「自分がいくら稼いでいるか」を正確に答えられますか
先生は今月、自分がいくら稼いでいるか、正確に答えられますか。
医院の月次売上なら答えられる院長が多い。しかし「純粋な院長自身の成績」となると、途端に曖昧になります。
保険の売上、自費の売上、診療情報等連携共有量2や総合医療管理料の算定、ホワイトニング、歯周病治療への移行、口腔機能管理の開始、セルフケア用品の購入・・・等々。
先生が直接関わった売上はどれ位あるのでしょうか?
個人事業主の院長であれば、医院の利益と院長の収入の境界線が曖昧になりやすい。
法人化している院長であれば、役員報酬として金額は決まっているはずですが、その報酬額が「本当に正当な評価額として設定されているか」は別の問題です。
自分がいくら稼いでいるかを正確に把握していない院長は、意外と多い。
そしてこの曖昧さが、医院の将来の可能性を静かに奪っていくことがあります。
個人事業主の院長が陥りやすい「お金の混在」
個人事業主として開業している院長の場合、医院の口座と院長個人の口座が事実上つながっていることが多い。
医院に利益が残れば、それをそのまま生活費や個人の支出に充てられる状態です。
この構造の問題は、「院長が受け取るべき正当な報酬はいくらか」という問いを立てずに済んでしまうことです。
医院が利益を出している限り、使ってもいい。こういう感覚で動いていると、医院の収益が院長の支出によって消えていき、再投資のための資金が手元に残りません。
医院の利益には、
「院長個人の労働に対する報酬」
「医院という事業体への再投資のために残すべき資金」
「将来のリスクに備えた内部留保」
という、性格の異なるお金が混在しています。
この三つを意識的に分けていない院長は、気づかないうちに再投資資金や内部留保を個人の消費に充ててしまっています。
法人の役員報酬が「高めに設定されがち」な理由と問題
法人化している院長の場合、役員報酬という形で院長の収入が設定されます。
この金額、どのような基準で決めていますか。
多くの場合、「法人に残す利益を減らし、個人に移転したい」という節税の観点から、役員報酬を高めに設定するケースがあります。
給与所得控除額などによって役員報酬で受け取る方が有利になるケースがあるためで、税務上の選択としては一定の合理性があります。
しかしここに落とし穴があります。
役員報酬を高く設定した結果、法人(医院)に残る資金が少なくなる。
設備の更新や修繕、スタッフの採用、マーケティング投資。こうした医院の未来に向けた投資に使えるお金が枯渇します。
節税を優先するあまり、医院の成長投資を削っているという矛盾が生まれます。
役員報酬の水準は、
「院長が受け取るべき正当な報酬額」
「医院が成長するために必要な内部留保の水準」
を両方計算した上で設定することが理想です。
ただ、昔の出資持分がある法人と基金拠出型法人とでは対策が変わります。
これは税理士との相談が必要な領域ですが、判断の軸を院長自身が持っておくことが重要です。
「月にいくら使っているか」を把握していますか
もう一つ、多くの院長が曖昧にしているのが「自分の生活費や遊興費」です。
月にいくら使っているか。生活を維持するために本当に必要な金額はいくらか。これを正確に把握している院長は、思いのほか少ない。
把握していないと何が起きるか。
院長の収入が増えるほど、支出も増えていきます。
生活水準が上がり、固定的な支出が増え、気づけば「こんなに稼いでいるのに手元にお金が残らない」という状態になります。
これは個人の消費が医院の再投資資金を侵食しているサインです。
院長の生活費を明確にする意味は、節約させることではありません。
「これだけあれば生活が成り立つ」という自分の最低ラインを知ることで、それ以上の収入を医院への再投資や返済・貯蓄に向けられるようになるからです。
自分の生活費を把握している院長は、お金の使い方の優先順位を意識的に決められます。
お金を「色分け」する習慣を持つ
ここまでの話をまとめると、院長に必要なのは医院と個人のお金を「色分け」する習慣です。
色分けの考え方はシンプルです。医院の収益の中には少なくとも四つの性格のお金があります。
一つ目は院長の労働に対する正当な報酬です。
院長が診療者・経営者として働いた対価として受け取るべきお金です。
もちろん、その中から院長家族の未来を切り拓く資金を貯めていきます。
二つ目は医院の成長のための再投資資金です。設備更新・スタッフ採用・マーケティングに使うお金です。
三つ目は借入返済に充てるお金です。
四つ目はリスクに備えた内部留保・貯蓄です。予期せぬ支出や業績悪化に備えるお金です。
この四つを意識せずに「残ったお金を使う」という発想で動いていると、院長の消費が再投資資金や内部留保を侵食します。
使いすぎた結果、医院が成長に必要な投資をできなくなる。これが「院長の使いすぎが医院の未来の可能性を奪う」という構造です。
色分けの具体的な金額は、医院の規模・借入状況・成長計画によって変わります。
銀行借り入れは事業においてレバレッジを効かせるために必要ですが、金利上昇の局面において依存し過ぎるのは禁物です。
顧問税理士と一緒に「院長報酬の適正水準」と「医院に残すべき資金の水準」を設定することから始めてみてください。
まとめ
院長の給与の問題は、単純な「いくら貰うか」の問題ではありません。
医院のお金と院長個人のお金を正しく色分けできているか、という経営の基本姿勢の問題です。
自分の正当な報酬額を決める。
医院の再投資資金と内部留保を確保する。
自分の生活費を把握して、消費が投資を侵食しない構造をつくる。
この三つができているとき、院長は医院の未来に対して責任ある投資ができるようになります。
お金の色分けについて一度整理したい院長は、ぜひご相談いただければと思います。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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