採用難の時代に必要なのは「選ばれる医院づくり」
近年、勤務歯科医師や歯科衛生士の採用はますます難しくなっています。人口減少と資格保有者の就業数の伸び悩み、そして都市部への人材集中といった構造的な要因が重なっており、「求人を出しても応募が来ない」という声は郊外だけでなく都市部でも聞かれるようになりました。
こうした時代において、ただ労働条件を整えるだけでは人材は集まりません。それどころか、「楽してそこそこ稼ぎたい」というモチベーションの低い人材が集まるリスクもあります。医院に本当にフィットする人材を採用するには、「理念」や「成長機会」といった動機づけ要因に価値を感じてもらう仕組み=採用ブランディングが不可欠なのです。
先生の医院では、「どんな人と一緒に働きたいか」「その人に何を提供できるか」を言語化していますか?
衛生要因は“入口”、動機づけ要因が“継続”をつくる
採用における条件面、すなわち給与・休日・残業の有無・福利厚生などは、ハーズバーグの「二要因理論」で言えば衛生要因です。これらが不十分であれば不満となりますが、充実しているからといって満足が続くとは限りません。
大切なのは、「この医院で働きたい」「ここで成長したい」と思ってもらえる動機づけ要因です。たとえば:
・院長やチームが掲げる明確な理念・ビジョン
・段階的な教育カリキュラムや目標設定面談
・自身の診療や対応が患者の人生に与える社会的意義の実感
・新しい技術・知識を学べる研修制度や外部セミナーへの参加支援
ある医院では、入社時に“歯科衛生士キャリアプランマップ”を提示し、3年後の姿をイメージできるようにしています。これによって、「学べる環境」「成長できる組織」に魅力を感じた志ある人材が集まり、定着率が向上しました。
採用ブランディングの鍵は“見せ方”と“届け方”
理念や教育体制を整備したとしても、それを見える形で伝えなければ意味がありません。つまり、「どのように発信するか」こそが採用ブランディングの成否を分けます。
具体的には次のような情報発信が効果的です:
・医院ホームページに“採用専用ページ”を設ける(理念・スタッフインタビュー・育成、研修の流れ、キャリアアップ制度を掲載)
・InstagramやX(旧Twitter)で日常の診療風景や勉強会の様子を発信
・院内マニュアルやカリキュラムの一部を視覚化して公開
・YouTubeで院長メッセージ動画やスタッフの声を発信
重要なのは、“理念と努力する文化”に共感できる人材に届く発信をすることです。過剰に“楽・自由・好待遇”ばかりを強調すると、結果として医院の価値観に合わない人材が集まりやすくなってしまいます。
理念に共感し、努力を楽しむ人を惹きつける
理想の採用は、ただ人を増やすことではなく、“共に成長できる仲間”を見つけることです。そのためには、医院がどんな医療を提供したいのか、スタッフにどう成長してほしいのかを明文化し、それに共感する人を「見つけに来てもらう」工夫が必要です。
たとえば、ある医院では採用面接前に院長が何を実現したいか?を応募者に話す時間を設け、応募者に期待する行動を丁寧に説明しています。これにより「理念に共感できなければ選考辞退」というケースもありますが、その分、採用後のミスマッチや早期離職が大幅に減りました。
勤務ドクターの場合には開業を目指される方も集まるでしょうが、開業したい人を思いとどまらせる方法を考えるよりも、魅力的なキャリアプランと医院ビジョンを勤務ドクターに提示した方が残ってくれると思うのです。
医院の文化に合う人材に“出会える設計”を
「採用が難しい」と言われる時代において、採用活動は広報活動であり、ブランディングの延長です。医院の理念・文化・育成体制を外部に丁寧に発信し、共鳴してくれる人に届ける仕組みを整えることが、生産性の高い組織づくりの第一歩となります。
理念に共感し、努力を惜しまない人材が育つ組織は、離職が少なく、時間あたり生産性が高く、患者からの信頼も厚くなる——それがこれからの歯科医院経営における「勝ちパターン」ではないでしょうか。
採用は攻めの戦略なので「人が足りないから募集する」「退職者が出たから募集する」では駄目なのです。
先生の医院では、「この人に来てほしい」という人材像を明確に描き、その人に“届く”ような発信を行っていますか?
また、応募者が「ここで働きたい」と思える教育・理念・環境を、見える形で設計していますか?
「もっと具体的な採用戦略を知りたい」「自院に合うSNS活用法を知りたい」とお感じになった先生は、ぜひ一度ご相談ください。医院の理念に合ったブランディング設計をお手伝いします。