私が開業医団体に勤務していた頃、お金の専門家と一緒に提供していた人気セミナーがあります。
テーマは――「売上があってもお金を残せない院長がお金を残す方法」です。
4年間で約1,500名の院長が参加し、300名以上の個別相談を専門家と一緒に担当しました。
それほどまでに、お金の管理と残し方は忙しい院長にとって難題なのです。
そして今、その時のことを思い出すたびに「全国の院長は経営コストが上昇していく中で、ご自分の医院の収益性を検証できているのだろうか?」と不安になるのです。
◆ 経営はシンプルだが、現実は複雑
経営はシンプルに考えれば、
(売上 - 経費)= 利益
です。
しかし実際には、
・診療報酬の振込と経費の支払いのタイミングがずれる
・損益計算書の「利益」は使える現金ではない
ため、「今、どれだけ自由に使えるお金があるのか?」が一目で分からないのです。
◆ 固定費に見合う売上を生み出せているか?
例えばスタッフ20人の医院で給与を月1万円上げると、単純計算でも年間で300万円以上の売上増が必要になります(実際には、賞与、社会保険料などを含めるとさらに増加)。
物価上昇や人件費の高騰により固定費が膨らむ時代、何も対策をしなければ投資資金が不足し、成長どころか維持すら困難になる。
しかし現実には、毎年、固定費の伸びを大幅に上回る売上を獲得できている歯科医院は限られるのです。
固定費が増えた分を賄うだけの売上が増えない場合には損益分岐点比率が徐々に悪化し、休日の多い月は利益が出ていないという状況に追い込まれる。
固定費は売上を上げる為の原資なので、院長は固定費を上手く活用して売上に結びつけることが出来ているのかを検証する必要があるのです。
◆ 検証できていない院長が背負う経営リスク
収益性を正しく検証できていないと、
・「何が問題で、どんな改善が必要か」
・「どの分野なら伸ばせるのか」
が見えません。
さらに、これから2040年に向けて進む医療制度改革や診療報酬体系の改革の流れを理解していなければ、どういった経営戦略をとれば収益性を向上させることが出来るかを理解できないのです。
2040年に向けては医療政策の変化に対応できる医院が算定できる点数は増えますが、従来型の診療で算定できる点数は減っていく。
変化に対応できない医院の収益性は少しづつ悪化していきますので、気づいた時には大手術をしなければ経営を立て直せない所まで追い込まれるリスクもあるのです。
◆ 今こそ収益性を再チェックすべき
経営環境は年々厳しくなっています。
・人手不足(解消の見込みは低い)
・物価上昇・設備費の高騰
これらは歯科医院に直撃するリスクです。
だからこそ、今こそ収益性を再点検して対策を打つべきです。
チェックポイントの例としては、
・自費価格は適正か
・治療コンテンツの組み合わせ方は妥当か(収益性の高いものの比率を高められているか)
・設備の稼働率を高められているか
・一人当たり、時間当たり生産性を高めることが出来ているか
などがあります。
例えば、歯科衛生士ひとりが診る患者を一日に一人多く診るだけで収益性は大きく変わります。
もちろん、無理して時短するのではなく再評価によって「適正な管理期間」「適正な管理時間」にするだけで枠の稼働率は向上しますし、歯科衛生士の施術技術が向上することでも生産性は向上するのです。
まとめ
歯科医院の収益性を検証せずに「なんとなく経営」している院長は、これからの高コスト時代を生き残ることはできません。
経営の本質は、医院の固定費に見合う売上、次回投資が出来る売上を戦略的に確保できているかどうか。
その検証を怠る院長は、知らぬ間に淘汰されるのです。
これからの時代を生き抜くために――
「今の医院の収益性」を徹底的に見直してみませんか?
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