日々の診療に追われる中で、「スタッフが主体的に動いてくれない」と感じる院長は少なくありません。しかし、その原因はスタッフの姿勢だけではないかもしれません。
実は、「何を目指している医院なのか」が見えていないことが、スタッフの行動を止めているのです。
今回は、歯科医院経営の本質②「理念(ミッション・ビジョン・バリュー)と経営計画」についてご紹介します。
本質② 理念と経営計画が組織の軸になる
スタッフからよく聞かれる言葉の一つに、「うちの医院は、どこに向かっているんですか?」「院長は何がしたいのですか?」というものがあります。
しかし院長にお聞きすると「日頃からスタッフには話しているのですが・・・」と仰るのです。
医院が「どんな価値を届けようとしているのか」「何のために存在するのか」が明確でなければ、スタッフは日々の行動に意味を見出せず、やらされ感が強くなってしまうのです。
・どんな患者に、どのような医療を届けたいのか(ミッション)
・3年後・5年後、医院はどうなっていたいのか(ビジョン)
・医院として大切にしたい価値観とは(バリュー)
これらを言語化し、スタッフと共有することが、組織に統一感と方向性をもたらします。
そして共有しただけでは行動が変わらないので理念が実現されていくこともない。だから理念をカスケードダウンして「いま何をすることが理念行動なのか?」まで細分化して落とし込む必要があるのです。
末梢血管にまで血液(理念)が浸透して初めて理念経営は威力を発揮できるのです。ライフイベントや入退職などで人の入れ替わりがある歯科医院では、この努力を怠れば経営にも悪影響を及ぼす様になります。
実際には理念は掲げているが患者が理念から導かれるチームメンバーの自主的な行動に魅力を感じるまでには至らず、ルールで縛って行動に繋げている歯科医院も多いと感じます。
先ずは院長が理念行動が出来ていないと話になりません。
「理念行動チェックリスト」を作成し、勇気があればスタッフに無記名で院長の日常の言動を評価してもらってくださいね。
経営計画で“いつ何をやるのか”を見える化する
理念だけでは組織は動きません。それを実現するための具体的な経営計画が必要です。
たとえば「5年後に長期管理型の歯科医院を確立したい」と考えるなら、逆算して次のようなマイルストーンを設定します。
・2年目までに歯科衛生士の担当患者数を月〇〇人に増やし、継続来院率を〇%に引き上げる
・1年目のうちに患者の「治療→継続管理フローチャート」と「歯周病継続管理・指導マニュアル」を整備し落とし込む
・半年以内にDH・治療コーディネーターの育成カリキュラムを構築
・上記を実現する為の採用育成計画とアクションプランを1カ月以内に作成、月1回のミーティングで進捗を確認し改善
このように経営計画に落とし込み、スタッフと一緒に進捗を共有することが、日々の業務に意味を持たせ、チームの一体感を生み出します。
まとめ:理念と計画が、スタッフの行動を変える
理念と経営計画は、単なるスローガンや数字の目標ではありません。
医院の存在意義と未来像を明確にし、「何のために働くのか」「どこを目指しているのか」をスタッフ全員が理解できるようにすることが、結果として現場の行動と医院の成果を変えるのです。
先生の医院では、理念やビジョンがスタッフ全員と共有されていますか?
その理念を実現するための経営計画は、具体的に可視化されていますか?
理念を実現する為に「今日、何をするべきなのか」がチームメンバー全員分明確になっていますか?
迷子になっているスタッフはいませんか?
数値計画の達成は患者を健康に導く為の目的に紐づけされ、スタッフがその提案に納得していますか?
次回は、本質③「歯科治療としての品質向上」についてお届けします。