このシリーズでは、歯科医院が経営計画を成果につなげるための考え方をお伝えしてきました。
最終回のテーマは、「短期・中期・長期のビジョンをつなげる院長の役割」 です。
1年・3年・5年の目標をどう一貫させるか?
経営計画は「点」ではなく「線」で描く必要があります。
・1年目:目の前の課題を改善し、確実に成果を出す
例:キャンセル率を10%から8%に下げる、衛生士枠の継続来院率を70%に上げる、自費率を25%にする。
・3年目:組織の基盤を整え、医院の強みを確立する
例:キャンセル率を7%にする、衛生士枠の継続来院率を75%に上げる、自費率を40%にする。
・5年目:ビジョンを実現し、地域で選ばれる存在になる
例:キャンセル率を5%にする、衛生士の継続来院率を85%に上げる、自費率を40%にする。
1年の成果を積み重ねて3年の成長につなげ、さらに5年のビジョンに結実させる。
継続して取り組むことでチームの改善力が向上し、上記の例でも3年後→5年後で数値が飛躍的に改善しています。
制度改革・DX化・地域需要の変化に備える
これから歯科医院を取り巻く環境は大きく変化します。
・制度改革:2025年の診療報酬改定では、予防・管理・多職種連携がさらに強化
・DX化:標準電子カルテ、AI活用、クラウド予約など、院内業務のデジタルシフト
・地域需要の変化:高齢化に伴う訪問歯科の増加、都市部での競争激化
これらは「突発的な変化」ではなく「必ず来る変化」です。
したがって、3年後5年後のビジョン設計に織り込んでおく必要があります。ただし、経営資源が限られることを前提にどこに集中させるのかを決めることも必要。総花的な方針はどっちつかずで成果に繋がらないことが多いからです。
“成果を出せるチーム”を育てる院長の今日から1年後への行動
① 1年目の成果目標を数値で明確にする
・例:「衛生士枠の継続来院率を5%改善する」
② スタッフと一緒に3年後の医院像を描く
・例:「衛生士チームで口腔機能管理を確立する」→管理料、歯リハの算定率
③ 5年後に地域でどう評価されたいかを言語化する
・例:「かかりつけ歯科医院として、家族3世代が通う」→数値化
④ スタッフが計画を自分事化できる場をつくる
・月1回の振り返り会議、プロジェクトごとの役割分担とリーダー育成
今日からできるチェックリスト
□今年の医院の数値目標をスタッフ全員と共有しているか?
□3年後に医院をどう成長させたいか言語化しているか?
□5年後に「地域でどんな存在になりたいか」を明確にしているか?
□スタッフと一緒にビジョンを語る時間を持っているか?
まとめ
「1年の成果」「3年の成長」「5年のビジョン」を分断せず、一貫したストーリーでつなげる。
そのストーリーをスタッフと共有し、実行の主役にしていく。
これこそが、院長が担う最大の役割です。
チームの理想ではなく院長の理想を追いかけ院長の言動がブレるから、スタッフから「院長が何を実現したいのかが分かりません」と言われるのです。
短期的な成果に一喜一憂するのではなく、中期・長期の成長につながる道筋をつくること。
そしてその道筋を一緒に歩む“成果を出せるチーム”を育てていくこと。
この視点を持てるかどうかで、5年後の医院の姿はまったく違うものになるでしょう。
最後に質問です。
先生は、1年・3年・5年をつなぐビジョンストーリーをすでに描けていますか?
そしてチームメンバーとストーリーを共有し、ワクワクしながら自分とチームの成長に期待できていますか?
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