今日は「変化に強いチームを育てる院長学 第二回」
“チームが理念で動く組織づくり”がスタッフの内発的動機を引出すことに繋がることについて書きます。
チーム作りは「指示」「徹底したティーチング」から始まり、チームとチームメンバーの成長に合わせて権限委譲を進めることで組織化が進みます。
チームメンバーの内発的動機を生み出せない医院の多くが管理型のマネジメント手法を採用し人事評価制度などの仕組みによりチームメンバーをコントロールしようとする。
院長は一方で理念に基づき自走するチームを目指しながら、それを阻害する仕組みを同時に採用しているのですが、そのことで院内で様々な問題が発生するのです。
2040年に向けて医療制度が大きく変化していく中、これからの歯科医院経営で最も重要になるのは 「理念でチームを動かせるかどうか」 です。
① 数字を目的にして動くチームは、限界が早い
院長の中には、「売上」「新患数」「キャンセル率」「自費率」など、数値目標でチームを動かそうとする方もいらっしゃいます。
しかし、
数字は人を“動かす”ことはできても、“育てる”ことはできません。
数字は目標ではあっても、動機にはならないのです。
数字で人を動かそうとすると、スタッフは「評価されるために動く」ようになります。
それは外発的動機、つまり「褒められたい」「叱られたくない」「報奨を得たい」というコントロール構造。
その結果、
・スタッフの成長は一時的
・指示や報償がなければ止まる
・数字に追われて疲弊する
このような「燃え尽き型のチーム」になっていくのです。
燃え尽き型のチームかどうかを判断するのは簡単、スタッフの頭の中で「理念」「数字目標達成」のどちらのウエイトが高いのかは話せばすぐに分かるからです。
② 理念がチームを“自走”させる
一方、理念で動くチームは、指示がなくても動きます。
それは「理念=自分の判断基準」になっているから。
たとえば、
「患者が安心して治療を受けられる医院にしたい」
という理念が浸透していれば、受付も、歯科衛生士も、ドクターも、同じ基準で判断できる。
・待合室の声かけ
・治療説明の丁寧さ
・チーム間の情報共有
これらは“ルール”ではなく、“理念を形にする行動”になります。
そして理念行動の成果を数値で把握して改善していく仕組みを落しこむことで経営面でも成立するのです。
例えば「患者の安心」という言葉を深掘りして行動に繋げるだけでも経営における多くの数値が改善する。
なのに数値目標の達成を目的の様に扱うから上手くいかないのです。
③ 理念を「仕組み」に落とし込む3ステップ
理念をチームメンバーに共有しても行動に繋がらない
そう悩む院長は少なくありません。
それは理念が “言葉のまま”で止まっている からです。
理念を“行動”に変えるには、次の3ステップが不可欠です。
|
ステップ |
内容 |
目的 |
|
① ビジョン化 |
理念を3~5年後の医院像に変換する |
チームに“向かう方向”を示す |
|
② 仕組み化 |
採用・教育・評価など医院システムに理念を反映 |
理念を“運用の中”に浸透させる |
|
③ 行動化 |
日々の仕事の中で理念を表現できる行動に落とし込む |
チームが“自ら体現”できる状態に |
この3ステップを回すことが、“理念経営を実装する”ということです。
理念を掲げ朝礼などで復唱するだけでは駄目なのです。
④ 理念で動くチームが強い理由
理念で動くチームは、経営環境の変化に強い。
なぜなら、どんな制度改革が起きても、行動の基準がブレないからです。
・制度が変わっても、理念は変わらない
・患者が変わっても、価値の軸は揺らがない
・スタッフが入れ替わっても、文化が残る
そしてもうひとつ大切なこと。
理念で動くチームのメンバーは、自分の仕事に誇りを持てる。
自分の仕事が「理念の実現に繋がっている」と実感できることで、人は幸福感と成長意欲を感じます。
それが組織の“持続力”になります。
⑤ 院長が今日からできる「理念実装の3アクション」
(1) 理念を日常の言葉で語る
朝礼・ミーティングで、「理念を実現するために今やっていること」を言語化する。
(2)スタッフの行動を理念で称える
「ありがとう」ではなく、「理念を形にしてくれてありがとう」と伝える。
(3) 理念に合わない仕組みを変える
評価やルール、数値目標が理念とズレていれば、それを修正する。
この3つを続けることで、スタッフは「理念が本気で大切にされている」と感じるのです。
まとめ
経営の目的は「数字の達成」ではなく「理念の実現」。
そしてスタッフが働く目的は「理想の自分の実現」でなければなりません。
数字は理念を支えるための“結果”に過ぎません。
理念がチームの判断軸になれば、人はコントロールではなく、自らの意思で動き出します。
そして理念の実現に近づいているのかを判断する指標のひとつに数値があり、経営面も成立しなければ理念は願望に終わることを理解するのです。
その時、院長が目指す“変化に強いチーム”は自然に出来上がります。
理念の実現に本気の院長が経営目標の達成に本気になれるのだと思います。
徹底的に数値を追いかけるだけでも大きな歯科医院は作れます。
最新の医療機器も導入でき、院長は成功者として称賛されるでしょう。
スタッフの待遇も良く出来るでしょうし採用的優位を築くことも出来る。
ただ、地域医療に不可欠な存在として尊敬を集める存在になれるのかは別問題です。
院長一人の小規模な医院でも地域の患者と多職種に頼られ尊敬を集めてこられた先人院長を私は多く知っていますので、規模に関わらず理念で動く医院を作り承継していくことも素晴らしいと思うのです。
次回予告:
第3回「判断力を磨く “迷わない院長”の思考法」
制度も社会も不確実な時代に、何を基準に判断すべきか。
“考える院長”が身につけている3つの思考習慣をお伝えします。
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