「患者さんを笑顔にしたい」「スタッフが長く安心して働ける医院にしたい」——。そのような素晴らしい理念を持っている歯科医院は多く存在します。しかし、理念だけでは組織は動きません。
理念を実現するには、それに向かう行動と成果を“見える化”し、数値で管理・改善していくことが必要です。今回は、歯科医院経営の本質④「数値による現状の見える化と改善計画」についてお伝えします。
行動が数値で測定されていないと「曖昧な努力」になる
「患者さんを大切に対応しましょう」「もっと説明を丁寧にしましょう」と指示を出しても、行動の具体性や成果の可視化がなければ、スタッフは何をどこまでやれば良いのか分かりません。
「努力しているかどうか」が感覚に頼ってしまう組織では、チーム内で温度差や不公平感が生まれ、やがてモチベーション低下につながります。
まず大切なのは、現状の医院の状態を数字で把握することです。以下のような指標を継続的に記録し、分析することで、的確な改善ポイントが見えてきます。
● 月別の新患・再初診・自費率の推移
● 患者の治療計画完了率や「移行率」「継続率」(基本治療完了率、SPT移行率、1年後継続来院率等)
● 担当歯科医師、担当歯科衛生士ごとの紹介患者、中断患者の数と割合
● 初診カウンセリング、セカンドコンサル、治療コンサル等の実施数と実施割合
● 患者満足度アンケートの結果 など
特に、「中断率」や「紹介患者の割合」などは患者満足度を定量的に捉える重要な指標です。
KPI(重要業績評価指標)や行動記録を可視化し、それに基づいてチームで改善を行う「PDCAサイクル」を回すことが、成果を出し続ける医院づくりには不可欠です。
● スタッフごとの行動記録(例:カウンセリング回数、説明実施件数)
● 数値目標に対しての進捗確認と対策の報告、個別フィードバック
● PDCAミーティングでの評価と次の行動計画
「感覚」ではなく「数字」で評価し、「責める」のではなく「振り返る」ためのツールとして行動トラッキングを活用することがポイントなのです。
中規模以下の歯科医院の院長に数値管理についてお話しすると、「うちの規模ではそこまでは難しい」と仰るのですが、中規模の段階から「数値管理」「治療品質」の両方に妥協せずに取り組んだから医院が大きくなったが正解なのです。
「数字を追うのは嫌だ」という院長もいらっしゃいます。数値を追えば医療の本質からブレるというのが理由なのですが、それは本質と手段(数値)は水と油であるという誤解から生じるもの。数値目標の設定方法と理念追及との関連づけに問題があるのです。
理念を実現し、患者とスタッフを守っていくには経営的な安定が不可欠であり、そのためには数値で成果を管理することが避けて通れません。
数字で成果を測定できる医院は、スタッフにも目標が明確で努力の方向が一致し、組織として成長していけるのです。
● 現状の数値を把握することで、真の改善ポイントが見える
● 行動トラッキングとフィードバックの仕組みを構築する
● 数字で“成果”を示すことで、理念が現実に近づく
先生の医院では、理念や行動目標が「数字」で共有されていますか?
曖昧な努力から脱却し、「成果が出るチームづくり」に踏み出していきましょう。
ご要望があれば私がファシリテートさせて頂きます。
次回は、本質⑤「チームビルディングと長期雇用」についてお届けします。