医院の信頼は「診療」だけでは築けない
先生の医院では、患者対応についてスタッフ間で共有や振り返りを行っていますか?
歯科医院の経営において、技術や治療成績はもちろん重要ですが、それ以上に「患者さんがどう感じたか」が継続来院・紹介・自費選択に大きな影響を与えています。特に最近では、Google口コミやSNSでの情報発信が一般化し、「感じが悪い」「説明が雑」といった1件のネガティブな投稿が新患獲得に与える影響も無視できません。
ある都市近郊の20人規模の歯科医院では、ベテラン勤務ドクターが退職し、引き継いだドクターの患者への説明不足から自費診療の売上が減った経験から、対応力向上の取組みを開始。結果として、1年でそのドクターの自費率が12%向上し、治療中断は3分の1に減少しました。治療技術を支えるのは、現場での「伝え方」「接し方」であることをあらためて示す結果といえるでしょう。
クレームの多くは「説明の質」と「態度」の問題
厚労省や中医協の議論でも、「患者の納得と満足を得るための説明責任」の強化が進められています。これからの時代、保険診療であっても、インフォームドコンセントを満たす「伝わる説明」が評価されるようになります。
よくある対応ミスの例としては、
・予約変更の電話に対して事務的すぎる返答をしてしまい、患者が不信感を抱く
・歯科衛生士や診療スタッフ、受付が忙しさから無意識に上から目線の言い方をして、トラブルに発展(ネットへの書き込み)
・自費治療の説明を勤務ドクターに任せきりで、補足の説明が不足し患者の不信感に繋がった
など、悪意がない“ちょっとした対応のズレ”が、患者との信頼関係を壊してしまうことがあります。忙し過ぎるといつもは実行していることを省いてしまう。こうした事例から見えてくるのは、「誰が・どのように」患者と関わるかの一貫性が、医院のブランドに直結するということです。
接遇力は“感覚”ではなく“トレーニング”で育てる
「うちはスタッフが気配りできるから大丈夫」と思われるかもしれませんが、医療現場の忙しさの中では、個々のスキルや気遣いだけでは限界があります。重要なのは、全スタッフが一定の対応水準を保てるよう“仕組み”として整備することです。
効果的なアプローチの一例として、
・カウンセリングマニュアル、接客マニュアルの整備(言葉選びや資料活用の基準化)
・「患者対応5原則(例:傾聴・確認・共感・説明・感謝)」の朝礼読み合わせと実践事例発表
・月1回のロールプレイ研修(受付〜診療誘導~治療時対応~送り出し~受付までの流れ)
などがあります。特にロールプレイは、心理学の“社会的学習理論(バンデューラ)”に基づき、他者の行動から学ぶ機会となり、実践力の向上に非常に有効です。
チーム全体で“患者対応力”を育てる風土づくり
対応改善がうまくいっている医院では、以下のような「チーム文化」が根づいています。
・スタッフ間で「今の対応、どうだった?」と声をかけ合う習慣
・クレームを“問題”ではなく“成長の種”として共有する仕組み
・自費説明の場に歯科衛生士・治療コーディネーターも同席し、引き続き補足説明ができる体制
こうした文化の土台になるのが、心理的安全性とヒューマンスキル評価制度です。たとえば、定期評価項目に「患者対応の工夫」や「チーム貢献度」を含めることで、単なる業務遂行ではなく、患者との関係性づくりを意識するスタッフが増えていきます。
また、クレーム発生時のヒアリングも「誰かのミスを責める」のではなく、「どうすればチームとして再発防止できるか」に焦点を当てることで、安心して意見を言い合える組織風土が築かれていきます。
先生の医院では、患者対応のスキルをどう育てていますか?
令和8年以降の診療報酬改定でも、「アウトカム評価」や「チーム医療としての連携力」「連携の実態」、「記録」が重要な視点になると予測されています。単に点数を取るのではなく、“患者にとっての価値”をどう高めるかが問われる時代です。
先生の医院では、患者対応の教育や仕組み化は進んでいますか?
また、トラブルが起きたとき、チーム全体で学びに変える体制は整っていますか?
もし、「体系的に教育する仕組みを作りたい」「医療接遇のスキルを評価する仕組みを作りたい」といったお悩みがあれば、ぜひご相談ください。理念に沿った対応力強化のご支援をいたします。