物価や人件費の上昇が止まらない中、診療報酬は新たな分野や賃上げに配分され、ベースアップが進みにくい状況が続いています。病院経営の危機がマスコミで報道されていますが、私はその影響は間違いなく歯科医院にも及ぶと考えています。
では、これからの時代に経営リスクが高い歯科医院とはどんなモデルでしょうか?
ここではワースト5を整理してみたいと思います。
ワースト1 小規模分院を多拠点展開する歯科医院
一見、分院展開は「成長戦略」に見えますが、今後は大きなリスクとなります。
・採算割れの分院が出れば全体経営に波及
・分院長やスタッフを確保できない(人材不足)
・家賃・人件費の上昇に耐えられない
・スケールメリットを出せず経営効率が低下
つまり「多店舗モデルの限界」が顕在化していくのです。
分院展開は分院単体でも収益性が高くなるよう規模と収益モデルに注意が必要なのです。
また、分院長も超大型歯科医院や大型歯科医院に移っていく可能性が高まりますので、小規模分院展開はかなり苦しいと思います。
ワースト2 アライナー矯正特化型の分院展開
アライナー矯正は数年前まで急成長分野でした。しかし、今や低価格競争でコモディティ化が進んでいます。
また、DTCモデルの法律的整理によってはさらに経営環境が厳しくなる(私は反対の立場です)。過去に大型法人が倒産していますのでレッドオーシャンを勝ち抜く才覚がなければ参入しては池な領域なのです。
他にも
・保険収益とのバランスが取れず市場変動の直撃を受ける
・技術差別化が難しいため広告費・紹介料に依存
・他分野との多角化が進まないとリスク分散できない
いわゆる「モノカルチャー経営」の典型的なリスクがここにあります。
ワースト3 中規模・低生産性歯科医院
ユニットや最新の診断機器、スタッフ数を増やしても、収益性が伴わなければ逆効果です。
・ユニット稼働率が低く赤字化するケースが増加
・依然として「出来高型・う蝕治療依存」から脱却できていない
・最新の治療機器、デジタル設備投資が収益に結びついていない
医院規模も最新設備も収益性に結びつけることが出来ないならば中途半端に高い経営コストが足かせになります。
これからは「収益性」「生産性」「高単価」がなければ規模がむしろリスクになるのです。
弱者の戦略でもなく、強者とのシェア争いにも勝てない。そんな中途半端な立ち位置に高コスト時代が打撃を与えるのです。
勤務ドクターや歯科衛生士数はそこそこ必要なのに採用力が弱いのも経営面でのネックになるでしょう。
ワースト4 新規開業歯科医院
開業費はすでに昭和時代の倍。戸建てで2億円、テナントでも1億円が珍しくありません。
・開業直後は広告依存が避けられず、競争激化に巻き込まれる
・院長が「臨床は得意だが経営は苦手」というケースが多い
・高額借入を背負いながら、地域ニーズとマッチせず、エッジを立てられないリスク
これからは「経営教育を受けていない若手院長」の開業は経営リスクが高いと考えます。
ワースト5 小規模・高コストの一般保険診療型医院
特に危険なのは、う蝕治療に依存した小規模歯科医院です。
・患者単価が低く、物価・人件費の上昇に対応できない
・患者獲得も鈍化し、差別化ができていない
・コストを増やさず売上を増やす戦略と戦術がない
・売上には繋がらないが最新機器が欲しい
・「訪問」「予防包括」「地域連携」などの新領域に対応できない
ユニット2〜3台で地域に超大型歯科医院が進出する地域の院長にも厳しい未来が予想されます。
他にも過疎化が進む地域でも「効果的に縮む」ことが出来なければ採算が合わないでしょう。
まとめ
これからの歯科医院経営は「規模」や「見た目の勢い」ではなく、
どの収益モデルを選び、変化に対応できるかが生死を分けます。
✔ 分院展開やアライナー依存のモノカルチャー経営
✔ 中規模低生産性の運営
✔ 経営スキル不足の新規開業
✔ 高コスト小規模の保険依存
これらのモデルは、確実に高リスクに直面するでしょう。
さて先生の医院は、現在の収益モデルで未来を切り拓いていけますか?
見直しが必要と感じておられるなら経営相談にお申込みくださいね。
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