「保険診療(う蝕治療中心)だけでは経営が厳しい」
「だから自費を強化しなければならない」
これは、う蝕治療型の多くの歯科医院の院長が感じている現実だと思います。
実際、保険診療は値上げができない一方で、
・人件費
・材料費
・技工費
・光熱費
・デジタル投資
といった経営コストは確実に上昇しています。
その結果、自費診療に活路を求める院長が増えている
しかし、
自費を強化した“つもり”なのに、逆に経営が不安定になっている医院も少なくありません。
その分かれ目はどこにあるのでしょうか。
価格競争に巻き込まれる医院の特徴
価格競争に巻き込まれやすい医院には、共通点があります。
それは、「他院との違いを価格以外で説明できない」という点です。
例えば、
・インプラント
・矯正治療
・ホワイトニング
・自費デンチャー
これらは自費診療の代表例ですが、
「なぜ、あなたの医院でなければならないのか?」
この問いに、価格以外で答えられないとどうなるか。
患者は自然と
「じゃあ安いところでいい」という判断をします。
例えば、アライナー矯正やホワイトニングは価格競争になり易いのです。
アライナー矯正が値下げ競争に陥りやすい理由
近年、特に象徴的なのがアライナー矯正です。
ワイヤー矯正と比べて、
・参入障壁が低い
・設備投資が比較的少ない
・一定の仕組みが整っている
その結果、多くの医院が「自費強化の切り札」として導入しました。
しかし、
差別化が弱いまま参入した医院ほど、価格競争に巻き込まれるという構造が起きています。
参入障壁が低いものはコモディティ化(汎用化)が起こり易く、多くの院長が参入し価格競争になり易いのです。
・○○万円 → △△万円
・期間限定割引
・キャンペーン価格
こうして値下げが始まると、そこから抜け出すのは容易ではありません。
先日もクライアントの院長が「近くでアライナー矯正を安く提供する歯科医院が登場した」と仰っていました。
自費価格を10%下げると、何が起きるのか
ここで、経営的に非常に重要な視点があります。
一般に、歯科医院の自費診療は限界利益率(粗利率)が高い構造です。
この前提に立つと、
自費価格を10%下げると、利益の大部分(場合によっては8割近く)を失うという事態が起こり得ます。
なぜなら、価格を下げても、人件費や固定費はほとんど下がらないからです。
つまり、値下げは「売上対策」に見えて、実際には利益を大幅に削る自殺行為なのです。
価格競争に巻き込まれない医院は、何が違うのか
一方で、価格競争に巻き込まれない医院も存在します。
それらの医院に共通しているのは、
・その分野で実績が多く、地域に治療を受けた患者が多い
・「〇〇治療なら」と地域住民が問われて答える選択肢の上位2位までに入っている
・自費治療(治療提案)が「単品」ではない
・治療前後のプロセス(説明、安全性、保証、設備など)に価値がある
・医院全体の診療思想と一貫している
という点です。
患者が見ているのは、「値段」だけではありません。
・なぜこの治療が必要なのか
・自分の将来にどう関係するのか
・この医院(院長とスタッフ)に任せて大丈夫か
こうした納得と安心の総量が、価格判断に大きく影響しています。
自費強化=高額治療を売ることではない
誤解されがちですが、自費診療の強化とは、「高い治療をたくさん売ること」ではありません。
本質は、「患者にとってより効果が高い治療」の提案でなければいけないのです。
・治療の意味が伝わっているか
・「治療効果=価格」に対する納得が生まれているか
・医院の診療方針と整合しているか
ここにあります。
この設計がないまま自費を増やそうとすると、最後に残る武器は「価格」しかなくなってしまうのです。
すると、最悪の場合には院長とスタッフとの信頼関係にヒビが入ってしまいます。
「院長は患者の健康を優先する方だと思っていたけど、最近は自費売上のことばかり・・・」
院長への問い
ここで、ぜひ考えてみてください。
・先生の医院の自費診療は、価格以外で選ばれていますか?
・その治療は患者にとってどんな価値があるのでしょうか?
・その治療は、医院の診療方針とつながっていますか?
・10%値下げをせず、逆に値上げをしていける確信がありますか?
「経営が苦しくなってきたから自費治療」
その発想自体に矛盾があります。
自費治療によって患者を健康に導いておられる院長は「患者に提供する治療品質の向上」の先に自費治療があり、医院の治療方針とも矛盾が無いのです。
先生の医院における「自費治療の定義」を明確にしてくださいね。
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