経営理念や組織づくりの大切さが問われる今、明治時代に「道徳と経済の両立」を掲げて日本資本主義の礎を築いた渋沢栄一の考え方は、現代の歯科医院経営にも大きなヒントを与えてくれます。
渋沢氏の残した数々の名言から、患者満足と収益の両立、理念経営の意義、そしてスタッフとの信頼関係の築き方について考えてみましょう。
「論語と算盤」:道徳と利益を両立せよ
渋沢栄一が生涯を通じて説いたのが「論語と算盤(そろばん)」の精神です。これは「道徳(理念)」と「経済(利益)」のどちらかに偏るのではなく、両者を両立させることが真の経営であるという考え方です。
歯科医院でもこれは同じです。患者の健康を第一に考えた診療を行い仕組化することで、結果として信頼と自費比率が高まり、収益にもつながります。売上至上主義ではスタッフのやる気は削がれ、理念を掲げても機能させられなければ経営が成り立ちません。
大切なのはスタッフが「私たちは歯科医療に関わり患者を健康に導く仕事をしている」という自負を持てているかです。
・例えば、先生が日頃からスタッフに話す内容は治療品質(患者対応含む)と医院経営のどちらの話が多いでしょうか?
・スタッフは患者と院長のどちらの顔色を伺っているでしょうか?不安そうな患者に気づいて声掛けをしているでしょうか?
・スタッフは自分の年収の5倍以上の付加価値(売上だけではない)を生み出そうと意識しているでしょうか?
・自分が関わった患者が来院しなくなったら残念がり、チームで患者への関わり方を改善し中断率を下げることが出来ているでしょうか?
・その前にドクター、歯科衛生士、診療スタッフは患者が来院しなくなったことに気づいているのでしょうか?
「処世の要は誠実を旨とすべし」
渋沢氏は何よりも「誠実であること」を大切にしました。これは歯科医療にも通じる考えです。例えば、患者に不安な情報を隠したまま治療を進めるのではなく、事前にしっかりとリスクも伝えて不安に寄り添うことが信頼構築につながります。
また、院長はスタッフに対しても、約束やルールを守り、言行一致を貫くことで、職場の心理的安全性が育まれます。院長が「誠実であるか」はとても重要で、誠実ではない院長をスタッフは尊敬することはないのです。
スタッフが院長に対しての評価を院長の前で口にすることはないでしょうが、スタッフ間では普通におこなっています。だからと言って過敏になる必要はないのですが、日常診療での院長としての姿勢が評価されているという事は忘れないで頂きたいです。
余談ですが、スタッフが院長に言ってくる不満や意見には「聞いて欲しかっただけ。ストレス発散で放置しておいても大丈夫」なものと「早期に対応しなければ退職に繋がる、助けてコール」、「私の頑張りをちゃんと見て評価して欲しい」、そして「低下した自尊感情を満たそうと、無意識的に他のスタッフの評価を下げようとするもの(地雷)」などがあります。ちゃんと見分けられていますか?
「人を育てよ、組織は人なり」
渋沢栄一は500以上の企業や教育機関の創設に関わり、常に「人材育成」の重要性を説いてきました。歯科医院も同様に、制度や設備以上に人材こそが最大の経営資源です。
定期的な面談やOJT/OFFJT制度、院内外の研修、チームビルディングを通じて、スタッフがスキルと意識の両面で成長できる仕組みを整えることで、医院の治療品質と患者満足度が高まります。
そして、生産性の向上にも人の成長が欠かせないのです。
まとめ:渋沢栄一の精神で、理念と利益を両立する歯科医院へ
・患者にとって最善の医療を行い、経営も持続可能にする「論語と算盤」の視点
・スタッフ・患者に誠実に向き合い、信頼される医院文化の構築
・「人を育てる」ことを最重要課題と捉えた継続的な教育投資
渋沢氏が言うように、経営とは社会への貢献であり、人を活かすこと。経済的成果と道徳的意義を両立する歯科医院こそが、これからの時代に選ばれていくのではないでしょうか。
先生の医院では、スタッフの育成や理念の共有はできていますか?言葉だけではなく行動として落とし込めているか、ぜひ振り返ってみてください。
スタッフマネジメントで苦戦されている場合にはご相談ください。医院に合ったチームの形態を提案しチーム作りもサポートさせて頂きます。