国家資格者は“職場を選べる時代”にいる
現在の歯科業界において、歯科医師・歯科衛生士は「売り手市場」にあります。一昔前とは異なり、今ではSNSやクチコミ、専門学校のネットワークを通じて情報が拡散され、働く前から医院の“実態”が見えているのです。
とくに歯科衛生士は、学校の実習で多くの医院を回ることから、現場の雰囲気やスタッフの人間関係、教育体制を肌で感じています。そしてその情報は、次の世代の学生や同級生、就職希望者に確実に共有されています。
つまり、「教育もなく、雰囲気も悪く、離職が多い医院」は、自然と“選ばれない医院”になっていくということです。逆にいえば、“ここで働きたい”と思える採用フローと、働き続けたくなる定着の仕組みをつくれば、優秀な人材に選ばれる医院になれるのです。
採用プロセスの仕組み化が「入口の質」を決める
まず取り組むべきは、「面接・採用フロー」の見直しと仕組み化です。現場対応の延長線でその場しのぎの面接を行っていては、ミスマッチが生まれやすく、採用後の早期離職につながりやすくなります。
具体的には以下の流れを標準化することが効果的です:
1.求人票・募集要項の明確化(医院理念・教育体制・給与・休日を正確に記載→定期的な見直し)
2.事前エントリー時に“医院理解資料”を送付(パンフレットや理念動画、教育カリキュラムなど)
3.一次面接では医院の方向性・人材ビジョンを説明し、医院の価値観に共感できるのかを確認
4.見学・体験の受け入れをルール化し、実際の業務・人間関係を見てもらう
5.最終面談で成長支援やキャリアパスを提示(キャリアマップの提示、3年後の姿の共有)
このプロセスを通じて「医院が求める人材像」と「応募者の価値観」をすり合わせることができ、入社後のズレを減らすことができます。
定着率を上げる“仕組み”にこそ投資を
採用だけでは医院は変わりません。大切なのは入職後に「成長し続けられる環境」が整っていることです。これは単に教育マニュアルがあるという話ではなく、スタッフ個々の努力と医院全体の支援が連動しているかという点が問われます。
例えば:
・入社から3か月間のOJT、OFFJTカリキュラムと週次振り返り1on1ミーティング
・1年目〜3年目までの成長目標管理シートとキャリア面談制度
・医院全体での学びの文化(勉強会・外部研修・フィードバックの習慣)
・月1回のチームミーティングでの心理的安全性の確認と小さな改善提案
これらを仕組みとして運用し、改善し続ける仕掛け=PDCAサイクルが回っている医院は、実習生や若手歯科衛生士にも良い印象を持たれ、自然と「この医院で働き続けたい」という候補者が増えていきます。
「実習生の口コミ」が採用を左右する時代
学生や若手衛生士の間では、「あそこの医院は教えてくれるし、雰囲気がいい」「あそこの医院はスタッフがコロコロ辞める」といったクチコミが、日常的に交わされています。
ある歯科衛生士学校に関わる人はこう語ります「実習先の実習カリキュラムやスタッフからの声掛けに感動した医院には、毎年複数人が就職したがるんです。逆に実習中にスタッフが怒られていたり、教育されずに放置されたりする医院は、いくら給与が良くても学生が避けるようになります」
つまり、日々の育成と人間関係のあり方が、未来の採用につながっているのです。採用と定着は別物ではなく、一本の線として見て設計する必要があります。
PDCAを止めない医院が選ばれる
優秀な歯科医師・歯科衛生士が「選べる立場」にある今、“採用活動は一回勝負”ではなく、継続的に見直し続ける医院文化が必要です。
PDCA(Plan-Do-Check-Act)の観点で言えば、
・Plan(計画):採用・育成の基準とフローを明文化
・Do(実行):日々の面接・教育・面談を丁寧に実施
・Check(確認):離職理由・満足度・フィードバックを集める
・Act(改善):育成内容や指導者のスキルを見直し、仕組みを更新
このサイクルを止めない医院こそが、安定的に人が集まり、人が育ち、組織が発展していくのです。
先生の医院では、採用から定着・育成に至るまでの仕組みが“再現可能な形”で設計されていますか?
また、そのプロセスは、過去の振り返りと改善のサイクル(PDCA)によって進化し続けていますか?
「面接・育成の仕組みを整えたい」「離職率を下げてチームを安定させたい」とお感じの先生は、ぜひ一度ご相談ください。医院の実態に即した採用・定着のフロー構築をサポートします。