歯科医院の経営は「勘」や「経験」だけでは成り立ちません。
特に物価高騰・最低賃金上昇が続く中、数字を見ずに経営判断をすれば、気づいた時には赤字に転落している危険性もあります。
では、院長が最低限押さえておくべき“3つの経営指標”とは何でしょうか?
① 人件費率
目安:25%前後(小規模効率型は20%程度)
人件費は医院の固定費の中で最大の割合を占めます。
最低賃金は毎年上昇しており、スタッフ確保には「昔の相場以上の賃金」を提示せざるを得ない時代です。
考え方としては人件費抑制ではなく人件費に見合う売上を確保する戦略を考えることです。
忙しくなったから人を採用するではなく売上を増やす為に人を採用するのです。
● 人件費に見合う売上を確保できずに人件費率が30%を超えていくと危険水準です。
● 一方で、人件費を下げすぎるとスタッフ定着率が下がり、売上をあげる能力の低下につながります。
【改善ポイント】
・生産性の高い曜日、時間、分野に人員を集中させる
・受付や会計はDXで効率化し、スタッフの時間を患者満足度向上へシフト
・スタッフ全員が数値目標を持ち、達成に責任を持つ(歯科衛生士担当制の枠の稼働率など)
② チェア稼働率
目安:90%以上
チェアの空き時間は「売上ゼロの時間」。
患者キャンセルや予約管理の甘さは、稼働率を大きく下げます。
ドクターの平均治療単価から見て、目標売上を達成するには一日に何枠診る必要があるのかを計算し、実際の稼働率を見える化します。
●治療枠、歯科衛生士枠の稼働率は経営の生命線です。
【改善ポイント】
・キャンセル率・中断率を毎月ドクター・歯科衛生士別に数値化してチェック
・予約枠の設定と入れ方を見直す(枠が埋まらないのには明確な理由がある)
・曜日、午前と午後で「チェアの稼働パターン」を把握しシフトを最適化
・ユニット使用状況を見直し(ドクターがユニットを使い過ぎているなら歯科衛生士に枠を振り向ける等)
③ 自費率(自費売上比率)
目安:30%以上(医院規模による。大きな医院は40%以上)
保険診療は全国一律点数であり、物価高・賃金高騰をカバーできません。
そのため、自費率の確保は経営安定の鍵です。
● 自費率は治療説明品質と連動しており、売込みを排除した方が数値は上がる。また、どんな患者層にアプローチしているのかによっても数値は変わる。
【改善ポイント】
・説明の「仕組み化」:症例写真や動画を活用して標準化
・スタッフ教育:治療コーディネーター、ドクター、歯科衛生士、診療スタッフの提案スキルの向上
・患者ニーズとの接点を強化:審美・予防・機能改善等、患者ニーズに沿った提案を徹底する
まとめ
歯科医院経営で欠かせない3つの指標は、
1.人件費率(25%目安)
2.チェア稼働率(90%以上目安)
3.自費率(30~40%以上目安)
これらを“毎月”確認していれば、経営の異変を早期に察知し、対策を打てます。
● 院長先生、医院の数字は「経営の血圧や体温」です。
測らなければ異常にも気づけません。
今日からこの3つの指標をチェックして、医院経営の健康管理を始めてみませんか?
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