はじめに:モデリング医院と“同じ道”を選んでいませんか?
開業を検討する際、「あの成功している医院のようになりたい」と思い、立地条件や内装、診療メニューをモデリングすることはよくあることです。
しかし、それが必ずしも自院の成功を約束するとは限りません。
実際に開業してみたら、「想定していた患者層が来ない」「思ったほど自費が出ない」「予約の埋まり方にムラが多い」といった声が多く聞かれます。
その根本原因の多くは、収益モデルのミスマッチにあります。
なぜ“モデリング通り”ではうまくいかないのか?
歯科医院の経営は「どんな治療を、誰に、どんな価値で、どう提供するか」で成り立っています。
つまり、収益モデルは「医院と地域」の掛け算で決まるものです。
モデルにした数件の医院と、先生の医院との間には、見落としがちな次のような違いがあります。
・立地環境の違い(駅前/郊外/ロードサイド、住民属性、通勤・通学導線)
・地域ニーズの違い(高齢者中心か?子育て世代が多いか?生産年齢人口はどれ位いるか?)
・先生ご自身の技術・強みの違い(補綴が得意/矯正に注力/重症化予防特化など)
・スタッフ構成や成長度の違い
・マーケティング手法やブランド力の違い
・競合医院の数と診療内容の違い
このように、モデリング医院と“経営資源”や“地域特性”が異なる中で、同じ収益モデルを採用しても機能しないのは当然とも言えるのです。
想定外の患者層に支持される医院になることもある
ある院長は、開業当初は若年層ターゲットでホワイトニングと審美中心の収益モデルを設計しました。
しかし、実際に来院したのは高齢者と中高年層ばかり。
理由は、周囲に大型分譲マンションが建設され、子育て世帯よりもシニア夫婦の流入が多かったためです。
若年層も住んではいるのですが、仕事や学校で都市部に出てしまう為、平日の昼に来院する患者は予想外に少なかったのです。
結果として、歯周病治療や義歯などを強化し、5年で初期のコンセプトから大きく方向転換することで軌道に乗りました。
このように、「自分が診たい患者」ではなく「地域が求める治療ニーズ」に柔軟に応える医院は、長く支持される存在になっていきます。
収益モデルの見直しが医院経営の“再起動”になる
収益モデルとは、「どこで利益を生み出すのか」という経営戦略の中核です。
例えば以下のような分類が可能です:
1)自費治療収益型:審美・矯正・インプラント・ホワイトニングなど
2)重症化予防・定期管理型:SPT、P重防、口腔機能管理、MFT、矯正(または義歯)、ホワイトニング、OHI等の継続収益
3)訪問・連携型:高齢者対応、施設連携。地域包括ケアシステムの連携の輪の中に足場を築く
4)保険診療効率型:ユニット高回転率と少ないスタッフによる効率化で措置法差額を最大化させる
5)1.5次多機能型歯科医院:総合歯科医院としての足場を築き、地域の多職種や行政にも頼られる存在になる
6)自由診療歯科医院:患者の悩みに徹底的に寄り添い、お悩みの解決に取り組む
7)専門歯科医院:矯正専門医など、専門技術によってブランドを築く
自院の強み・地域性・マーケティングとの整合性を見直し、今の収益モデルが本当に合っているのか?を一度問い直すことが、経営の建て直しに繋がります。
おわりに:医院の成長は「収益モデル×地域ニーズ」で決まる
開業時に描いた“理想像”と、実際に患者に支持された“医院像”にズレがあるのは珍しくありません。
むしろ、そのズレに気づき、経営を再設計できるかどうかが医院の未来を左右します。
人間には「手間と時間をかけて築いたものを宝物のように感じ捨てられない」という認知バイアス(サンクコストの誤謬)がありますが、それに陥る人はアドバイスを受けても結局やり方を変えることが出来ないでいるのです。
変化なしに現状の問題を解決し道を切り拓くことは出来ない。変化には心理ストレスがつきものですが、そのストレスを乗越えて前進した院長だけがこれから激動していく2040年までを乗越えていけるのです。
先生の医院では、今の収益モデルは「地域ニーズ」「医院の強み」「診療体制」に合っていますか?
悩みながらも昨日と同じ今日を続けていませんか?
もしどこかに違和感があるとしたら、それは見直しのサインかもしれません。
“正しいやり方”に変えれば、医院経営は驚くほどスムーズに回り始めます。
今こそ、「自院に合った収益モデルとは何か?」を明確にしませんか?
経営相談も承っていますので、必要であればお気軽にご相談ください。