近年、歯科技工士の高齢化・減少が進み、院外に「一人の職人が責任を持って仕上げる自費技工」を依頼できる先が少なくなっています。大手ラボは分業化が進み、クオリティより効率性が重視される傾向にあり、医院が理想とする精密な補綴が依頼しづらくなっています。
自費技工は内製化が有利になる理由
インプラントや審美補綴などは、技工士と歯科医師が緊密に連携するほど成果に直結します。そのため、院内に自費専任の技工士を抱え、CAD/CAMや口腔内スキャナーを活用して自費補綴を内製化する医院が増えています。これにより以下のメリットが得られます。
・症例ごとのクオリティコントロールが可能
・納期の安定とスピードアップ(納期を守る為に残業する傾向があり、改善が必要)
・歯科医師と技工士、技工士と患者が直接ディスカッションできる体制
保険技工は外注のメリットが大きい
一方、保険診療の補綴物(CAD/CAM冠、硬質レジン冠、義歯など)は標準化が進み、大量処理に向いています。大手ラボ側はスキャナーや3Dプリンターを駆使して効率化を図っているため、医院が内製するよりも低コストで安定した品質を提供できます。結果として、保険は外注に任せる方が合理的です。
院長が今から準備すべき4つの戦略
1.内製化の範囲を明確にする
セラミック、インプラント、義歯など、自院でどこまで自費技工を担うかを決める。
2.院内技工士のキャリアと待遇を整える
医院の中核人材として教育・研修を充実させ、長期的に活躍できる場を作る。
3.外注ラボとの長期的な関係を構築する
複数のラボとパートナーシップを持ち、保険技工の安定供給体制を確保する。
4.自費をお願いしていたラボとの信頼関係継続
これからの歯科技工は「自費=内製+外注、保険=外注」という役割分担が主流になっていくでしょう。
院長に求められるのは、内製化する分野を見極め、技工士を医院経営の戦力として育てること。そして、外注ラボとは長期的な信頼関係を築き、トータルで保険技工と自費技工の安定供給を確保することです。
医院の技工戦略とは別に歯科技工士が減少していく現状を解決する必要があるのですが、国の審議会などの資料を読むかぎりでは根本的な解決策は見つかっていないようです。
未来の医院経営において、歯科界にとって、技工問題は重要テーマになってきています。
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