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◆歯科医院経営ブログ

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キャンセル率5%を切る歯科医院は偶然ではない ~数字の裏側にある、医院設計と患者心理の真実~  [2025年10月24日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
しかし、答えは書きません。院長によって経営状況は違いますのでスタッフと一緒に考えて頂きたいからです。
もちろん、経営のサポートのご依頼は喜んでお引き受け致します。
では、本日のブログもご自分の医院の状況に照らして考えてみてくださいね。
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今日からは「数字の裏側にある経営の真実」シリーズです。

 

「うちのキャンセル率は9%くらいです」

「歯科衛生士枠だけ見れば67%だから、悪くはないですよね」

多くの院長がこう話されます。

たしかに一般的な歯科医院では、

・全体のキャンセル率:7~10

・治療枠(Dr枠):10%前後

・歯科衛生士枠(DH枠):57

が平均的です。

しかし私は、こう考えています。

安定経営を実現する医院は、キャンセル率5%を切ってくる。

なぜなら、キャンセル率が5%以下の医院には、「単にキャンセルが少ない」のではなく、医院の在り方そのものが異なるからです。

 

キャンセル率は「患者心理の鏡」である

キャンセル率とは、単なる数字ではありません。

患者が医院にどれだけ信頼と納得を感じているかを映す鏡です。

患者が予約を守るのは、「言われたから」ではなく、「この医院で治療を続けたい」と思っているから。

つまり、

キャンセル率は患者の内発的動機の指標なのです。

治療の優先度を上げる心理的要因には、

・治療を優先することの意味を理解している(納得度)

・担当者への信頼がある(関係性)

・通院の習慣が形成されている(行動設計)

の3つがあります。

この3つが揃っている医院ほど、「どうしても行きたい場所」として選ばれるのです。

 

② 7%で満足してはいけない理由

「全体で7%なら上出来」と言われます。

確かに統計的には悪くない数字ですが、ここに設計の壁があります。

7%ラインの医院は、管理でキャンセルを減らしている。

つまり、リマインド・連絡・キャンセル時の再予約など、外発的な対策によって支えられているのです。

一方、5%を切る医院は、患者の行動が自発的に安定している。

つまり、患者が「来たい」と思って行動している。

ここが決定的な違いです。

前者は管理型経営、後者は信頼型経営

数字を安定させたいなら、後者を目指すべきです。

 

キャンセル率5%医院の設計思想

5%を切る医院には、共通の設計があります。

それは「人」と「仕組み」が噛み合っていること。

 

1】歯科衛生士担当制が機能している

担当者との関係性が強いほど、患者は約束を守ります。

ただし担当制があることより、担当が患者を覚えていることが重要。

担当制なのに担当患者が来院しなくなっていることに気づかないのはプロとして失格です。

来院時の小さな声かけ、前回の話題の記憶、施術時間の演出、次回来院する動機づけ。この4つが揃う事が信頼を深めることになります。

 

2】予約時の言葉が「行動設計」になっている

行動経済学で言えば、これはナッジの活用です。

たとえば、

「次の治療ですが、一週間後のご都合はいかがですか?」

ではなく、

「次の治療は一週間後程度で行う必要があります。〇日〇時と〇日〇時が空いていますが、どちらのご都合がよろしいでしょうか?」

選択肢ではなく前提として提示する。

こうした言葉の設計が行動を自然に導きます。

 

3】キャンセルが「発生した時の流れ」が明確

キャンセル時の対応の属人化を防ぎ、

・キャンセル電話にどう対応するのか

・キャンセル患者(次回未定)にどう対応するのか

・キャンセル電話の内容をどう診療チームに共有するのか

・キャンセル患者の治療へのモチベーションをどう高めるのか

他にも

・キャンセルで空いた枠をどう埋めるのか

を全員が共通認識で実行できる体制の構築が必要です。

属人的な対応が減るほど、再来率が上がります。

 

5%を切る医院は、実は患者を選んでいる

誤解を恐れずに言えば、

患者をすべて受け入れる医院はキャンセル率を下げられません。

誰でもウェルカムは、誰にも深く届かない

予約を守らない層を無理に抱えるより、「自分の健康に責任を持つ患者」を育てる方が医院の生産性は上がります。

5%を切る医院は、「治療を大切にする人」との関係を濃くする。

予約が埋まっている時、かかりつけ患者以外の急性症状の患者の治療を受入れ、かかりつけ患者を待たせたりしません。

この選択と集中が結果的に医院全体の信頼と継続率を上げるのです。

 

ある医院で院長が売上を上げようと受付スタッフに「急患は断らずに必ず予約を確定させるように」と指示しました。すると予約枠の稼働率は上がりましたが治療中断が増え、ネットにマイナスの口コミを書かれたのです。

 

院長への問い:先生の医院の設計はどちらですか?

Aタイプ

□キャンセル率を「数字」で把握し患者にキャンセルしない様に働きかける

□キャンセル〇回で予約診療を断る

□来院履歴がなくても急患は断らない

Bタイプ

□全額的に診断して説明するので、主訴のみダツリのみ治療は受けない

□キャンセルや治療中断の不利益について患者の立場に立って伝える

□「キャンセル・治療中断=患者の不利益」という視点がチームに定着

□かかりつけ患者の予約時間に影響する急患は受けない

 

まとめ

キャンセル率は「現場の管理能力」ではなく、「医院の信頼構造」を示す指標です。

7~10%で満足しているうちは、外発的対策の域を出ない。

5%を切るには、患者心理と医院設計の両輪で変えていく必要があります。

予約を守る仕組みは作るものではなく、信頼の積み重ねの結果として現れる。

キャンセル率5%以下

それは数字の目標ではなく、患者の健康を守るという医院文化の完成度なのです。

 

次回は第2回:

「スタッフ一人あたり売上」の落とし穴人を数字で追うと医院が壊れるをお届けします。

生産性指標を人材価値に変える視点で解説します。

 

★こちらもご覧ください。
 
 
 
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