前回は「アクションプランを実行できる医院とできない医院の違い」についてお伝えしました。
今回はさらに一歩踏み込み、成果を出す院長が共通して時間を投資している“第二象限”の考え方を整理します。
第二象限とは?
時間管理のマトリクス(スティーブン・R・コヴィー氏)では、仕事を4つに分けて考えます。
1.第一象限:緊急かつ重要(トラブル対応・交通事故患者対応など)
2.第二象限:緊急ではないが重要(教育・予防策・計画づくりなど)
3.第三象限:緊急だが重要でない(突然の電話・雑務など)
4.第四象限:緊急でも重要でもない(惰性的な作業や時間つぶし)
成果を出している院長ほど、第二象限に意識的に時間を使っています。
短期利益ばかり追いかける組織の限界
「今月の売上をどう伸ばすか」「明日のアポイントをどう埋めるか」
もちろん必要ですが、そればかりだと医院は短期的な延命しかできません。
・人材が育たない
・組織の仕組みが整わない
・制度改革への対応が遅れる
結果的に、数年後に地域競争や制度の変化に取り残される医院が少なくありません。
例えばプロスポーツ選手が基礎的トレーニングや可動域の拡大など、より高い成果を出す為に必要なトレーニングを怠っているのと同じです。
第二象限の具体例(歯科医院編)
では、歯科医院における“第二象限”の投資とはどんなものか?
1.教育への投資
・新人スタッフの研修プログラム作り
・歯科衛生士の担当制を機能させるロールプレイ
・院内ミーティングでの振り返り・ケースシェア
・理念学習会、在り方教育
・スキル評価制度、研修参加ポイント
・院内改善プロジェクト
・症例検討会
・定期ミーティング
2. DXへの取り組み
・電子カルテや予約システムの診療への活用
・データ分析による定期来院率・キャンセル率の可視化と改善
・リアル+チャットボットやLINEを使った患者フォロー
3. 制度改革への対応
・令和8年の診療報酬改定に向けた準備
・在宅歯科医療への取り組み検討
・アウトカム評価への移行を見据えた予防・管理体制強化
・生活習慣病連携管理の推進
これらは“緊急ではないが重要な仕事”です。
2030年、2040年に向けた医療制度改革の方向性はほぼ決まっています。
大きな歯科医院の院長は診療報酬改定の方向性を見据え、早い段階からその変化に対応する準備を始めておられる。一方、小規模な医院の院長ほど変化への対応が遅れているのです。
先日、セミナーでお話したのですが、「口管強基準」はかかりつけ医としてのパスポートであり取得する必要がある。
未来に向けて取り組むことも緊急ではないが重要なことなのです。
忙しい日常の中で後回しにされがちですが、ここに時間を投資できるかで数年後の成果が変わります。
成果を出す院長の実践例
ある医院では、毎週1時間を必ず「教育と振り返り」に充てています。
「今日の売上」と並行して「来年の医院力」を育てる時間を守ることで、
・定期来院率の改善
・スタッフの定着率向上
・治療説明の品質を強化したことで自費売上がアップ
を実現しました。
今日からできるチェックリスト
□今月、第二象限のために何時間を確保しているか?
□予約を入れる時間の為に第二象限の時間が犠牲になっていないか?
□院長以外にも「緊急ではないが重要なこと」に取り組む権限があるか?
□3年後の医院の姿を見据えた投資ができているか?
まとめ
成果を出す院長の共通点は、 “第二象限に時間を投資する習慣”にあります。
短期的な売上に追われながらも、教育・DX・制度対応など、未来への投資を怠らない。
この積み重ねこそが「数年後も選ばれる医院」につながります。
第二象限は先生が患者に「セルフケアが大切」と伝えている事と同じです。
さて、先生の医院では「第二象限の時間」をどれくらい確保できていますか?
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