はじめに:無意識の「話しかけづらさ」が医院の信頼を損なっていないか?
Googleの口コミで、以下のようなコメントを目にしたことはありませんか?
・「受付が事務的で無表情。話しかけづらい雰囲気」
・「診療中、スタッフが常に忙しそうで質問しづらい」
・「先生が患者の前でスタッフに怒っていた」「スタッフの私語が多すぎる」
これらはすべて、患者が抱いた「話しかけづらさ」=心理的バリアのサインです。
どれほど高い技術や丁寧な説明を提供していても、第一印象で壁を感じさせてしまうと、リピート率や紹介率にも影響が出るのが実情です。
今回は、“忙しそう”に見えない医院づくり、話しかけやすい空気感の作り方について、すぐに取り組める工夫を5つご紹介します。
1. 「忙しそう」「質問しづらい」と感じさせる3つの背景
まず、“話しかけづらさ”を生む代表的な要因を整理してみましょう。
・無言・無表情の対応(患者を迎えても目を合わせない、笑顔がない)
・診療室での無音状態(声かけが少なく、不安が増幅される)
・受付での事務優先行動(患者が来てもカルテや電話対応を優先)
これらはすべて、スタッフ側が「悪気なく」「無意識で」やっていることが多い点に注意が必要。
特に、一度こちらの方を見て目が合ったのに、患者対応をせずにその後また下を向いて自分の作業を続けるのは最悪です。
だからこそ、組織として仕組みにして改善することが大切です。
先生の医院では、患者が「何でも聞ける」と感じる空気づくりができているでしょうか?
2. 受付とチェアサイドでの“声かけルール”を整える
「こんにちは、〇〇さん。今日はお変わりないですか?」「今日は治療の後、お急ぎのご用事はありませんか?」
「ご案内まで数分かかりますが、どうぞお掛けになってお待ちくださいね」
このようなシンプルな声かけの積み重ねが、話しかけやすい空気を作ります。
受付やチェアサイドでの対応は、医院の印象を左右する最初の接点。誰が対応しても温かさが伝わるように、以下のような“声かけルール”のマニュアル化をおすすめします。
・予約患者には、必ず名前を呼んで目を見て笑顔であいさつ+一言
・予約時間が押しているときは、説明+お詫びを伝える
・チェアへ誘導する際も「〇番チェアまでよろしくお願いします」の一言を添え、患者の歩くスピードに合わせる
・足腰の悪い患者には一番手前のチェアを空けておく
・エプロン掛けの時に、今日の治療にかかる時間と治療内容を説明する、担当医のスターマーケティングをする
こうしたルールをスタッフ全体で共有・習慣化することで、対応にばらつきが出にくくなります。
3. 第一印象は「一瞬」で決まる。感情の記憶を大切に
心理学では、人の第一印象は一瞬で決まると言われています。
この数秒間に見られているのは、以下のような非言語的要素です。
・表情(“目”に注目される)
・姿勢(姿勢がピンと伸びているか)
・服装、靴、髪、匂いなどの清潔感、相手の緊張感
・動作の余裕(バタバタせず、落ち着いているか)
・声の抑揚、声の高さ、話す速さ、語尾の処理(高すぎず、やわらかい声色)
記憶に残るのは「言われた内容」よりも「どう感じたか」という感情の記憶です。
患者の心に「安心できた」「ここは優しい雰囲気だった」と残せれば、継続通院にもつながります。
例えば、「それは大変でしたね」という声掛けも、表現の仕方(特に視覚情報)で患者がどう感じるのかが大きく変わるのです。
4. ユニット配分と動線設計で“余裕ある雰囲気”を演出
実は、医院のレイアウトや動線設計が、患者の印象に大きな影響を与えることがあります。
・スタッフが常に駆け足で移動している
・予約が詰まりすぎてスタッフの表情に余裕がないし早口で説明
・患者が「待たされている理由」が見えない
こうした状態では、“忙しそう”という印象を強めてしまいます。
対策としては、
・バタバタした時間帯の予約の取り方を見直す
・治療時間30分ならドクターが使えるのは〇分と決める
・フロアリーダーを育てて診療全体をコントロールする
これにより、診療のスムーズさと安心感の両立が可能になります。
ベテランスタッフは予約表と担当医、担当スタッフを見て、「今日は〇〇先生のチームの〇時位の治療が遅れそうだね」「〇時から〇〇さん(ベテランスタッフ)に入ってもらって急患は〇〇先生にお願いする?」と朝礼前後に話し合っています。つまり、見る人が見れば診療前から発生する遅れが予測でき、事前に対策も打てるはずなのです。
5. 歯科衛生士や治療コーディネーターによる“中間対応”を強化する
院長や主担当者が忙しいタイミングでも、
患者の疑問や不安に答える“中間の窓口”があると、医院全体の安心感がグッと高まります。
ここで重要な役割を果たすのが、歯科衛生士や治療コーディネーターです。
・初診時や自費治療時の不安や疑問をヒアリング
・診療の補足説明やモチベーションフォロー
・治療の流れ・期間・費用の見える化
こうしたサポートがあることで、患者は「自分のことをちゃんと見てくれている」と感じ、話しやすくなります。
また、院長だけに負担が集中せず、スタッフが主役になる組織づくりにもつながります。
おわりに:印象の改善は“対応”だけでなく、“設計”でつくる
患者からの「話しかけづらい」「忙しそう」という印象は、仕組みで予防・改善が可能です。
・誰が対応しても同じ安心感を与えるルール化
・患者の“感情”にフォーカスした動線設計
・中間役の育成と運用によるストレス分散
これらを通じて、医院全体の空気感は劇的に変わります。
先生の医院では、スタッフや空間が“話しかけやすさ”を提供できていますか?
もし、患者の印象や口コミ改善にお悩みであれば、医院に合った“仕組みとしての患者対応改善”を私と一緒に設計していきましょう。