診療報酬改定のたびに「どの加算が増えたか」「新設された点数はどれか」と注目する歯科医院の院長は少なくありません。
しかし、これは痛くなった歯だけを治療する対症療法と同じで、全体の構造変化を見逃してしまうリスクがあります。
実際には、医療制度改革は点数個別ではなく“報酬体系”の全体構造が変化しています。それに気づかず、目先の点数加算ばかりを追ってしまうと、医院経営の方向性そのものを見誤ることになりかねません。
今回は、令和8年診療報酬改定に向けて、歯科医院が備えるべき3つの戦略をご紹介します。
1. 診療報酬審議会の報告を読み解く
現在の審議会資料から見える大きな方針は以下の通りです
・電子カルテや画像の保存義務化、経営状況報告が進み、経営も診療も丸裸にされていく
・在宅歯科医療における連携、歯科口腔機能管理、有病者治療における連携など、包括的な医療、多職種連携に重点が置かれる
・エビデンスを基にした投資、アウトカム評価に移行していく
・レセプト審査のAI化による透明性と効率化、地域差解消(地域特性は考慮)が進展
これらを前提に、診療報酬体系は「患者数×点数」から「包括管理×継続ケア」への転換が進むと考えられます。
「出来高払い」から「包括払い」への移行が確実に進むのです。
2. 電子カルテとDXで制度対応と効率化を両立
電子カルテやクラウド型レセコンを導入する歯科医院は年々増加しています。これは制度対応だけでなく、業務効率化やスタッフ負担軽減にもつながります。
・診療記録、検査データ、口腔内画像の電子保存で審査対策に備える
・オンライン問診やチャット予約による受付業務の効率化(自動化へのステップ)
・データ活用により患者継続率やユニット稼働率の分析が可能に
今後、標準電子カルテ導入が事実上義務化される可能性も見据え、DX化を早期に進めることが医院の競争力を高めます。ただし、DXの導入コストとランニングコストを賄える収益をあげられる歯科医院は限られると私は見ています。
3. コスト構造改革と自費診療の見直し
保険診療の収益が頭打ちになる中、自費診療の位置づけがますます重要になっています。
・患者本位の提案スキルを高め、自費率を適正にアップ
・選択と集中を進め、収益性が高い治療コンテンツにシフトすることで利益率を改善
・歯周病基本治療からSPTやP重防へ移行し、1年後も重症化予防で継続来院する患者の割合を増やす
コストと価値を両立できる医院構造に変革することで、診療報酬改定に左右されない経営基盤を作ることができます。
まとめ:改定対応は“点”ではなく“構造”を読む
1.診療報酬改定は個別加算ではなく“制度全体の構造変化”を理解して準備することが重要
2.電子カルテ・DX化で制度対応と業務効率化を両立する(ただし、医院を選ぶ)
3.自費診療とコスト構造を見直し、利益率の高い医院体質へと進化する
先生の医院では、次の診療報酬改定に向けた戦略的準備が進んでいますか?
まずは、参議院選挙の行方に注目です。結果によっては医療費抑制政策が更に加速するからです。
今後の医療制度改革の流れを読みながら、国が設定するハードルを超えられる医院を作りたいとお考えならご相談ください。
国の医療政策の流れに対応しながら、自院の強みを活かした成長戦略を一緒に描きましょう。