「歯科衛生士の枠を詰めれば、生産性は上がる」は本当か?
「衛生士のアポを30分にすれば、もっと多くの患者を診られるのでは?」
こうした声は、歯科医院の現場でよく聞かれます。
しかし、本当に【施術時間を短くすれば生産性は上がる】のでしょうか?
結論から言えば、それは誤解です。
予約枠を短縮すれば見かけの回転数は増えますが、【治療の質が下がり、歯科衛生士のスキルも育たなくなる】可能性があります。
生産性とは単に「件数を増やすこと」ではなく、【時間あたりに生み出せる価値=診療の成果×教育の質】であるべきです。
この視点に立つことで、アポイント設計の本質が見えてきます。
歯科衛生士のSPTの基本枠は「45分」、ここがスタートライン
歯科衛生士が1日で診る患者数を考える上で、基準となるのが【45分枠】です。
これは、多くの歯周病治療やSPTにおいて、必要十分な施術・記録・口腔指導を行える時間とされています。
ただし、この45分間をどう使っているかによって、大きく差が出ます。
・施術だけで手一杯になり、OHIやカウンセリングができない
・記録や準備に追われて、患者との会話が減ってしまう
このような状態が続けば、歯科衛生士は「処置をこなす作業者」になってしまいます。
逆に、【スキルの高い歯科衛生士は、同じ45分でも施術+指導+信頼関係構築】までを自然にこなしています。
→《注目》成長を前提とした45分設計こそが、生産性を高める第一歩です。
時間の使い方を変える:「患者の状態別」に枠を調整する設計
患者の状態に合わせた時間設計を行うことで、衛生士1人あたりが診られる患者数は大きく変わってきます。
【例:歯周病のGrade・Stageに応じた時間配分】
患者の状態 | 施術枠 | 内容 |
---|---|---|
Stage 0〜I・安定期 | 30分~ | 施術中心、OHI・生活習慣の確認 |
Stage II〜III・活動期 | 45分 | SPT施術・再評価・個別指導 |
重症・新患・初期治療 | 60分 | 精密検査・SC・カウンセリング含む |
このようにアポイントの「戦略的な組み合わせ」により、衛生士が1日7〜10名を診る体制も現実的になります。
重要なのは、【長い時間=丁寧、短い時間=雑】ではないということです。
→《ポイント》限られた時間で高いアウトカムを出す力こそが、生産性の本質であり、成長の証です。
→経験年数の浅い歯科衛生士の場合は段階的に適用します。技術を磨かなければスピードアップもできません。
歯科衛生士に“成長の視点”を持たせていますか?
近年の歯科衛生士は、う蝕管理・咬合育成・生活習慣指導など、診療の幅が広がっています。
それに伴い、【多くの患者に高品質な予防・教育を届ける使命】が求められています。
だからこそ、「1日に何人診たか」だけではなく、
・短い時間でも伝えるべきことを優先できる判断力
・施術の質を保ちつつ、患者ごとに対応を変えられる柔軟性
・カルテ記載・情報共有の効率化スキル
といった【“時間の密度”を高める力】を育てていく必要があります。
→《メッセージ》予約枠は“管理の道具”であると同時に、“人を育てる器”でもあります。
最後に:生産性とは「患者数」ではなく「提供価値」
「1日何人診ているか」はあくまで結果であり、
大切なのは【その時間にどれだけの価値を提供できたか】です。
歯科衛生士のアポイント設計は、ただの業務効率ではなく、医院全体の理念と教育方針が現れる場所でもあります。
【先生の医院では、歯科衛生士の時間設計が“人を育てる”構造になっていますか?
時間を短くするだけでなく、成果を高める設計ができていますか?】
ご希望があれば、歯科衛生士のモチベーションを高めるスキルアップシステムの構築支援もご提供可能です。
医院全体の生産性を高めるために、今できる第一歩からはじめましょう。