全国的な物価上昇に加え、特に東京などの大都市では人件費・家賃・光熱費といった経営コストが急速に上昇しています。
一方で診療報酬は全国一律。つまり、都市部の医院ほどコストと報酬のギャップが拡大し、保険診療が成立しにくくなるリスクが高まっているのです。
では、この問題について国ではどんな議論が行われているのでしょうか。そして、院長はどんな戦略を持つべきなのでしょうか。
現在の国の議論状況 物価高騰・賃金上昇を踏まえた対応
厚労省は診療報酬改定の基本方針に「物価高騰や賃金上昇を踏まえた評価」を明記しています。
ただし、その対応は全国一律の加算(ベースアップ評価料など)が中心で、都市部限定の補填は議論されていません。
財務省が地域別診療報酬の導入を主張
財務省の資料では「地域偏在是正」のために、地域別単価の導入が検討されており、
・医療機関が多い都市部 → 単価抑制(引き下げ)
・医療資源が不足する過疎地 → 単価引き上げ
という方向が示唆されています。
つまり、財務省が優位に立つ状況が生まれれば、将来的には都市部医院の報酬が下げられるリスクすらある(現状では可能性は低い?)。
その為に保険医療機関の経営状態を把握できる仕組みの構築も進んでいるのです。
院長が取るべき戦略
結論から言えば、国の補填をあてにする時代は終わると考えておくべきです。
大都市部の歯科医院が生き残るためには、以下の方向性が欠かせません。
1. 「診断・治療計画立案・治療提案」の強化
保険点数の引き上げを待つのではなく、
・専門的治療技術の更なる強化
・全顎的な治療提案ができる仕組み作り
・カウンセリング、コンサルテーションシステム強化
・治療計画完了率の向上
・歯科衛生士枠への移行の強化(C管理、P管理、口腔機能管理、生活習慣病管理)
など、治療や説明の品質を高めることが患者の納得に繋がり、結果的に治療単価の向上に繋がる様に取り組むのです。
保険ではカバーできない部分で患者が「ここで治療を受けたい」と思う理由を作る。
例えば、カウンセリング・説明の質、デジタル診療機器、審美的予防プログラムなど。
売上(新患)ばかりに目がいきがちですが、自転車操業になっていませんか?
患者が離脱せずに通い続けてくれることで患者の健康も守れますし医院の収益性も増すということを忘れていないでしょうか?
「新患獲得コスト」を「患者維持コスト」に振り替えることで定期管理型に近づき、長期管理型への道が開きます。
「かかりつけ患者」を増やす戦略こそが患者を守り医院の未来を輝かせるのです。
3. 業務の見直しによる効率化と医療DXへの判断
医療DXが進んでいますが、これは諸刃の刃です。
なぜなら「治療のDX化」と「診療システムのDX化」には莫大な導入コストとランニングコストがかかり、どの規模の医院が取組んでもメリットがある訳ではないからです。
そこを間違うと大怪我をします。
どちらかと言えば、膨らみ続け複雑になっている治療システムや管理実務、オペレーションなどをシンプルにし、今よりも少人数で熟せる様にした方が経営改善効果は高い。
「本当にそれだけの手間と時間と人とお金をかけなければ今と同じ品質を保てないのか?」とご自分に質問してみてください。
医療DXにお金をかけられない院長であっても取り組める業務の効率化はいくらでもあるのです。
大都市の歯科医院は、全国一律の診療報酬に加え、急速に上昇する人件費・家賃・光熱費という「高コスト構造」に直面しています。
医療機関に出来る対策は「コストを下げる」「数を診る」「治療単価を上げる」などでしょうか?
しかし、例えば「数を診る=品質が下る=患者の離脱が増えるし単価が下がる」に繋がり易い。だから先生の医院で有効な対策を見つけ出す必要があるのです。
全国の歯科医院は「院長が経営のアクセルを踏んでもガタつかない医院」と「院長が経営のアクセルを踏むとガタつき退職者が出る医院」に分かれます。
私がいつもブログで書いています様に、退職者が少なく日常的に成長負荷がかかりチームメンバーが鍛えられている医院はこんな時に強い。
院長が経営のアクセルを踏んでも「数を診る=品質が下らない=定着する患者が増える=患者単価も上がり売上も増える」という医院が実際にあるのです。
大都市部では自費重視の院長が増えるでしょうが、それも戦略的に正しいとは限らない。
今後、国民所得の二極化は更に強まりますし中所得層以下では自費治療に投資できる患者も限られるでしょう。だからといって富裕層と付き合える院長は限定的だからです。
そして自費治療にかかるコストもDX化によって上昇しますが、それを賄える治療価格設定をし、値上げをし、それでも患者に支持されるブランドを作れる院長も限定的。
そんなレッドオーシャンで活路を見いだせる根拠がなければ逆に経営コストだけを膨らませることになるのです。
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