最近、「金利上昇」という言葉を耳にする機会が増えました。
多くの院長はこう感じているかもしれません。
「変動金利の借入があるから心配」
「これから設備投資は控えた方がいいのか?」
「金利が上がり続ける前に固定で借りた方がいいのか?」
もちろん、これらは重要な論点です。
しかし私は、金利上昇局面で本当に注意すべきポイントは、そこではないと感じています。
金利上昇は医院の“経営体力の差”を可視化する
金利が上がると、すべての歯科医院に同じ影響が出るわけではありません。
・ある医院は「ほとんど影響がない」
・ある医院は「じわじわ苦しくなる」
・ある医院は「一気に身動きが取れなくなる」
この差を生むのは、借入の有無そのものではありません。
違いを生むのは、
「その医院が、借入によって投下した資金からどれだけ“自力でキャッシュを生み出せているか”」です。
例えば、借入金で歯科衛生士専用ユニットを数台増設しても、予約枠を埋めて投資に見合う生産性を上げられればまったく問題がないのです。
金利が上がると“逃げ場”がなくなる
金利が低い時代は、
・借り換え
・追加融資
・先送り
・「何とかなるだろう」
こうした選択肢が成立していました。
しかし金利が上がる局面では、
・返済額は確実に増える
・金融機関の目は厳しくなる
・「次の一手」に時間的猶予がなくなる
つまり、経営の曖昧さが許されなくなるのです。
問題は「お金を借りていること」ではない
ここで強調したいのは、借入があること自体が問題なのではないという点です。
本当の問題は、
・借入⇒投資⇒回収の関係が財務的に整理されていない
・「なぜその支出をしたのか」「いつに資金を回収できるのか」を説明できない
・そもそも、収益増に結びつかない設備投資が多い
・収益モデルの”構造的”な問題
・院長の労働量でしか利益が出ていない構造
こうした状態のまま、金利だけが上がっていくことです。
つまり、借入金が働いて十分な収益を生んでいるのなら問題がないのです。
金利上昇は“経営判断の質”を問う
金利が上がると、設備投資・採用・分院展開・DX投資など、すべての意思決定により高い説明責任が求められます。
・なぜ今やるのか
・投資は何を生み出すのか
・資金はいつ回収できるのか
・やらなかった場合、何を失うのか
これらを言語化できない投資は、金利上昇局面では一気に重荷になります。
“成長している医院”ほど、守りも充実している
これまで多くの医院を見てきて感じるのは、経営が安定している医院ほど、金利上昇を「恐れていない」という事実です。
なぜなら、
・収益の柱が複数ある
・管理・継続・LTVでキャッシュが回る
・自己資金のダムを築いており外部資金への依存度が低い
・スタッフが利益を生む構造になっている
・経営投資がキャッシュ増に繋がる根拠がある
・院長が現場を離れても数字が落ちにくい
こうした医院は、金利が上がっても「耐える」のではなく吸収できる構造を持っています。
先ずは営業キャッシュフローが十分確保できる収益構造があってこそ、借入金(財務キャッシュフロー)でレバレッジを効かせられる。
根拠がある経営戦略なしに周りの真似をした設備投資をおこなっても、借入金以上に増やして戻すことは出来ないのです。
院長に問いかけたいこと
・先生の医院は、院長が稼がなくても借入金の返済できますか?
・過去3年の投資は、どれだけ“構造的な利益”を生みましたか?
・借入返済が増えたとき、「どこを改善すれば吸収できるか」がすぐに思い浮かびますか?
・金利が上がったことで、「心配」と感じているのは将来への不安でしょうか?それとも現状への不安でしょうか?
最後に
金利は、院長にはコントロールできません。
しかし、
・経営の質
・経営投資の考え方
・収益構造
・意思決定の軸
これらは、今日からでも見直せます。
金利が上がる時代だからこそ、院長は「慎重になり過ぎる」のではなく、経営者として一段、思考を深くする。
そんな姿勢が求められているのだと思います。
さて、先生の医院は、金利上昇局面を「脅威」と捉えていますか?
それとも「チャンス」と捉えていますか?
その捉え方の違いが、数年後の医院の姿を分けていくのだと、私は感じています。
![]() |
|
![]() |
|
![]() |

















