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◆歯科医院経営ブログ

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「診療時間を延ばす=売上アップ」という誤解 ~“量の経営”から“密度の経営”へシフトが正解~  [2025年10月20日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
しかし、答えは書きません。院長によって経営状況は違いますのでスタッフと一緒に考えて頂きたいからです。
もちろん、経営のサポートのご依頼は喜んでお引き受け致します。
では、本日のブログもご自分の医院の状況に照らして考えてみてくださいね。
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「もっと診療時間を延ばせば売上が上がるのでは?」

開業から数年が経ち、患者が増えてくると、多くの院長が一度は考えるテーマです。

しかし、現場を見ていると、診療時間を延ばすほどに儲からなくなる医院が少なくありません。

それどころか、スタッフが疲弊し、患者満足度が下がり、離職率まで上がってしまう。

今日は、「診療時間を延ばす=売上アップ」という思い込みが生む経営リスクについて整理し、時間ではなく価値で経営を強くする視点をお伝えします。

 

時間を増やしても、利益は増えない

一見、診療時間を延ばせば「稼働時間×単価」で売上は上がります。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

たとえば――

・平日夜遅くまで診療

・土曜日はフル稼働、日・祝日も診療

・予約を詰め込み、待合室は常に満員

こうした医院では、確かに一時的な売上増は見込めます。


しかし、その裏で確実に起きるのが「人材リスク」と「品質リスク」です。

 

人材リスク

夜間・休日診療を続けると、スタッフの疲弊が進み、採用・定着が難しくなります。

近年の若手歯科衛生士や診療スタッフの志向は明確です。

「無理なく長く働ける環境」「自分の時間を確保できる職場」を重視している。

つまり、“稼働時間を増やすほど人が集まらない構造が出来上がってしまうのです。

実際にスタッフの退職によって1週間のシフトに必要な人材を配置できない医院もあるのです。

 

品質リスク

予約を詰め込み過ぎると、一人ひとりへの対応密度が下がります。

治療提案の説明が短くなり、患者が納得しないまま治療を始める。

その結果

・キャンセル率の上昇

・治療中断の増加

・自費提案の成約率低下

・治療単価の低下

・ネットのマイナス口コミの増加

・SPT移行率の低下

・ドクターの主訴のみ治療の増加

・治療計画完了率の低下

という逆スパイラルに陥ります。

 

力のある歯科医院では患者への必要な説明やサービスを省かずに生産性を高め、治療単価も上げることにチャレンジしています。

スタッフの産休や育休が重なって戦力ダウンしても生産性は落ちないのですが、品質は犠牲になっていることも多いのです。

 

「量の経営」から「密度の経営」へ

歯科医院経営は、どれだけの時間を使ったかではなく、その時間でどれだけの価値を提供できたかで決まります。

売上=

「来院患者数 × 平均単価 × 継続率(LTV)」

この式のどこを伸ばせるのかで、医院の戦略はまったく変わります。

 

時間を延ばすのは「来院患者数」を増やすアプローチですが、人手が限られた医院では、そこを追うほど破綻します。

今後は、

・治療品質を高めて単価を上げる

・患者との信頼を深めて離脱を防ぐ(LTV向上)

・納得度を高めて紹介が生まれる構造にする

この「密度を高める経営」への転換が不可欠です。

 

治療品質 × 納得度 × 継続率 が収益の核になる

では、密度の経営とは何か。

単に高額治療を増やすことではありません。

患者が「自分に必要な治療を受けている」と心から納得できる環境をつくることです。

治療品質を高める

・施術技術だけでなく、診断・治療説明・重症化予防と管理・生活習慣改善支援まで含めた総合力

・患者の理解度を確認する“各種説明デザインを構築する

納得度を高める

・治療方針の「選択肢」を提示する

・メリット・デメリットを誠実に伝える

・患者が「自分で選んだ」と感じられるプロセスを設計する

これは行動経済学でいう自己決定理論に基づくアプローチで、人は自分で選んだ選択を継続しやすいという心理特性を利用します。

売込み型コンサルシステムの医院がまだまだ多いと感じますが、それを続けると自費が増える一方で不満を感じる患者も増やすことになってしまうのです。

継続率(LTV)を高める

・定期来院率を数値で追い、院内で共有する

予約を守る理由を患者の価値観に沿って伝える

・スタッフ全員で「再来を促すコミュニケーション」を設計する

これらの仕組みを整えると、診療時間を延ばさずとも、生産性(時間あたり収益)が上がり、患者の満足と紹介が増える医院へと進化します。

 

「働きやすさ」と「収益性」は両立する

多くの院長は、「働きやすい医院=スタッフに優しい医院」だと誤解しています。

しかし、実際には逆です。

働きやすい医院ほどスタッフが前向きに成長し、患者との関係性が深まり、結果として「治療品質」「提案力」「継続率」が高くなる。

生産性とは速さではなく、集中度と納得度の総和である。

診療時間を延ばすよりも、

その時間の中でどれだけ患者の信頼を積み重ねられるか

それが、これからの収益構造を決める最大の要因です。

 

チェックリスト:あなたの医院は「量の経営」か「密度の経営」か?

質問

YES/NO

夜間や土日診療を増やしても人材が定着していない

 

予約を詰め込むほどキャンセル率が上がっている

 

治療説明の時間を短縮していないか?

 

定期来院率・治療中断率を毎月確認しているか?

 

患者単価よりも「患者納得度」をKPIにしているか?

 

 

まとめ

「時間を増やす経営」から「価値を深める経営」へ。

この転換を早く実現した医院ほど、人材も患者も長く関係を続けたい医院になっていきます。

診療時間を延ばすことは、

短期の売上アップにはなっても、長期の医院成長にはつながりません。

今こそ、量の拡大ではなく密度の向上に舵を切りましょう。

 

★こちらもご覧ください。
 
 
 
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