今日は「脱常識経営論」の最終回です。
開業して数年経つと、
「〇〇医院の取り組みがすごいらしい」
「今は〇〇を導入しないと時代に遅れる」
という情報が次々と耳に入ってきます。
そして、多くの院長が“成功医院”の事例を参考にしようとします。
しかし、ここに経営の落とし穴があります。
他院の成功事例は「その医院にとっての最適解」であって、先生の医院にとっての“正解”とは限らない。
今日は、「真似る経営」がなぜ医院を弱くするのか、
そして、自院の“正解”を設計するための思考法をお伝えします。
① 「成功医院の再現」はできない理由
成功している医院には、
その医院の理念・地域・人材・文化・タイミングが重なっています。
つまり、「その医院だからこそ機能した成功要因」なのです。
たとえば
・SNS発信を充実させて患者が増えた医院
・評判の良い人材育成システムと人事評価制度で生産性が向上した医院
・新たな治療コンサルの仕組みを導入して自費売上が増えた医院
どれも素晴らしい事例ですが、
それをそのまま真似しても、結果が出ないことが多い。
なぜなら、同じ「戦術」でも、前提となる「戦略」が違うからです。
戦略とは、「誰に、どんな価値を、どう届けるか」という全体設計。
そこが違えば、どんな成功ノウハウも機能しません。
② 「他人の成功」を追うほど、“自分の軸”が失われる
多くの院長が疲弊する理由は、
“トレンドに反応し続ける経営”をしているからです。
・「患者が減ったらSNSを始めよう」
・「スタッフが辞めたら評価制度を入れよう」
・「隣の医院が導入したからデジタル化しよう」
こうして、外部刺激に反応するうちに、
医院の経営は「誰のためのものか」「何を目指すのか」があいまいになっていきます。
結果として、
☑チームが方向性を見失う
☑ スタッフが変化疲れを起こす
☑ 院長自身も「何が正しいのか」分からなくなる
これは、“理念を中心に据えた経営”ができていないサインです。
③ 自院の“正解”を設計する3つのステップ
では、どうすれば他院の真似ではなく、自院の「正解」を設計できるのか。
そのためには、次の3つのステップが不可欠です。
ステップ①:「理念」を起点にする
すべての判断の起点は“理念”です。
「何のためにこの医院を運営しているのか?」
「この地域に、どんな価値を届けたいのか?」
ここを定義しないまま改善を重ねても、どこかで破綻します。
理念は“飾る言葉”ではなく、“意思決定のフィルター”です。
ステップ②:「ビジョン」を具体化する
理念を軸に、3年後・5年後の医院像を明確にします。
・どんな患者に支持されたいか?
・どんなスタッフと働きたいか?
・地域においてどんな存在でありたいか?
・患者が先生の医院しか駄目だと思う理由は何か?
・3年後、5年後にどんな医院像が達成できているのか?
これを「言語化」できた時点で、ブレない経営が始まります。
ステップ③:「戦略・戦術」に落とし込む
ビジョンが描けたら、そこに向かうための
・経営戦略(方向性)
・組織戦略(人づくり)
・診療戦略(価値づくり)
を立て、経営計画からアクションプランに落とし込みます。
そして、日々何に取り組むのかを決めて実行するのです。
④ 成功医院に共通するのは「自分軸」があること
私が見てきた“伸び続ける医院”の共通点は、他院を見て焦らないこと。
成功する院長はトレンドよりも「自院の本質」に集中してブレない。
「どんなに時代が変わっても、この価値だけは譲れない」
その軸を明確に持っているからこそ、新しい取り組みをしても“自院らしさ”がブレないのです。
モデリングは自院の本質を強化できるものだけを選んで落とし込む。
そして、その仕組みの導入にチャレンジする価値をチームに伝え、日常の中で行動化できている。
理念が院長だけの言葉ではなく、
チーム全員の行動基準になっているのです。
⑤ 先生が目指される“医院像”と”現状”はブレていませんか?
1.目指す医院像を3年後・5年後で言語化しているか?
2.新しい取り組みを始めるとき、「理念との整合性」を確認しているか?
3.他院の事例を取り入れる際に、“自院の前提”を分析しているか?
4.スタッフが「うちの医院らしさ」を言葉で説明できるか?
5.「今のやり方は、本当に理念を形にしているか?」と定期的に問い直しているか?
まとめ
経営に「正解のテンプレート」はありません。
あるのは、それぞれの医院にとっての“最適解”だけです。
真似る経営は「他人のストーリー」を生きること。
設計する経営は「自分のストーリー」を生きること。
成功医院を「うらやむ」段階から、
「学び、自院の文脈で再設計する」段階へ。
それが、変化の時代を生き抜く院長の経営力なのです。
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