今日は脱・常識歯科経営シリーズです。
「今のままでも何とかなるし、今までも何とかなってきた」
「患者も多いし、スタッフの退職も落ち着いている」
そう思っている院長ほど、これからの5年で苦戦する可能性が高いと私は感じています。
なぜなら
“安定”を維持しようとすること自体が、最大のリスクだからです。
私はクライアントの院長に断言します。
「もうこれ位の売上で良いと院長が思うと売上が低下し始めます」と。
人は安定を求めると今まで無意識的に行ってきた努力を弱めてしまうからです。
細やかなミーティングや勉強会、スタッフ面談の頻度が減り、院長の理想に向かう姿勢が弱くなる。
すると、それがチームメンバーの行動に影響し患者に伝わり売上の減少に繋がるのです。
スタッフと面談すると「うちも昔は色々と取り組んでいたんですが段々とやらなくなっていきました」と答えてくれます。
① 「変化しない医院」は、環境変化のスピードに飲み込まれる
私たちを取り巻く環境は、ここ数年で劇的に変わりました。
・人件費・材料費・家賃の上昇
・最低賃金の引き上げ
・診療報酬改定の抑制傾向
・患者の価値観・通院行動の変化
・DX・AI・医療制度改革の加速
これらの変化はすべて、「同じ経営では立ち行かなくなる」ことを意味しています。
しかし、実際に経営の仕組みや医院の方向性を変えられる院長は全体の2割程度。
多くの院長は変化の必要性を理解していても、行動には移せていません。
② 行動できない理由 ― 院長とスタッフの「タイプの違い」
私は多くの医院のチーム分析を行ってきましたが、行動特性の観点から見ると、歯科医院には以下のような傾向があります。
| タイプ | 特徴 | 歯科医院での傾向 | 
| アナライザータイプ | 慎重・計画的・リスク回避志向 | 院長に多い | 
| サポータータイプ | 協調性が高く、安定を好む | スタッフに多い | 
| プロモータータイプ | 新しいことに挑戦し、行動が早い | ごく少数 | 
| コントローラータイプ | 決断力と実行力に優れる | ごく一部の院長 | 
つまり、院長もスタッフも「変化に慎重なタイプ」が多い業界なのです。
その結果、医院の文化として次のような現象が起こります。
・変化よりも「現状維持」を優先する
・新しい取り組みへの抵抗感が強い
・「失敗しないこと」が評価される
これでは、変化に対応できる組織文化は育ちません。
③ 「変化を止めるリーダー」が、医院の成長を止める
歯科医院の成長が止まる理由は、「環境が悪い」からではありません。
「院長が変化の旗を掲げなくなる」からです。
特に経営環境が厳しくなるこれからの時代において、
「今までと同じようにやっていてはダメだ」
と最初に言葉にできるのは、院長だけです。
しかし、行動できる院長は2割。
つまり、8割の医院は「気づいていても変われない」という現実に直面しています。
結果として、
・利益が圧迫される
・採用が難しくなる
・スタッフが疲弊する
・医療品質が落ちる
この悪循環が地域医療全体に波及していきます。
“変化できない医院”が増えることは、“地域医療のピンチ”に直結するのです。
④ 「変化できる医院」になるための3つの条件
(1)「変化をポジティブに語る」院長がいる
スタッフは「変化=不安」と感じやすいもの。
だからこそ、院長が「変化=チャンス」と語る必要があります。
「今のやり方を続けるより、より良くするために変えてみよう」
この言葉が、医院文化を変える第一歩です。
(2)「試して、修正する文化」を持つ
変化とは、完璧な計画を立ててから動くことではありません。
「まずやってみて、修正していく」ことです。
PDCAよりもOODA(Observe, Orient, Decide, Act)のように、素早く仮説を立て、試し、学ぶ文化が必要です。
(3)「変化を支えるチーム構成」を整える
アナライザー院長とサポータースタッフの組み合わせでは、慎重すぎて動きが遅くなりがちです。
だからこそ、プロモーター気質の人材をチームに加える。
新しいことにワクワクし、他のスタッフを巻き込める人材がいることで、変化は自然と文化になります。
⑤先生の医院は如何でしょうか?
1.「今のままでは危ない」と分かっていて、何を変えましたか?
2.スタッフは「変化する医院で働くこと」を誇りに思っていますか?
3.院長が変化にワクワクしている姿を、スタッフは見ていますか?
まとめ
安定を求めると、医院は不安定になる。
変化を楽しめる医院だけが、安定を手に入れる。
経営環境が厳しくなる今こそ、変化を“脅威”ではなく“チャンス”として捉える必要があります。
変化する勇気が、医院の未来を守ります。
変化を恐れる文化が、医院の未来を奪います。
そして
院長が変化の象徴になることでしか、医院は変わらない。
そう思うのです。
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