歯科医院の院長とお話ししていると、ここ数年、必ずと言っていいほど出てくる悩みがあります。
「求人を出しても人が来ない」
「やっと採用しても、数年で辞めてしまう」
「歯科衛生士が定着しない」
多くの院長は、この状況を「良い人が応募してこない」「需要に対して歯科衛生士数がが足りていない」という“外部環境の問題”として捉えています。
しかし本当にそれだけでしょうか?
人材不足は「市場の問題」なのか?
確かに、歯科業界全体を見れば人材供給は厳しくなっています。
・賃金水準は他業界より高いとは言えない
・夜診、土曜診療など拘束時間が長い
・結婚・出産・育児と仕事の両立が難しい
・経営の安定度が見えにくい医院も多い
「人を助ける」「社会的意義の高い仕事」であるにも関わらず、労働環境という観点では、歯科業界は他業界と比べて不利な面を多く抱えています。
その結果、
“やりがいはあるが、長く働き続けるイメージが持てない業界”
として見られている側面は否定できません。
ただし、同じ環境下でも人が集まり、定着している医院が存在するのも事実です。
採用できない医院と、自然に人が集まる医院の違い
人が集まる医院をよく観察すると、給与や勤務時間だけで勝負しているわけではありません。
院長が設計しているのは、
・この医院で「どんな成長ができるのか」
・どんな役割を担い、何を期待されるのか
・数年後、どんな働き方が可能になるのか
といった仕事の構造そのものです。
一方で、人が集まらない医院では、
・仕事内容が曖昧
・成長の道筋が見えない
・頑張りがどう評価されるのか分からない
という状態になっていることが少なくありません。
例えば、歯科衛生士なのに院長のアシストばかりしていて、他院に勤務する学校の同期の成長に焦りを感じる若い歯科衛生士もいるのです。
「医院が大きいから、待遇が良いから採用できる」
それは院長に一番多い勘違いでしょう。
離職理由を「人間関係」で終わらせてはいけない
退職理由としてよく挙がる「人間関係が合わなかった」という言葉。
しかし、深く掘り下げていくと、その多くは
・役割が不明確
・負担が偏っている
・期待していた仕事内容と違う
・成長実感が得られない
といった仕事設計の問題に行き着きます。
人は、「この仕事を続けた先に何があるのか」が見えなくなると、環境や人間関係のせいにして職場を離れます。
つまり、人間関係の問題に見えて、実は構造(環境)の問題というケースが非常に多いのです。
人が辞めない医院に共通する“仕事設計”の視点
人が定着している医院では、
・業務の目的が明確
・自分の仕事が医院全体にどう貢献しているか分かる
・成長段階に応じた役割が用意されている
・ライフイベントを見据えた働き方の選択肢がある
といった設計が、意識的に、あるいは無意識に行われています。
これは「優しさ」や「気合い」の問題ではなく、経営としての設計力の問題です。
問われているのは「採用力」ではなく「設計力」
これからの歯科医院経営において、人材問題は避けて通れません。
ただし、
「もっと条件を良くしなければ」
「採用広告を増やさなければ」
という発想だけでは、限界があります。
本当に問われているのは、自院は、人が力を発揮し続けられる構造(環境)になっているか?という一点です。
人を採用できている医院は実態として「人が働き続けたいと思う構造(環境)」をコツコツ作っている。
人材は集まる環境を作った所に流れていくのです。
ぜひ一度、
“人が辞めた理由”ではなく
“人が残って頑張りたいと思わなかった構造(環境)”
に目を向けてみてください。
そこに、これからの医院経営を左右する重要なヒントが隠れているはずです。

















