を作り人を育てる存在なのです。
“一番動く人”が“指揮者”になると混乱する
よくある誤解があります。
「診療で一番動いているスタッフ=優秀なオペレーションリーダー候補」だと思われがちですが実際は逆です。
リーダーが自分の手を動かしてばかりでは、全体を俯瞰できず、他のメンバーを動かす余裕がなくなります。
そして指示だけで動かそうとするので人が育たないのです。
つまり、「現場での動き」と「全体の流れを読み場をコントロールする力」は別物なのです。
リーダーには“動く力”よりも“見渡す力”が必要。
自分が動くのではなく、チームが最適に動くよう導く人材 が本当のオペレーションリーダーです。
オペレーションリーダーを育てるための3ステップ
有能なリーダーは偶然には生まれません。
意図的に「見る力」「整える力」「伝える力」を育てる必要があります。
① 見る力を育てる(状況把握)
・ドクターごとの処置時間を把握
・予約表のどのドクターのどの時間帯が遅れそうなのかを把握
・「今日はどこが詰まりやすいか」を予測する
・治療が遅れた時の対応法を考えチームと事前に話し合う
・すべてのユニットの動きを把握する練習をする
・スタッフの表情・動きから負荷を読み取る
② 整える力を育てる(流れの調整)
・予約の入れ方を見直す
・予約表を整理して日ごとに人員配置を見直す
・サブリーダーに次の動きを“声かけ”で先回り
・ドクターが時間的な意識を持てるように仕組化
・クレームやインシデント等、緊急時の対応法を決めトレーニング
・予想外の事態が起きた時に最小限の修正で流れを戻せる判断力
③ 伝える力を育てる(チームの巻き込み)
・「○○さん、次の準備お願いできますか?」など丁寧なトーンで促す
・感謝の言葉を忘れずに伝えることで、チーム全体の空気を保つ
・駄目な行動への駄目だしより、正しい行動をしたスタッフに承認の声掛けを徹底
・振り返りで「今日うまくいった点・改善点」をチームごとに発表
この3ステップを意識することで、“現場の司令塔”が育ちます。
ただし、オペレーションリーダーの役割は俯瞰力や構造化能力が弱い人には合わないと思います。
今日からできる!
オペレーションリーダー育成チェックリスト
1.現在、診療全体を俯瞰して見ているスタッフがいるか?
2.院長以外に「診療全体をコントロールする役割」が明確になっているか?
3.オペレーションリーダーの育成計画(教育・権限・評価)はあるか?
4.チーム全体で「診療を止めないための連携ルール」は共有されているか?
5.リーダーが動かなくても診療が進むオペレーション設計になっているか?
まとめ
・スムーズな診療は「個人の動きの速さ」ではなく「全体の整流性」で決まる。
・“一番動く人”ではなく、“全体を見渡せる人”をリーダーに。
・オペレーションリーダーの存在が医院の成長スピードを決める。
・オペレーションリーダーは人を育てる役割も持つ。
・次世代リーダーを育てる仕組みを持つ医院は、常に進化を続ける。
●次回予告
次回はシリーズ最終回。
「短期・中期・長期のビジョンをつなげる院長の役割」 をテーマに、
制度改革・DX化・地域変化の中でも“ブレない医院経営”を実現する方法を解説します。
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