はじめに:同じ患者数なのに、なぜあの医院はバタつかないのか?
歯科医院を見学していると、不思議なことに気づきます。
「同じくらいの患者数を診ているのに、バタついている医院」と「余裕を感じる医院」があるのです。
この差は一体どこから生まれるのでしょうか?
今回は、診療がバタつく医院に共通する5つの問題点をもとに、その構造的な原因と対策を考えてみます。
1)“人に依存する”オペレーション設計
診療オペレーションには「個人のスキル頼り」な設計と「仕組みで回る」設計があります。
特に、以下のような状態ではバタつきが常態化します。
・複数人が関わって動く連携型オペレーション
・担当が不明確な場面で、特定のスタッフが楽なタスクを選択し複雑なタスクを回避する
・「誰でもできるように」ではなく「できる人がやる前提」の体制
こうした設計はチーム処理能力に大きく差が出やすいため、
スタッフの成長度やマンパワー減の影響をモロに受けてしまいます。
2)スタッフの“成長度”がボトルネックになっている
新人スタッフが診療を見学し「教育開始から数カ月経過しても誰が何を目的に動いているのか分からない」と感じている場合、
その原因は本人の能力不足ではなく、育成設計の不備であることがほとんどです。
・次々と新しいことを詰め込まれる
・教える人によって指導内容が違う
・「見て覚えて」文化が根強く残っている
こうした環境では、早期離職やモチベーション低下に直結します。
とくに歯科医院で働いた経験がない診療スタッフには診療のオペレーションは難解であり、教える手順を工夫しながら歯科医療の知識も入れていく必要があるのです。
3)マニュアルと育成カリキュラムが整っていない
バタつく医院にありがちなのが、「マニュアルはあるけど使われていない」という状態です。
・感染対策や診療補助、印象、石膏流しの手順や品質が人によって少し違う
・育成カリキュラム、スキルチェック表がないため、どこまで成長しているか不明
・育成の進捗がわからず、ドクターが新人スタッフに教えていないことをやらせようとする
・教える側が属人的で、再現性がない
逆に、診療が安定している医院は“先輩がマニュアルを守っている”という特徴があります。
マニュアルが浸透し、育成カリキュラムで新人の進捗が見えると、チーム全体の処理能力が底上げされていきます。
実際にはマニュル学習だけでは足りずにアクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)を取り入れる必要があるのですが、マニュアルが機能していない場合にはそちらから始めてくださいね。
4)リーダーが診療前の準備を怠っている
診療がスムーズに回る医院は、事前準備と情報共有が徹底されています。
・予約表やカルテを前日に確認、必要に合わせて予約枠を移動
・患者の背景(カウンセリングシート)や治療ステージの把握
・朝カンファで担当スタッフとの動きのすり合わせ
これらを怠ると、その場の判断や対応に追われてバタつくのです。
特に、フロアリーダー不在の医院や役割が曖昧なチームは、この点が疎かになりがちです。
5)イレギュラー対応の想定が甘い
急患対応や治療内容の変更など、日常診療には“想定外”がつきものです。
しかし、それを「起きた時に考える」では、医院全体が一気にバタつきます。
・急患をどの枠で、どのチームが対応するのか?
・治療時間が延びた場合、他の患者の対応は?
・遅れた時間をどうやって回収するのか?
・キャンセルが出た際の代替案は?
これらを事前にシミュレーションし、想定しておく体制づくりが不可欠です。
終わりに:バタつきのない医院づくりは“変化への対応力”で決まる
歯科医院のチーム構成は日々変わります。
ベテランスタッフの退職、新人の加入、ドクターの入れ替わり…。
このような変化が起きたとき、医院全体の処理能力が落ちれば、必ず診療はバタつきます。
だからこそ院長や幹部は、
「どの役割にどんな人材を配置し、どのレベルまで育てていくか」という視点で
日頃からチームビルディングを見直していく必要があるのです。
プロ野球と同様に私はチームづくりを考えています。チームを機能させる為のカラー決め、採用と育成、仕組み化などを日々おこなっていることが大切なのです。
先生の医院では、なぜ診療がバタつくのでしょうか?
「人が育たないから」ではなく、「育つ設計がないから」かもしれません。または仕組化されていないから。
もし、診療のバタつきと生産性低下が気になっているなら、
まずはオペレーションと育成の仕組みを見直すところから始めてみませんか?
ご希望があれば、先生の医院に即した「診療オペレーション改善レポート」のご提案も可能です。
お気軽にご相談ください。
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