歯科医院の経営改善や組織づくり、ホームページや看板の活用法指導やスタッフ育成の仕組みづくりをサポート。か強診を活用した長期管理型の歯科医院づくりなど。開業医団体で30年の勤務経験があり安心してご依頼いただけます。

 
◆歯科医院経営ブログ

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医院を大きくしても、幸福度は上がらない ~拡大よりも”持続と成長”を選ぶ時代へ~  [2025年10月30日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
しかし、答えは書きません。院長によって経営状況は違いますのでスタッフと一緒に考えて頂きたいからです。
もちろん、経営のサポートのご依頼は喜んでお引き受け致します。
では、本日のブログもご自分の医院の状況に照らして考えてみてくださいね。
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「分院展開を考えています」

「規模を拡大して組織化を進めたい」

最近、そう話される院長が増えています。

確かに、規模を拡大すれば採用面やブランド面で優位性が生まれます。

しかし、私は知っています。

「規模の拡大=発生する問題の拡大」

経営コストが上昇し続ける今、規模拡大は成功への道ではなく、リスクの拡大になりかねない。

そして院長として経営者としての器の大きさが求められるのです。

もちろん、その苦労を覚悟してまでも達成したい歯科医療のビジョンがあるのであればそれは素晴らしいことだと思います。

 

分院展開が「最もリスクの高い経営戦略」である理由

近年の分院展開を取り巻く環境を整理すると、以下の3つの壁が見えてきます。

1.経営コストの上昇

人件費・家賃・材料費・光熱費、すべてが上昇傾向にあります。

診療報酬は全国一律のため、都市部では経営構造が合わなくなりつつある。

つまり「売上に対する固定費が増える=経営リスクが増す」構造です。

2.人材確保の難化

分院を開設しても、勤務ドクターや歯科衛生士の確保が難しい。

「スタッフが足りず、既存院も回らなくなった」というケースは珍しくありません。

3.収支分岐点の上昇

複数院を維持するためには、各院で一定以上の利益を確保する必要があります。

その結果、勤務ドクターやスタッフ一人あたりの売上ノルマが上昇し、現場が疲弊していくのです。

 

拡大すればするほど「院長の自由」は奪われる

分院展開をした院長の多くが口を揃えて言います。

「自分の時間がなくなった」

「現場の問題対応で一日が終わる」

経営規模が拡大すると、意思決定のスピードが落ち、一つの判断ミスが複数の医院に波及します。

さらに、各院の院長(分院長)との価値観のズレ、人事評価の不公平感、教育水準のばらつきが発生。

結果、院長は「治療家」ではなく「問題対応業」に追われていくのです。

 

拡大戦略が「人」を疲弊させる構造

規模を拡大すると、組織運営のKPI(業績指標)が増えます。

しかし、同時に人間軸の管理が弱くなります。

・達成すべき売上目標が高くなり、チームのモチベーションが下がる

・「数字に追われる」ことで理念を追うことが後回しになる

・現場の人間関係が希薄化し、離職率が上昇する

特に、「分院を増やす=幸福が増える」という幻想が強いと、組織の疲弊を見落としてしまう。

実際に大きな法人を退職した経験を持つスタッフと名刺交換をする機会は結構あるのです。

 

「最適規模」を見極める3つの視点

拡大を目指す前に、「どこまでが理想を追いかける最適規模か」を見極めることが重要です。

1) 経営の収支分岐点を明確に把握しているか

「〇〇駅前でうちの収益モデルであれば年商○○円で経常利益%を確保できる」

というラインを明確にできていますか?

分院を出す前に、この計算ができなければ危険です。

 

(2)チームが育つ仕組みを持っているか

分院を出す目的は「売上」ではなく「人の成長」であるべきです。

スタッフが理念に動機づけられ、自己成長できる環境を整えなければ、拡大した瞬間に崩壊が始まります。

組織が大きくなっていくのに、理念に動機づけられ能力が高いリーダースタッフが必要数育っていないとリーダーが足りない部署が機能しなくなる。

歯科医院の場合にはライフイベントで力のあるスタッフが一定期間休みますので、経験の浅いスタッフが育つ仕組みがなければ規模の拡大は重大な経営リスクとなるのです。

 

(3)「理念の再現性」があるか

分院長やチーフが変わっても、医院の理念と行動が再現できるか。

もし「院長の存在ありき」で回っているなら、まだ拡大すべきではありません。医院メンバーが増えるほどに理念の浸透の難易度は高くなります。

実際には、同じ法人の分院なのに収益モデルは同じでも医院カラーはバラバラというケースも多いのですが、収益面では成功しても組織内がバラバラならば院長や幹部が「人の問題」でずっと苦労していく未来が確定するのです。

 

「小さくても強い医院」を選ぶ勇気

これからの時代、「大きいこと」はもはや競争優位ではありません。

代わりに重要なのは、

・治療品質を高め続けていること

・理念が浸透していること

・患者との信頼関係が深いこと

・スタッフが自走できること

この4つを満たす医院は、規模に関係なく強い。

むしろ、小規模の方がスピード・柔軟性・心理的安全性・患者との近さを保ちやすいのです。

 

最初に医院規模を考えるより、理念を実現する為にどれだけの収益と組織体制が必要かを考えた方が良いと思います。

規模が大きくてもビクビクしながら収益の確保に追われている医院もありますし、規模が小さくてもかかりつけ患者に支えられて経営が安定している医院もあります。

どちらの医院の院長とスタッフの目が輝き、幸せなのでしょうか?

 

⑥先生の医院はいかがですか?

1.拡大の目的は「売上」でしょうか?「理念の実現」でしょうか?

2.もし今すべての医院が止まっても、理念と文化は残りますか?

3.チームが院長の管理ではなく理念で動いていますか?

4.拡大によって、スタッフの幸福度は上がっていますか?

 

まとめ

規模を追う経営は、リスクを拡大する。

理念を追う経営は、人を育て、幸福を広げる。

拡大する前に、成長の質を整えること。

それが、今の時代に求められる「持続可能な経営」です。

 

医院を大きくすることは、簡単です。

しかし、“三方が幸せな状態を保ちながら経営と診療を続けることは、難しい。

だからこそ、今こそ問い直しましょう。

「私はなぜ医院を拡大したいのか?」

「拡大したその先に、スタッフとどんな幸せを見ているのか?」

その問いに理念と収益面で答えられる医院こそ、真に強く、しなやかに生き残っていくのだと思います。

 

次回予告:
次回は、都市・規模・採用・人材という4つのテーマを経て、「変化に強い医院文化をどう育てるか」についてまとめます。

タイトルは

『安定を求めると、医院は不安定になる』。

 

「変化しないことが最大のリスク」

その本質に迫ります。

 

★こちらもご覧ください。
 
 
 
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